第五十二話 ようやく完成マイホーム
アルスとデルタに名付けた次の日は朝早くから元気に動き出した。
初めは勿体ないと思ったがが解体から始めた。
屋敷の解体をしても良いのか確認はとらなかったが、怒られたときに考えよう。
どうせなら土地だけを購入しても良かったな。
屋敷の解体が終わり更地になったところで、岩や砂、土、革、魔物の骨などを並べた。
そこからは僕達の家の外周の壁に合わせて結界を張り、音や振動が漏れないようにした。
下準備が終わったら昨夜遅くまでサクラやクロウと決めた間取りの家を想像する。
念話なのかイメージも共有し、一気に魔力を込めて創造する。
……
創造はあっという間に終わったと言いたかったが、徐々に材料が混じり、徐々に家の形になっていく。
お屋敷と言っても良いくらいの建物だったが、僕達はそんなに大きい家は居心地が悪い。
大広間と客室は必要だろうから、一棟は来客があった場合に使用する大きめの屋敷にした。
その隣にはこじんまりとした家を創造する。僕とサクラ、クロウの部屋を作り、リビングとダイニング、キッチンのスペースも確保する。後は風呂とトイレの場所を決めて完成だ。
ただ、もしかして仲間ができるかも知れないので、二部屋分多く作成した。
来客用の屋敷は大広間と客室、キッチンに幾つかの面談部屋を用意した。
……
大枠を作成した後は内装と家具や設備を整える。
シックな内装に知っている限りの最新式の物を導入した。これには大量の魔石も利用した。
……
何と言うことでしょう……これまでは何処にでもあるお貴族様のお屋敷でした……
しかし今では……外装は何処にでもあるお貴族様のお屋敷……
だが中に入ると……前々世で見かけた最新式の設備が並んでいます……
これは僕達夫婦に相応しいマイホームではないでしょうか。
と僕達が感動している横で、アルスとデルタはまたもや茫然としていた。
流石に刺激が強すぎたね!
だけどしばらくは面倒をみる人に遠慮をしていると、何事も行動しにくくなるからね。
「完成だ……完成したねサクラ……」
「ええ、完成したわねラウール……」
「我の部屋はもっと改造する!」
「良いよクロウ……僕達の家だし好きにしてよ!」
「そうね、ラウールの部屋ももっと改造するわよ! わた……一緒に過ごす時間が多いんだから!」
「そうだね! 過ごしてみて不便なところは改造していこう。……アルスとデルタはあっちのお屋敷に住んでね! ちょっと広くて不便だろうけど我慢してね!」
僕はそう言って二階建ての大きなお屋敷を指差した。
僕達の家はこじんまりとした二階建てで、まるで主人は獣人達みたいになるが、我慢してもらおう。
……
「お……俺達が……こっち?」
とアルスがお屋敷を見て頬をピクつかせている。
「私達は外でも良いです……屋根だけあれば……」
「駄目だよ! 早く回復してほしいのに、そんな環境じゃあ満足に休めないでしょ! そこは我慢して!」
「「……はい」」
うん、長く粘られなくて良かったよ。
僕達は絶対にお屋敷には住まないからね!
「ラウール! はいこれ! 我は家の鍵を作っておいたよ。本人だけが使えるようにしたよ。あとは、アルスとデルタもはいっ、これがお屋敷の鍵ね」
「私は門の鍵を作ったわよ! これを必ず使ってね。敷地を囲む壁には結界が張られているから、必ず門から出入りしてね。そうしないとアルスとデルタは大変な事になるからね!」
「「……はい」」
「じゃあ皆でそれぞれが必要な物を買いに行こう! アルスとデルタは何も無いでしょ。お宝から分けても良いんだけど、それだけだと間に合わないでしょ」
「「……はい」」
「じゃあ私達と一緒に買い物をしたついでに、アルスとデルタは冒険者になる? それとももう登録してるの?」
「「……いいえ」」
「ふーん、でも私達が今いる人族の国みたいに、冒険者ギルドはあるんでしょ?」
「「……はい」」
「じゃあ何をして稼いでたの? 小さな村とかで、自給自足だったの?」
「「……はい」」
「へーー私達が思ってる通りなのかな。じゃあ、そこの村長の息子あたりに目をつけられて、最後は村の人全員に裏切られた?」
「「……はい」」
「サクラの推理が冴えるねーー。でも、元々いた場所は、何処の国なの? 僕達はまだファンフート王国より知らないけど、この国ではない所にあった村なの?」
「俺達がいた村は、ファンフート王国のはずだ。国境を超えてはいなかったと思う。この国は獣人がほとんどいないから、一定の人物以外は他の村や町には行かなかった。隠れていたとまでは言わないが、積極的に外と関わろうとはしなかったな……」
へーー閉鎖的な所だったんだな。
「だから気にくわない俺達が違法な商人に売られたんだ。俺達は悪いこともしていないし、誰にも借金はしていない」
んーー詳しく話を聞くと微妙だな……
良く言うと村長の権限での村人の身売り。本人の同意はないが……んーー
「まっいっか。話はわかったから、僕達と買い物に行こう。もっと詳しい話はちょっとずつでも教えてくれたら良いから」
何だかんだ複雑な状況のアルスとデルタだが、一度約束したからには面倒をみよう。
さーー必要な物を買い、冒険者登録もしよう!




