第五十四話 セバスチャンの突然の訪問
無事にアルス達の冒険者登録を終えた僕達がマイホームに戻ると、門の前に馬車が停まっていた。
その馬車がハッキリと見える位置まで僕達が進むと、馬車からはセバスチャンが降りてきた。
執事も単独で馬車に乗るんだなーーとセバスチャンの動きを見ていると、僕達の前まで歩を進め、綺麗なお辞儀をした。
「ラウール様、サクラ様、御二人の後ろにいる御方……私は先日お会いいたしましたが、セバスチャン・ククルートでございます。本日はプッチモ王子よりお屋敷の様子を確認してくるように仰せつかりました。プッチモ王子は『早く屋敷を見たい!』と自ら足を御運びになりそうでした。いつ頃でしたら王子を招待して頂けますか?」
プッチモ王子……そんなに僕達の屋敷がどうなったのか気になるのか……
「これから家具などを設置するので、おもてなしは出来ませんが、見学だけであれば明日でも構いませんよ」
セバスチャンはにっこりした。
「王子はラウール様が二日と言っていたと譲らず、今のお返事を頂かなくとも、明日にはお訪ねになるところでした。ですが今のお返事を頂き、明日の日が一番高い位置になる頃にお訪ね致します」
「……結局はどんな返事でも来ていたんだね……。まーー良いよ。じゃあ何も準備は出来ませんが、『明日は我が家にいらっしゃってください』とお伝えください」
「はい、ありがとうございます。プッチモ王子は大変お喜び致しましょう。私もこのような見事な外壁を拝見し、明日が楽しみでございます」
セバスチャンはそう言って最後には綺麗にお辞儀をし、馬車に乗り去っていった……
……
僕達もいつまでも外で呆けていても何ともならないと、敷地に入り今日購入した物を設置していった。
アルスとデルタには出番がないので、広い庭で軽く運動でもしているように声をかけておいた。
……
しばらく僕達は忙しなく動いていたが、ようやく全ての物を設置し終えた。
「完成だねサクラ、クロウ……」
「完成ねラウール、クロウ……」
「頑張ったね我ら!」
見事に二千年代の地球……その中での中世ヨーロッパ風味……
味は邪魔な言葉かもしれないけど、純粋な中世ヨーロッパの屋敷ではない。
羊の皮をかぶった狼……いや熊……それくらい見た目と機能は一致しない造りの屋敷や家となっている。
「明日はどうする? 僕達の家はある意味最新式の家だよ。だがら屋敷を案内する?」
「ラウール甘いわよ、砂糖より甘いわよ。あのプッチモ王子が屋敷だけで満足するわけがないじゃない。絶対に全部見るわよ!」
「……だよねーー」
「だから最初から全てを案内するつもりでいた方が良いわよ。設備に関しては秘密にする所もあるけどね」
「そうだよねーー。設備が一番ヤバイかもね。王宮や王城に設置してと言われても嫌だしね。もしばれても素材がないって事にしよう」
「方向性が決まってきたね。じゃあそんな感じで!」
「「了解!!」」
……
その後は屋敷に全員が入り夕食にした。
そして遠慮するアルスとデルタをそのまま屋敷に残し、僕達はマイホームに移動した。
一応アルスとデルタが裏切るとは思えないが、防犯等は万全だ。
マイホームに戻った僕達は自分の部屋に入り、自分だけの時間を満喫した。
そしてある程度満喫したあたりで、サクラが僕の部屋を訪ねてきた。
うん、僕達は夫婦……一緒に寝た……うん寝た……
……
次の日は目を開けるとサクラの顔がすぐ横にあり、幸せだった……
今日は昼頃にプッチモ王子が訪ねて来るため、準備に忙しくなりそうだ。
あの時はおもてなしをしないような話をしたが、一応王子が来るので簡単な食事を提供し、お土産もあった方が良いかと色々と考えた。
料理に関してはサクラが頑張ってくれると言うので、材料は先日集めた中からは選ぶ。
お土産は……マイホームか屋敷に設置している魔道具の中から、この世界に支障がない程度の物をあげようかと考えている。
準備は順調に進み、いつプッチモ王子が訪れても良い状態になっている。
だが……順調すぎて時間が余ってしまった。そこで僕達はアルスとデルタの装備品を創造しようと考えた。
僕達は何が欲しいか聞いても遠慮ばかりして話が進まない。
今回はそこまで良い素材を使うつもりもないため、遠慮せずに話してほしいと伝えると、どうにかアルス達が話し出した。
アルスはスキルの通り体術を中心に戦いたいと言うため、メリケンサックを創った。
デルタはスキルにはないが、大剣で戦いたいと言うので、大剣を創った。どちらも鉄であり、僕達が創ったから通常よりも頑丈なこと以外は普通だ。
防具も一般的な革装備になるが、クロウが手にいれていたオーガの革を利用し、軽鎧を創った。
これで装備だけはCランク相当だな。
あと足りないものは……後衛と中衛の仲間かな?
これだけは相性もあるから何とも出来ないが、早めに見つかるように冒険者ギルドでも受付さんと話をしておこう。
こうして創造やアルス達の将来を想像していると、プッチモ王子が訪ねてくる時間となっていた。




