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第四十九話 初めての奴隷との会話

んーーこれはどうしようかな?

死にそうな獣人も放って置くのも罪悪感があるし……



「お前はここまでの事が出来る人間族だろ……。頼む……回復ポーションでも……持っていないか?」



……



「こいつは俺と一緒に捕まった奴隷だ……。一年……くらいか……ずっと一緒にいたんだ。……励まし合って生きてきた……。頼む……」



こんな暗いところで迷っていても気分が悪いな。とりあえず出来る範囲でやってみるか。



「治るかはわからないが、それでもいいの? そして、病気か? 怪我か? それともそれ以外か分かる?」

こんなことでは鑑定は使わない。癖になって鑑定に頼りきると駄目な人間になりそうだから。


……

目の前の獣人は少し考えている。



「……怪我からだと思う……。怪我をして……ここに連れられてきて……色々とあったが、心が壊れたわけではないと思う……。傷口が塞がってからもしばらくは……話せた。……意識がなくなる前も……目はまだ死んでなかった。ここに連れられて来て……数日だが……それからこの状態に……なった……」



んーーじゃあ回復魔法で良いかな?

精神に作用する魔法は、ソフィアほど上手くないんだよね。



「じゃあ試しに『上級回復魔法!』……これでどうだ!」



目の前に横たわる粗末な衣類を身につけた獣人が光る。

その光は徐々に収まり、辺りがまた暗くなる。



……


「ん……あ……」

目の前に横たわる獣人の意識が戻ったようだ。流石にあまり使わない上級回復魔法だな。おそらく命はもう大丈夫だろう。



……



「……ありがとう! ありがとう主よ! あーーようやく目を覚ました……。もう……駄目かと……うう……」


比較的元気だった獣人も泣き始めたが、僕はそろそろ外に出たくて、獣人に声をかけた。


獣人も同意してくれ、弱っていた獣人を抱えて僕と一緒に外に出た。

ちなみに僕が冷たい男な訳ではなく、比較的元気な獣人が僕に担ぐことを任せなかったのだ。



……



明るいところに移動するとハッキリと姿が確認できた。


二人は同じ種類の獣人だった。

んーー歳は分かりにくいが……二十歳くらい?

人間族の見た目を少し毛深くし、動物の特徴が混じっているような容姿……

その姿は……茶色の虎柄……茶トラの獣人?


「猫の獣人?」


……


「……虎だ……俺とこいつは虎の獣人族だ……。これでも強いんだぞ……奴隷として弱っていなければ……オークの一匹や二匹くらいは……。ハイオークは無理だが……」



「ふーん、じゃあ何で奴隷になったの?」


……


「まだ主人として契約されていないから……命令はある程度……拒否が出来る……。しかし……お前に攻撃は出来ない……。隷属の首輪の効果……。答えは拒否したいが……」



んーー犯罪をおかしていないならもう少し世話を焼こうかと思ったんだけどな。



「何故答えられないの? 犯罪者として奴隷になったの? それとも借金?」


……


「……どちらでもない……。いわゆる違法奴隷だ……俺達は……。だが過程はどうであれ……奴隷からの解放は……容易ではないだろうな……。俺達は……こいつは……」



「ちょっとはハッキリ言ってよ! 一応は助けたんだよ! それに、ここに置き去りにされたら生きていけないでしょ! そんなに弱っている仲間を見捨てるの?」



……



「……そうだな……。悪かった……。…………俺とこいつは仲間に裏切られた……。俺はこいつと結婚する予定だった……。しかしそれを良しとしない奴がいた。そいつに不意を付かれ気を失っていると、いつの間にか奴隷となっていた……。こいつももういらないと、奴に売られたそうだ……。自分に従わない奴は……もういらないと……。それから一年ほどは奴隷……だった……。だが……俺達を連れたまま……他の都市に移動中……あのハイオーク達に襲われた……俺の元主は……死んでいるな……」



フォウ……意外にヘビーな展開か?

僕はこの展開についていけるのかーー



「じゃあもう帰るところはないの? それにまだ聞いてなかったけど名前は? 僕はラウール。ファンフート王国で冒険者をしている十二歳だよ!」

ちょっとは軽めに言っておく。思い展開は嫌だーー!



……



「俺もこいつも……もう名はない……どうとでも呼んでくれ……」



オーノー!

結局重いよ……

それでも鑑定はしない!



「んーー名前はまーいいとして、どうする? 一緒に来る?」

……話の流れでつい誘ってしまった。

……サクラとクロウに相談もしていないのに……集中しているのか、念話も届いていないし……



「……良いのか? ……邪魔になるぞ……」



はいっ! 誘いに乗りました!

……覚悟を決めて連れていこう。

奴隷には詳しくないから、プッチモ王子か副ギルにでも聞いてみよう。

獣人の奴隷を連れた人も見かけないし、獣人の冒険者に対応する方法も確認しよう。



「じゃあ、これから起きることは内緒ね。他言したら悲しいんで、しばらくは枕元で泣き続けるからね!」


僕は虎の獣人にそう言って、ゴーレムを作り出した。陸路高速移動用として、ムカデのような形にした。

そこに無理やり僕の魔法でどうやったかもわからないほどの改良を加えた。


これで誰にも見つからないよう姿を消す魔法をかけておけば、夕方までには王都ファンフートに到着するだろう。



ムカデゴーレムの上に虎の獣人を乗せ、落ちないように固定したあと、移動を開始した。



ここからは高速移動なので、話すことも出来ないだろう。



……

……

……



日が暮れ始めた頃、待ち合わせの王都ファンフートの門前に到着した。


王都より前にムカデゴーレムは亜空間収納に収納し、簡単に改造した魔物の革の衣類を虎の獣人に着せた。


そしてサクラとクロウの到着を待った。


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