第三十五話 戦勝式典への招待
対魔物戦が終わりしばらくは王都が落ち着かなかったから、僕達は冒険者ギルドに顔を出さずにいた。
だが、七日が過ぎる頃になると王都に大分人が戻って来ており、賑やかな雰囲気に変化した。
そろそろ冒険者ギルドも落ち着いているだろうと思い、今冒険者ギルドに入ったところだ。
「おいおい! 黒猫が来たぞ!」
「あっ! あのラウールの肩に乗っているのが噂の……」
「あいつらがほとんどの魔物を倒したんだろ……」
「サクラちゃんの魔法は凄かったぞ! 俺は後ろで見たぞ!」
「ラウールなんてゴブリンロードと戦って無傷だぜ!」
「は~、あいつらあれでDランクだぞ……。俺達なんてBランクなのに、フォレストウルフの集団に……」
予想はしていたが、凄い騒ぎだな。
そんな感想を持ちながら受付に向かうが、途中でギルド職員に声をかけられた。
「黒猫の皆さんが冒険者ギルドに来た時は、副ギルドマスターが『ギルドマスターの部屋に連れてこい!』との事ですので、ご案内しますね」
良い笑顔で副ギルの真似をしたギルド職員に連行された。
何時ものギルドマスターの部屋。
そこの椅子に座らされたが、目の前には副ギルともう一人の女性が座っている。
見た目は、この世界初のエルフだが、誰?
「はじめまして、黒猫の皆さん。私は王都の冒険者ギルドのギルドマスター兼ファンフート王国の冒険者ギルドを統括しています、ホワイティアです。エルフ名は長いですので、ホワイティアとお呼びください。ティアでも良いですよ」
あ~初めてのギルドマスターか。
エルフだから年齢が気になるが、鑑定をする勇気はないな。何か知られそうだし。見た目は二十歳くらいで若いな。
「ん、何かよからぬ事を考えていませんか?」
やはり! 勘が鋭い。
「いえいえ、ティアさんがエルフかな? と考えていただけですよ」
「エルフを見るのは初めてですか。確かに種族ごとに暮らすことが多いので、人間族のこの国では滅多に見かけませんものね」
あ~そういうことか。稀に獣人は冒険者ギルドで見かけたけど、この世界は種族ごとに固まって暮らしているのか。
「話が逸れましたね。えーとですね、黒猫の皆さんは褒章式に招待されています。もちろんクロウさんもですよ。今回の戦いでは、参加した者全員が頑張りましたが、黒猫の貢献度が一番高いですので」
うん、皆だったら良いけど……従魔も良いのか?
「正式には褒章伝達式になりますので、その場で褒章を授かる事になります。今回は国王様が参加されますので、態度には注意してくださいね」
「それは欠席はできないと?」
出席はするけどね。
「無理ですね……ですが、代わりとも言えませんが、冒険者に貴族並みの態度は望んでおりません。普段より丁寧な口調や態度でも許されますよ。それだけ黒猫は活躍しましたから」
ん~ちょっと安心……なのか?
「細かい注意点は後で文章を差し上げますね。それで、もう一つ申し上げたいことがあるのですが、黒猫の冒険者ランクの事です。今現在Dランクですが、今回の戦いの報告では、Sランク以上の戦闘力が確認されています」
Sランク以上の戦闘力か~。
ただ、貢献度は高いけど、依頼達成数がね……
「今回の報告を基にランクアップをしますが、一ランクアップが限度です」
やはりか……
「何故かと言いますと、依頼達成件数は何とでもなります。今回の戦いで倒した魔物全てを合わせると、かなりの依頼達成数になりますから」
「じゃあ何で駄目なのよ! 私達はそこまで急いでいないけど、もったいぶらないで、バーン! と話してよまどろっこしい!」
サクラが……
「ごめんなさいね。じゃあハッキリ言うと、依頼達成の種類ね。冒険者ランクは戦闘力だけではないですから。必要最低限の戦闘力と得意分野での絶大な貢献でもランクを上げることが出来るんですよ。だから黒猫が足りないのは、戦闘以外の依頼達成ね」
「そうだろうね。僕達は低ランクの町中依頼や採取依頼。護衛依頼や討伐依頼しか……あれ、以外に色々な依頼をこなしてる?」
「はいっ! ですからあとはもう少し件数を稼いで頂けたら。盗賊も相手にではないと理解していますから、そちらももう少し頑張ってほしいのです」
「やはり、人も殺す必要が……」
「はい、本来なら試験でもあるのですが、試験官と共に盗賊退治に行く必要があります。それか、他の高ランク冒険者が見ているところで盗賊を討伐する必要があります。ギリギリで冒険者ギルドから信用のある者の目の前でですかね」
「へ~、ちょっと大変だね。じゃあ結局僕達はCランク?」
「はい、Cランクに今日で昇格です。あとは、護衛依頼がもう二回程達成されると、盗賊討伐試験があります。それに合格してBランクですね」
そんな話をしていると、褒章式の注意点が書かれたものをギルド職員が持ってきてくれた。
話がそこで中断されたが、ちょうど良い頃合いだと、ティアからの説明は終了となった。
僕達はこれで用事はすんだので退室しようとした。すると最後にまた丁寧にお礼を言われた。多くの冒険者が無事に帰還できました……喜ばしいことです……と。