第七十二話 ハルーシア市の冒険者ギルドで乱闘
パシッ!
僕は絡んできた男の拳を簡単に掴んだ。
相手の男は手を振りほどこうとするが、僕が離さないから離れられない。
サーマンを横目で見ると、あちゃーというような表情をしている。
だが相手から殴りかかってきたから、始めようじゃないか戦いを!
だけどクロウには悪いが、クロウが戦うのは避けてもらう。
「クロウ! 後で難癖をつけられても嫌だから、クロウはお休みね!」
「我了解した!」
さあじゃあやるか!
サクラが先に攻撃を開始した。
一発腹を蹴ると、一番近くにあるテーブルを薙ぎ倒しながら、冒険者ギルドの壁も男がぶつかり割れる。
次に僕が手を掴んで離さなかった男を強引に投げ飛ばす! ーーあ、投げ方が強引だったから、腕の骨も折れたな。
三人目はこの光景を見て唖然と動きが止まっているが、手に魔力を込めて髪の毛を掴み、髪を根本から消滅させる。
その後は頭を掴み、膝で腹を蹴って吹っ飛ばす。
一瞬で勝負がついた戦いを見て、サーマン以外は口を開けて動きが止まっていた。
さて第二ラウンドだな。
僕はサクラに目で合図をする。
サクラもコクンと頷いた後は、三人を魔法で回復させる。もちろん意識も清明にね!
僕達が相手を回復した姿を見て一部の人が動き出そうとしたが……
「せい!」とサクラが動きだし、僕もつい「てりゃー!」と声を出し攻撃を再開した。
僕達は周りの人が見える程度で動いているからか、周りの人も「あっ」と声を出す。
二回目は派手に冒険者ギルドの受付側に三人を吹っ飛ばした。
もちろんフサフサだった残りの男の髪の毛も、毛根から死滅させる。
……
さあ第三ラウンドだ!
今のところはまだ壁や床、テーブルや受付カウンターの一部が破損している程度だ。
僕達は魔法で冒険者を近くに移動させて、また体を回復し、意識を取り戻させた。
さて次はーーあ、僕達が絡まれているのを面白そうに見ていた奴らだな!
僕達は念話でやり取りをし、目的を統一した。
一人の男はカウンターの横で笑っていた、中堅くらいの冒険者に向けて吹っ飛ばした。
二人目の男はサクラが蹴り飛ばした。その先にはサクラが絡まれている姿を見てプギャーという仕草、表情をした女冒険者がいた。サクラは器用にも魔法を男にかけて、上手く女冒険者の鎧が壊れるようにしていた。
女冒険者の鎧は切れてもう使い物にならないだろう。
三人目の男には僕達が魔力をそのままぶつけ、あの受付の隣で、面白いものを見ているという顔をした受付さんに向けて吹っ飛ばした。
さあ第四ラウンドに向けてこれまでと同じ手順を踏んだ。
流石にやられている冒険者の顔は怯えている。
……だがしかし止まらないぞ!
一人ではなく、ギルド職員すらもかばおうとしなかった人達には容赦はしない。
今回は酒場側に吹っ飛ばす。
第五ラウンドは依頼票が貼ってある方向だ!
第六ラウンドはちょっとサーマンにおふざけでぶつける……軽くだけどね!
おっとサーマンが怒った素振りを見せたが、あれは怒っていないな。
第七ラウンドは天井に向けて……
第八ラウンドはーーーー
そんなこんなでかなりボロボロになった冒険者ギルドだが、誰もが被害に合いたくないと逃げようとしているが逃げられない。
【黒猫】が怒ったら逃げられないのだ!
出入りが出来そうな所は、クロウと姿を消しているソフィアが魔法で塞いでいるのだ!
大分恐慌状態に陥った、絡んできた冒険者と味方した受付だが、まだ何か足りないな。
「サクラ? どうしよう、まだ気がすまないんだけど、どうしよう?」
「私もよラウール。ここまで虚仮にされたのは初めてよ! 流石に冒険者ギルドで正面切って冒険者ギルド職員が喧嘩を売って来たことはなかったわね! 」
サクラはあの受付に殺気を倒れない程度で送った。
あっ、漏らしたな今……
「ねえサーマン! 私達の気がすまないんだけど、どうしたら良いのよ!」
サクラは第三者に訴え始めた。
「……お前ら……容赦ないのな……まだオークロードとゴブリンロードを倒した時の方がましだな……。あいつらは一思いに殺されたが……そこの奴らは死ねない、逃げられない……終わらない……。どこの拷問だよ……。お前ら黒猫はここに来るまでに盗賊も一瞬で倒してるだろ? 簡単に考えても二百人は一気に倒せるお前らに……俺からの助言はーーーー無い! ……お前らは依頼の達成……嫌王子から依頼達成の足しにしろと言われてここに書状を持ってきたのではないのか?」
「そうですよ……僕達はハルーシア市の冒険者ギルドの雰囲気を感じながら、プッチモ王子から貰ったこの盗賊討伐証明と、片道分の護衛達成報告の文章を持ってきただけだったんだけどね……」
「はーー、俺は護衛依頼は往復だからまだ達成した依頼がないから、冒険者ギルドの雰囲気を感じながら飲んでいただけだしなーーーー。盗賊討伐に関してはお前らが活躍しすぎて皆が報酬を拒否したからな。あーー話はそれたが、まだやるのか?」
「んーー誰もが謝罪の言葉もないし……こんな冒険者ギルドなら半壊しても良いんじゃない? だって壊れた所の修理費は、目の前のこの人達が払うんだし! 」
目の前の男達は二重の意味で顔を青くしているだろう。
僕とサーマンがこんな会話をしていると、冒険者ギルドの奥からようやく誰かが移動してきた。




