第四十一話 プッチモ王子からの依頼票
僕達は数日間は依頼も受けずに王都内外で遊んでいた。だが、噂が広まるのが早いのか、門は一応貴族専用門を通らされた。
商店でも丁寧な対応をされ、町行く冒険者などは僕達を見かけると、何かを話していた。
一寸だけ目立つようになったが、直接的に何かが降りかかることはなかった。
それでそろそろ冒険者ギルドに指名依頼が出ているか確認するため、冒険者ギルドに入った。
……そしてすぐに受付さんに捕まり、副ギルとホワイティアが僕達の目の前にいる。
……そう、何時ものギルドマスターの部屋に入ることになっていた。
「お前らにはプッチモ王子から指名依頼が入っている。一応内容を確認してから受けてくれ。話はついてるみたいだしな」
おー、本当に依頼が来たな。
「それとは別に、お前らに素材の売却依頼が来ている……さあ、何を持っているか教えてくれ! お前らが持ってきた物なら、ランクに見合わなくても、スムーズに買取りが出来るぞ!」
おっ、そう言えば……ランクに見合わない素材は、売却に時間がかかるかも知れないって言ってたね。
僕達の実力を明かして、これは良かったかな?
「具体的には何が欲しいとかはあるの? クロウが勝手に集めているから、僕よりはクロウに聞いた方が早いかも?」
「じゃあクロウ! 何を譲ってくれる! 高く買い取るぞ!」
クロウは表情の判別が他の人達には難しいが、何かを考えているようだ。
「我も何って言ってくれた方が出しやすい! 魔物と野草……鉱石類のとか、何が良いの?」
こうなると副ギルもホワイティアも考えている。
「私は褒章伝達式の時などに出した、ブラックドラゴンの素材は欲しいと言われていますね」
「俺もあの場にいた貴族から、あの頭が欲しいと依頼が入ったと聞いたぞ!」
やっぱり見られてるよね……
クロウがどうやって出したかを聞かれないだけ良いのか……
「ラウールとサクラがもう使わないなら良いよ。あの黒い装備にいくらか使っているから、全部はないよ!」
「なんと! あの装備はドラゴンの素材か! だが、誰が加工したんだ? ドラゴンの素材の装備には見えなかったぞ! どちらかと言うと、普段着みたいだったろあれは! 遠くから見ただけだが……」
加工したのは僕ですとは言わないぞクロウ! と念を送る。
「それは内緒! ラウールに後は任せる! あの時見せた物だけだよ!」
ん~あの時のかーーどうしようかな?
「じゃあブラックワイバーン、ブラックドラゴンはもう使わないかな。あと……あっ今ある魔物素材はいらないか、全部売るよ」
ホワイティアと副ギルの顔つきが変わった。嬉しい顔なんだろうなあれは。
「他は鉱石類か……うん、ミスリルも僕の体の大きさ分以外は売っても良いかな」
「ミスリルだと!」
「うん、ミスリルもあるよ。あとは何かに使うかも知れないから……野草や薬の材料になるものはなしで。だから結局は魔物とミスリルだけかな? どこか広い所はある?」
「それでは王子からの依頼を確認してくれ」
そう言われ、僕達は王子のものらしき封蝋がされた手紙を読み始めた。
【冒険者パーティー黒猫へ指名依頼
私プッチモ・フォン・ファンフートが依頼する。
私の護衛兼戦闘指導をしてくれ。期間は未定だが、依頼を開始できる日にちが決まったら連絡が欲しい。
視察などがあった場合には別途に報酬がある。また、王都以外での私の活動に付き添う義務はない。ただし、騎士爵では見ることの出来ない所に出向く可能性はある。興味がある場合は同行しても良い。
ここからは依頼ではないが、騎士団の戦力強化や王族の若い者も鍛えてくれたらありがたい。まだ学園に通う年頃の子もいる。学園も興味があるのなら臨時教師や生徒として行けるようにするぞ。
私は黒猫の冒険者活動を応援するぞ。
それでは連絡をくれ。】
こんな内容になっていた。
僕達は特にすることもないと、一番早い日にちで良いとホワイティアに伝えた。
この内容であれば遠出をする前は準備の時間ももらえそうだし、買う時間がないのなら作ってしまえば良い。
それに王子と一緒にならある程度僕達に必要な物を準備してくれそうだしね。
ホワイティアはギルド職員を呼び手続きするよう指示を出していた。早速動くようだ。
そしてこれで王子に関する用事は終わったと言うことで、皆で解体場に向かった。
そこには解体担当の職員が大勢おり、魔物の解体にあたっていた。それでも空いたスペースが有ったため、クロウにそこに置いてほしいと副ギルが伝えていた。
「ここじゃあ半分も置けないよ! ドラゴンだけで一杯になるよ! 我が持っている数は全部は無理~!」
一辺が十メートルは有るが、流石に僕もあの量を思いだし、無理だと思った。
「クロウ! とりあえずドラゴンだけでも置こうか。あれは僕が受け取ってある程度解体も済んでるし」
僕がクロウにそう声をかけると、いつも通り何もない空間からブラックドラゴンの素材が出現し床に置かれた。
鱗や革等は少し使ったが、ほとんどの部分が残っている。肉も貴重だが、内臓から血まで全て捨てるところはないそうだ。
「……この大きさをクロウが……。こいつは長生きしたドラゴンだぞ、この大きさなら……は、はは……うん……魔石も出してくれるのか!」
こんな感じで副ギルが驚いてくれたので、僕達は気分よく他の素材も提供することにした。
明日にはもっと解体場を整理しておくと笑顔の副ギルに「また明日来ます」と告げて宿に戻った。