第四十話 対サーマンパーティー
僕達は王城の外にある演習場に案内された。そこは魔道具で管理された結界が張られている。
一定量を越えた攻撃では破壊されるものの、外に魔法などを通さない構造になっている。
怪我を防ぐ謎技術は無いため、回復出来る人物が演習のある時は控えているそうで、今日もこの場にいるそうだ。
サーマンのパーティーはサーマンがSランクで、残りの五人がAランク冒険者だと聞いた。【疾風怒濤】と登録している冒険者パーティーだ。
そんな情報を頭の中で整理していると準備が整ったようで、演習場へ入場することになった。
演習場には訓練を視察するための観覧席が設けられている。
そこでは普段は騎士団の訓練状況を確認しているだけなのだが、今は多くの人々で満席状態だった。
王族など最上位の存在が観覧するであろう場所にも人の気配がする。
僕達はただ悠然と演習場の中央に歩を進めた。
サーマン達【疾風怒濤】のパーティーも準備は出来ているようだ。
サーマンは片手剣に革鎧の装備をしている。他のメンバーも魔法使いらしき人二名がローブと杖を装備し、盾役らしき人物が大楯に金属の鎧を装備している。
更にナイフを手に持つ身軽な格好をしている者と、サーマンと装備が被っている者で全員だ。
対する僕達は大鎌と鉤爪は大怪我をさせそうなので、棒術で戦いそうな長い棒を武器とし、定番にしようとしている黒装備にした。
「おいおい、強いのはわかるが、そこまで装備の質を落とさなくてもよかったぞ!」
「私達を相手に強気ね! でも私達が魔力を通したら、こんな装備でも……何でも破壊できるし、どんな攻撃でも傷を負わせられないわよ!」
「ほーう……魔力を纏えるんだな。まー当然かお前らなら……。だが、俺もSランクの冒険者だ! ただでは終わらないぞ!」
「やれるもんならやってみなさい! ……だけど、パーティー戦で良いの? 私達全員相手だと、一瞬かもよ?」
流石にこの言葉には疾風怒濤のメンバーも怒った表情をしたが、何も言ってこなかった。
「いや、全員でないと俺達パーティーも意地がある。一人相手に全員では戦えないぜ!」
と口での前哨戦が終わると、取り仕切るのか、団長が僕達と疾風怒濤の間に立った。
そして「殺す」「再起不能」のダメージを与えることを禁止すると言われ、模擬戦が開始された。
先手は疾風怒濤の魔法使いだった。
詠唱はほとんどなく水の玉が複数飛来した。それに合わせたのか、もう一人の魔法使いがパーティーメンバーの強化をしている。
それから僕達に向かい前衛のサーマン達がフォーメーションを組近づいてくる。
そんな攻撃を僕達は……
「クロウ! 羽ばたきがみたい!」
「サクラは僕と近接戦!」
そう決めて攻撃に対処する。
「じゃあ我の羽ばたき!」
とクロウが言うと羽ばたいた……そう羽ばたいた……
しかしその効果は大きく、水の玉は破壊され、魔法使いに風魔法でダメージを与える。
そうか、羽ばたきに魔力を乗せて攻撃するのか! 魔力を込める量を調整し強さも変えるのか!
一人で僕は納得し、大盾使いの大盾に長い棒で攻撃する。一点に集中するように突きにネジリを加える……
その衝撃で、結構高そうな大盾に穴が開いた。
そして隙があり、大盾使いに横から長い棒を叩きつける。
それだけで一人が戦闘不能になった。
サクラも先にナイフ使いを軽くあしらい、片手剣使いに向かっていた。
その時詠唱を再開していた魔法使いが炎の槍を数本飛ばし、もう一人の魔法使いは僕の後ろに土の壁を作り動きを妨害してきた。
だが、クロウが一瞬で土の壁を破壊し、サクラも片手間で炎の槍に水の槍を合わせて消滅させる。
クロウは勢いのまま旋回し、魔法使いを風の魔法で壁まで吹き飛ばす。
サクラも魔法を使った後に片手剣使いを長い棒で転ばせて、首に棒の先を当てた。
サーマン以外は戦闘不能か降参し、サーマン対僕達になった。
流石に不利になったサーマンは僕に一騎打ちを申し込んできた。
「パーティー戦は俺達の完敗だ! だが、俺と一騎打ちしてくれ! 今の俺の全力で挑む!」
「一騎打ちは受けるけど、今よりも全力を出してよ。流石に今までの力が全力ではないでしょ?」
と僕がニヤリとして挑発すると、サーマンもニヤリとした。
「一寸だけ時間をくれよ……」
と体に魔力……いや、闘気と呼べば良いのか、サーマンの体を気が駆け巡る。
「…………待たせたな……」
流石にSランク!
これが頂点まで辿り着くかも知れない冒険者か!
サーマンは僕との距離を一気に詰めてきた……さっきまでより数倍早い!
一気に僕の頭を狙い片手剣を振り下ろす。
しかし僕には対応できる早さなので、避ける……そして長い棒の一番威力が発揮できる距離まで下がり突く!
手加減した僕の一撃を受け流し、そのままサーマンは横に剣を振るう。
これくらいかな?
まーー二撃も打たせたら十分だよね?
そう思い、僕はサーマンが対応できない早さで空を蹴りながら近づき、頭を蹴る。
それで終わりだ。
呆気なく終わった戦闘。
僕達は皆で喜びの声を交わしているが、サーマンパーティーや観客は唖然としていた。
流石にサーマンパーティーが可哀相になり、クロウに頼んで、ブラックドラゴンの頭を演習場に出してもらった。
「これは僕達が……僕の従魔のクロウが倒した魔物だ! 決してサーマンパーティーが弱いわけでない! 僕達が強いだけだよ!」と演習場全体に聞こえるよう魔法を使い拡散した。
少し間をおいて歓声とどよめきが広がった。
その後は何か司会者が話していたが、僕達の役割が終わったと思ったので、司会者に話して帰ることにした。
王子には伝言で、冒険者ギルドに依頼を出しておいてと伝わるようにして……