第四話 初めて依頼票を確認
ステータスを確認した僕達は依頼票の確認に向かった。
相変わらずサクラは僕の手を取り、にやにやしながら話し出すことが少ない。
だが、僕もその姿を見て幸せを感じている。
依頼だが、こちらの世界の魔物の強さが分からないうちは慎重に行こうと考え、一番難易度が易しい依頼をこなすことにした。
僕達はわからないことが多かったので受付さんに不自然ではない程度の質問をした。
冒険者ランクとは→FランクからSSSランクまである。
どうやったらランクが上がるのか?→依頼をこなすこと。特定の条件を達成すること。試験もあり。
ランクが上がるメリットデメリットは?→報酬が高くなる。デメリットは、人によって縛られること。
縛られるとは?→強制依頼がある。Aランク以上だが、断ると降格になることもある。
どれくらい稼げるのか?→宿暮らしであれば一人五千エーンもあれば良い。
五千エーン? 硬貨は?→銅貨は百エーン(E)。子供の仮身分証明は格安。銀貨は千エーン。金貨は一万エーン。これ以上の硬貨もあるが、ギルドカードに入金できるので、高額のやり取りはギルドカードで済ます。
ギルドカードは初回無料で大丈夫?→それ以上にメリットがギルドにはあるが内容は内緒。
複数人で依頼を受けてもいいのか?→パーティー登録をすると、依頼達成点数がパーティーで分配される。
僕達はそれを聞いてパーティー登録をした。
名前はあってもなくてもいいと言うので、今のところは保留とした。
どのランクの依頼まで受けることが出来るのか?→自分のランクの一つ上までは受けることが出来る。
罰を受ける行動は?→どんなことでもトラブルを起こすこと。
そんなことを聞いてから依頼票を確認した。
依頼票はランクごとに並んでいる。
やはり僕達が確認する依頼票の辺りには若いと言えばいいのか、幼い冒険者がいる。
さすがにこの時間は少ないのだろうが、本当に冒険者なのか首をかしげたくなる子供もいた。本当に十二歳を越えているのか?
これが現実なのだろうな。
だが今は僕達も同じ位置にいる。
ひとまずは町で生活できる稼ぎを上げることを考えよう。
真剣に目の前の依頼票を見ているふりをして、周りの冒険者を観察してみる。
周りの冒険者は既に僕たちの興味を失った感じの者。
嫌らしい目つきを向ける者。
気にしていない者。
大きく分けるとこのような感じになった。
普通の事だな……
出来る限りいやらしい目を向ける者を避けようと考えていると、思うようにはいかない展開になる。
いくらかましな装備をした冒険者が僕達に近づいてくる。
「おう美人さん! 俺達のパーティーに入れよ! そんな顔だけのガキよりいい思いをさせてやるよ! もちろん夜もな!」
オウ下品な表現。
僕の大嫌いな話し方だな。
返事をしてもしなくても絡まれたままなんだろうな。
「何無視してるんだ! おうそこのガキ! お前も特殊な所に売ってやろうか? そのまま静かに美人さんを渡すんだな!」
考え事をしている時間で何も言わないと思われるんだな。
じゃあどうしよう、ゆっくり考えようかな?
だけど僕より先にサクラ……
「は~! 私の旦那様に何を言ってるのそこのでくの坊!」
絡んできた冒険者は確かに背が高い。
「私からラウールを引き離せるつもりなの! 何?! 死にたいの???」
いきなりサクラが切れている。
僕が先に切れると思ったのに、先をこされた……
「あなたたちは何がしたいの!!」
サクラから殺気が漏れ始めた。
その殺気を受けて動いてしまったのか、僕に向かって腰に携えていた片手剣を抜き切りつけてきた。
ブオン!!
一応こんな冒険者が放った斬撃だがいい音はした。
ジャ!
と僕は真剣白刃取りの感じで攻撃を止めた。
周りは静か。
斬撃の後に少し声はあったが、今は誰も声を出さない。
「なんなんだよお前??」
切りつけた冒険者から聞かれてしまった。
「なんだと言われ……「あんたは敵ね!! 私のラウールに敵対するのね! わかったわ、今すぐ死んで! 私の幸せを一瞬でなくそうとするなんて…………百回死んでも許さないわ!!」
過激だ……
サクラは前世以上に気持ちを抑えていない。
だがしかし、僕も負けない。
今世では僕達は夫婦になった。
念願の夫婦だ。
妻を守るのは夫の役目……
今守られそうなのは置いておいても、僕がやる!!
「サクラ! 僕に任せて。僕が負けると思う?」
「ごめんラウール……。あなたがそんなでくの坊に負けるわけないのに、出しゃばりました。これでは妻失格ね。ここは夫であるあなたにすべて委ねます。」
ラウール達の周りにピンクな空気が立ち込めている。
誰もが突っ込みたいが、二人はもう自分たちの世界に入っている。
そう、前世で長い長いあいだ想いを募らせて、ようやく結ばれた二人の絆はそれはもう重いのだ。
「じゃあ始末するね! サクラ、よーく見てて!」
そうラウールが絡んできた冒険者に向かおうとしたとき……
「ちょっとまった~!」
そう、奥の階段の上から叫び声が聞こえた。