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第六十二話 妖精さんは家族……

準男爵が取り仕切る大きな商会の会頭なんだろうが、やっていることは詐欺だな……



大分時間が経っているが堂々巡りになっている。


デグターさんはハッキリと決めることが出来ていないし、ガイブンは変わらず論点をずらしていく。

サクラはイライラしてきてるし、僕も口論では役立たずだ……


野次馬は相変わらず僕達の争いを見ていて、王都のこの一角は人が密集して通行の邪魔にもなってきた。



あまりにも邪魔になり始めたからか、大勢の騎士や冒険者、商人に貴族らしい者まで様子を窺っているようだ。

中には僕達を知っている者も増えだし、反対にガイブンを知っている者も増えた。



その人混みを掻き分けて一人の男が僕達に近づいてきた。


「珍しい所で会ったなラウール! この騒ぎの主役はお前らか?」

乱暴な口の聞き方で、強者の気配を身に纏う……サーマン、Sランク冒険者だった。



「何を揉めてるんだ?」

サーマンは僕達にそう聞いてきたため、少しでも助けが欲しくて、事情を説明した。


……

……



「はあ? くだらん。お前らは妖精を売るほど金には困っていないだろ? 何か高額で売れる素材でもバーーン! と出してやったらどうだ?」



あーー単純に金には困っていないと言う証明か!



「後はお前らはプッチモ王子やホワイティア、まーー副ギルドマスターでもいい。恩を売った奴らを呼べば良いだろ! こんな商人に何をやってるんだ?」



そんな事で解決するのか?

だけど冒険者ギルドが商人ギルドや商人に素材も売るだろうし……



「クロウ? 何かバーーンと出せる素材はある? 珍しくてインパクトのあるものが良いかな」


僕はクロウに言ってみた。


「あるよ! 我もイライラしてたから、凶悪そうなやつを出すよ!」

「お願いクロウ! 私も限界……これ以上は叩き潰しそう……」


僕とサクラの言葉を聞いたクロウは、亜空間収納から素材を取り出した……


急に何もなかった場所に急に飛び出した物……



形はそのままに、魔力で立たせるという演出をしたクロウ……


五メートルはある巨体……



ミスリルゴーレムが王都に出現した!

動力は停止しているが……



……

……

……


僕達の周囲で様子を窺っている……窺っていた野次馬が逃げ出した!

冒険者や騎士は武器を構える。

商人ももちろん逃げ出し、ガイブンは固まっている。



「おいおいラウール……もちろん動かないんだよな? こいつはミスリルゴーレムだろ? 俺は……ダンジョンで一度戦ったが……攻撃が通らず、逃げたぞ!」



デグターも武器を抜いて話を聞いている。



「クロウが何処からか持ってきたんだろうね? クロウ、ミスリルゴーレムは何処で見つけたの?」



「ダンジョンじゃないよ! 我が山奥で見つけた! ミスリルは何にでも使えるから倒して持ってきた!」



倒して持ってきたって……

いつの間にか素材が増えていく……

クロウがいたら僕達は働かなくても良いんじゃないか? ってそれだと面白くないから、僕達は冒険するんだけどね。



「そうだって。サーマン、これで良いかな? そこのガイブンとデグターさん、これで僕達がお金に困っていないって言う証拠になるかな?」



目の前のガイブンとデグターが一瞬止まっていたが、ガイブンが先に口を開いた。



「……お金と言うか、妖精が扱えないから手放すって……そう、そう言っていたじゃないか!」



デグターはその言葉を聞き、ガイブンに渡った契約書(仮)をもう一度確認していた。



「この文章と、さっきまでの発言と、随分違いますね……」



「それはこいつらに言ってくれ! 俺も騙されたんだ! 金がないって言っていたんだ!」



「サクラさんは家族とまで言っていましたが? それにサクラもラウールさんも、そこのクロウさんも……勲章を受け取ったのは、魔物の大群を討伐したことと、Sランクの魔物を単独で倒しているのですが……。私としたことが……頭が回っていませんでしたね」



「くっ! 此処は騎士のあなたに免じて何もなかったことにしよう……。それでは私は急いでいるから行くぞ! 侯爵様に頼まれている事があるからな!」



こいつの後ろにいるのは侯爵か?

だから戦いで言うと混戦に持ち込んで、強い味方に止めを刺してもらう……。侯爵の権力を利用するために論点をねじ曲げていたのか?



「そうはいきませんよ……と言いたいところですが、これ以上はどちらにも何も出来ませんね。これからはどちらも騒ぎを起こさないでください。我々騎士団はどちらの事もしばらくは監視を強めますので」



そう言われて悔しそうにガイブンは去っていった。

ガイブンが去ると、野次馬に最後まで残っていた人達もいなくなり、デグター達も挨拶をして立ち去った。



残ったサーマンはソフィアが気になるようで、チラチラ横目で見ていた。



「サーマンありがとう! サーマンのお陰で解決したよ! 僕達はもう冷静でなかったから、あれを出すことなんて考えられなかったよ。危なく王都を壊滅させ……ゲフん……王都で暴れるところだったよ!」



「おいおい……今のは聞かなかった事にする……。お前らは交渉が下手だな! 良かったぜ弱点もあって!」



「流石に僕達にも苦手な事もあるよ! 僕なんてサクラよりも交渉は下手だろうし……」



そんな事をサーマンと話ながら、昼食を一緒に摂った。

サーマンにはベテランの冒険者として、常識の範囲内の移動手段を教えて欲しくて、今日はちょっと付き合って欲しいとお願いをした。



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