第二十九話 副ギルからのお願い
冒険者ギルドに集まっている冒険者が建物に入りきらなくなってきた頃、副ギルが冒険者の前に姿を現した。
「お前ら!今日は依頼…………頼みがある!!」
そんな言葉から始まった。
王都ファンフートに魔物が迫っている。
オークとゴブリン、フォレストウルフが群れとなり進んで来ている。
その一群は五千匹にもなり、何処に潜んでいたのかはわからない。
しかし現実的に迫る危機があるので、皆が協力し防衛……殲滅してほしい。
王都に騎士も精鋭を含め四千人は集めることが出来た。
だが上位種も確認された魔物の集団に対応するには、個人の強さを持っている冒険者の協力が必須である。
冒険者ギルドも高ランク冒険者に声をかけて、王都に来てもらっている。これから到着するSランク以上の冒険者もいる。
だから、今王都にいる全ての冒険者登録をしている者は、今回の依頼に協力してほしい。
ゴブリンを押さえることが出来る戦闘力がある冒険者は、今回の依頼を受けてくれ。
そうギルドマスターが不在で、副ギルが国からと言う依頼を提示した。
【防衛依頼
王都ファンフートの防衛。
魔物の殲滅。
討伐数や貢献度により報酬は変動。
参加者全てに国から報酬がある。
個々に別の依頼が発行される可能性があり。
依頼主:ファンフート王国】
国からの依頼が出た。
ここまでテンプレで、フラグを回収する依頼もないが、今いる冒険者で大丈夫か?
クロウから聞いた感じだと、Sランク冒険者程度の戦力が数人いる程度だと思うが……。
本番までに到着する冒険者がどの程度強いかはわからないが……。
僕達がこの世界で鑑定がある事を知り、謎の探索……調査をしているクロウの情報をまとめるとこうだ……。
【クロウの勝手に評価(数字で表される)】
LVで能力の差はあるが、冒険者の平均的な評価の数値。
LV10でFランク冒険者。
LV70でSランク冒険者。
おおよそLVが10上昇で冒険者ランクが一つ上がる位の強さ。
強さに関わる平均戦闘力ステータス値
人間族(非戦闘職)20
ゴブリン 100
オーク 300
オーガ 500
ロード種 Sランク 1000以上
ドラゴン 2000以上
竜 4000以上
龍 8000以上
超越種 10000以上
人間族:戦闘才能なし Fランク20 Eランク30
人間族:平凡 Fランク40 Eランク70 Dランク100 Cランク130 Bランク160
人間族:戦闘の才能あり Fランク60 Eランク110 Dランク160 Cランク210 Bランク260 A ランク310
人間族:上り詰める冒険者 Fランク100 Eランク170 Dランク240 Cランク310 Bランク 380 Aランク450 Sランク520
人間族進化種: Aランク600 Sランク900 SSランク2000 SSSランク4000
最低限の数値で、これ以上強くもなれるので才能差があっても上のランクに到達する人間族もいる。
スキルの相性で数値だけでは判断は出来ず、一点特化型の能力値の生物もいる。
ちなみにラウール達は…… 測定不能。
・・・・
もうこれからは思い出しもしないだろう数字だ……。
人間族の進化って……。
数字……クロウはどうやったのだ…………。
それはさておき、王都は厳しい戦力で戦う事になる……。
Cランク冒険者からAランク冒険者一人がオーク一匹と互角程度……。
ゴブリンの討伐報酬額低くないか?
だけど数が多いから、ん、うん、考えないでおこう。
そんな数字遊びをしていると、副ギルが僕達の前に立っていた。
「おい……頼みがある……ちょっと来てくれ……」
僕達はギルドマスターの部屋に一緒に入った。
「【黒猫】になったんだな。黒猫に頼み……依頼がある。俺は実力のある冒険者個々に依頼を出せる権限を持ったんだが……。お前らはDランクだが、最前線か王子の護衛を任せたい……どうだ?」
急な話だな、王子の護衛となると目立つな。
「王子は戦場に出るの?」
「そうだ。国王様は国の要で、戦場には出ることができない。しかし、王子は国のために戦場に出るとおっしゃっている。戦力としても十分計算できるが、それでも護衛は必要だな。近衛騎士もいるが、冒険者ギルドからも出しておくべき存在だ」
ん~面倒事の臭いがする……。
「前線は王子とは別なんだよね?」
「そうだ。お前らには最前線を任せたい。今王都にいる冒険者は、大体はお前らがランク通りの冒険者とは思っていないからな。後からくる助っ人達にも俺から説明する。ランクが高い奴ほど、年齢や見た目で判断はしないからな」
そうだよね……高ランクまで至ることが出来る冒険者は、幼いときから何かを持っているだろうしね。
僕が考え事をしていると、サクラが気になることを聞き始めた。
「最前線に私達を配置するよりは、もう少し位置を下げてみたらどう? 回復魔法で怪我を治せるし、魔法で援護も出来る。移動も速いから危ない冒険者を助ける事も出来ると思うけど?」
副ギルは少し考えた……。
「それでも最前線を頼みたい。魔物の集団は四方八方から向かってきているわけではない。同一方向から王都に向かっている。だから、出来る限り短時間で魔物を殺すことが出来る冒険者を最前線に置きたい。回復や遊撃は他の冒険者に任せる」
少しサクラとラウール、クロウは話し合った。
そして出した答えは……
「わかったよ。副ギルからの依頼は受けるよ。受けるのは…………最前線で……。ただ、僕達が最前線だと、他の冒険者が魔物を倒す機会がなくなるかもよ?」
「そうよ! ラウール一人でも十分だけど、それだと駄目でしょ?」
「……そこまで言えるのか……。ただ俺の常識の範囲だと、流石にそこまでの事は言葉だけでは信用出来ない……。出来る限りの力で頼む!」
「わかったわよ! 私達なりに動いて、他の冒険者にも活躍する機会を残すわ!」
「僕達はロード種とか強い魔物を狙うよ。戦線は乱さないようにね」
「お、おう……。ロード種もこれだけの集団だからいるだろうな……」
僕達は依頼を受けることにして、副ギルと別れた。
冒険者ギルドはまだ大勢の冒険者が残っており、受付に長い列が出来ていた。