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第五十話 虎の獣人とサクラと

王都ファンフートの門前で待ち人来たる……サクラとクロウが同時に到着した。



……



「……えーとラウールさん? 状況を説明してもらいましょうか?」


サクラの第一声がこれだった。


僕は色々と言いたいことはあったが、「先ずは王都に入ってしまおう」とサクラに返事をした。



サクラも思うことはあるだろうが同意し、貴族用通行門を通り、王都に入った。


門番にはある程度事情を伝えると、早めに奴隷商で契約をするか、若しくは売るかした方が良いと言われた。

この状態の奴隷は、奪われても取り返せない場合がある。

また何かがあって相手に賠償を求めても、相手からは拒否される可能性が高いと言う。更に奴隷(仮)の状態で罪を犯されると、僕達の責任問題になる可能性があると付け加えられた。


持ち主が確定していない奴隷は何と面倒な……



……



僕は手に入れたマイホームまでの移動中に、ちゃっかりオークの集落にあったお宝も手に入れており、内容を確認していた。


その中には、一般的な装備品をはじめお金や色々な素材まであった。

魔物もお金は何かに使うのだろうか?



それは置いておいても、奴隷(仮)達に着せるには十分な物があった。あまり獣耳が見えないように、フード付きのローブを着せて移動している。



……


……


僕達の中の誰も話し出すこともなく、マイホームに到着した。


本当であれば今日から改造をし始めたかったが、本格的に行動するのは明日にする。


ただ壁だけは作ってしまおうと、今の壁に意識を集中し魔力で創造した。



ズズズズズズズーーー

ズズズズズズズ……



元々あった僕の背丈ほどの壁が、高さが三メートル程の高い壁に一瞬で変わった。



……



その後は建物はそのままにマイホームに入った。

マイホームには何もないので、床に皆で座り込み、奴隷(仮)達の話を改めて聞くことにした。



奴隷(仮)達は壁の変化を見てから茫然としている。

オークに捕らわれたショックよりも大きかったか?

何も話し出さないから、僕達から話を振ってみた。



サクラが分かるように、僕が聞いた話は僕が話す。そしてそこから本格的に奴隷(仮)達と今後はどうするのか考える。



今回はいくらか元気になった奴隷(仮)の女が話した。

オーク達に捕まり貞操の危機を感じたが、何故かそちらは無事だった。しかしいつ肉体が傷つくように……若しくは性的に襲われるかと思うと、精神的にダメージを負ってしまった。

そこにこれまでの奴隷生活で受けた日々のダメージの積み重ね……


僕達が発見したときのような状況に陥ってしまっていた。


しかし今回助かった事で、生きている……まだ生きたいと言う意欲が湧いてしまった。

奴隷生活の時もお互いに励まし合い、いつかは幸せになれると信じて生きてきた。


奴隷生活が何十年に及んでいた場合はどうなっていたかはわからないが、今は……自分達を解放してほしいと願っている……



そこで問題になるのは、直ぐに解放されても生きていく手段がないことだ。

わがままで申し訳ないが、魔物と戦える状態に戻るまで面倒を見てほしい。


もうなりふり構わず頼み込んできた。



……



「……私もようやく状況がつかめてきたけど……それがどんなに我が儘なのかはわかってる? 私達があなた達を売らない、養う、害さない、見返りはない……。一方的に要求をする……必死なのは分かるけど、私達に対する利益は? 冷たいと思うかもしれないけど、一番簡単なのは……あなた達を手放すことよ?」



サクラも真面目に考えて、相手に真剣に答える。口だけで助けるって言うのは簡単だけど……



「私達が魔物を倒せるようになったら、必ずそれまでかかった金銭はお返しします。それ以上にお金を払いますので……どうか……」



「……そんな未来まであなた達は保証できるの? 不注意か何かは分からないけど、奴隷とされたのに……」



……



「……奴隷として働かせてください……。きっとお役に立ちますから……。出来ましたら……通常の奴隷を購入する金額を私達が稼いだと思ったときに、解放していただけたら……」



……



「んーーーまーー合格ね! 元々新婚の私達の家に他人が長々といられても困るのよ! ……もう一度言うけど、新婚の! 家にクロウ以外がいると気を使うのよ。だから、今の話もわかったから……できる限り早くこの家から出ることが出来るように頑張って!」



……


うん、さすが流石サクラ!

言ってあげた方がいいのかな?

僕の惚れた女は、いい女だ!



「僕もそれでいいよ! できる限りの早く独り立ちしてね。……奴隷も冒険者になれるかな? 副ギルに聞いてみるか。一緒に行動しているうちにランクが上がったら、きっと楽だろうし」


……



「ありがとうございます……私も早く勘を取り戻します!」

「俺も頑張ります!」

奴隷(仮)は泣きながら笑っていた。

僕達に何度も頭を下げ、ありがとうを繰り返す。



さあ面倒な事も結局は関わったが、何から先に取りかかろう。

名前もないと言うし、マイホームの改造やプッチモ王子の依頼もある。


優先順位を決めて、一つずつ行動していこう。





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