第二十八話 慌ただしくなる冒険者ギルド
ランクアップ試験の結果を受付さんから聞き、見事にランクアップした。
僕達はこの世界に来てそんなに日にちが経っていないが、こんなに早くDランクに上がるものなのだろうか?
ま~自重をしない生活ならあり得るのかと、サクラと話をしていた。
そしてこの日は宿に戻り軽く贅沢をしてから寝た……うん寝た……。
次の日。
Dランクに上がったことで、Cランク依頼も受けることが出来る。
僕達は冒険者ギルドで依頼票を確認している。
そんな僕達を周囲の冒険者は見ていたが、今までよりも好意的な視線に変化している。
昨日までは実際に僕達が戦う姿を見たことがなく、得体の知れない強い冒険者のイメージだったろう。
それがランクアップ試験を自分の目で見て、本当に強い冒険者にイメージが変わったのではないだろうか。
だからこその視線の変化だと思う。
想像だけ膨らんだ、得体の知れない存在は怖いものだ……。
「さて、今日は何の依頼を受けようかな?クロウは何か気になる依頼はある?」
「特にないよ! だけど、魔物の気配が強くなってるね! 我夜に散歩に行ってきたけど、王都に向かってる!」
「えっ! クロウは何をしているの? 私達が知らない間に、自分だけで森に行ったの?」
「我、邪魔をしたら駄目でしょ! だから飛び回ってきたよ!」
何とクロウは森の調査をしていたそうだ。
僕達が気づかなかっただけで、結構な頻度で出掛けていた。
そんなクロウの情報では…………。
オークとゴブリンの争いは互角で、結局ボス同士の争いになった。
王都で見た冒険者同士の争いどころではなく、久しぶりに激しい戦闘が見られたと喜んでいた。
だけど、ボスの争いが引き分けで終わったことで、知能が高いボス同士が群れ同士で協力する事にしたそうだ。
数が増えた群れは食料が足りず、人間の多い王都を目指して進む計画を立てていた。
だから、オークとゴブリン、フォレストウルフが集団となり進軍してきている。
人間側も詳しい事情までは知ることが出来ていないが、王都へ進軍する魔物の群れを確認していた。
それを把握しているクロウは、そろそろ冒険者ギルドでも情報が発表され、依頼も出るだろうと断言した。
クロウ……。
流石だけど先に一言が欲しかったよ……。
だけど、フラグは回収しないといけないな。
「サクラ……クロウの話だと、もうすぐ騒がしくなりそうだから、依頼を今受けるのは止めようか?」
「そうね、多くの魔物が来るんであれば、他の依頼を受けるどころでは無いものね……。クロウ? 上位種はどれくらいの魔物だった?」
「我が見たのはオークロードとゴブリンロードだったよ! 変な進化をしているの魔物は、いなかったと思うよ。ロードの下にはジェネラルとかはいたよ! ウルフの上位種はいなかったよ!」
ん……ロードか……。
変な魔物がいないのは良かった……のか?
だけど、鑑定していないからわからないけど、騎士や冒険者で倒せるのか?
「クロウ? 王都で強い冒険者はいた? 冒険者ギルドで今までは出会っていないけど、王都って言うだけあって、強い人間もいると思うんだけど?」
「我が感じて強い人間はいたよ! だけど、ロードと比べたら、一人では倒せないかも。今回はロードが二匹だから、負けるかもね!」
負けるか……。
確かにこの世界でもロード種はSランクの魔物だものね。
会ったことはないけど、SSランクの冒険者やSSSランクの冒険者なら一人でロードを倒せるかな?
「クロウ? 一番強い人間は冒険者? 騎士? 何処で感じた?」
「一番大きい王城? 王宮? 国王が住んでいる所にいたよ!」
国王が居る所まで把握しているのか……。
クロウの方が僕達より王都を把握している。
流石に頼りになるな!
「じゃあ、一先ずは国王は大丈夫そうだけど、一番王都の被害が少なくなるには……。僕達が殲滅することだろうけど、それはやらないし……」
「ラウール! あまり悩まないで……。私達は強いけど、今はDランクの冒険者よ! 何でも解決してあげるのは違うわ! 例え誰かが死ぬことがあっても……この世界の人達も頑張らなきゃいけないのよ! だけど、見捨てもしないわよ。回復だって私達は出来るんだから!」
「そうだね。強いからって、何でも背負い込むのは違うものね。うん、ありがとうサクラ! 王都の人達と力を合わせて頑張ろう!」
僕はサクラのお陰で、考えがまとまった。
だから今日は魔物の襲撃に備え、道具屋に行って必要な素材を購入した。
僕達の手持ちの素材と、購入した素材で他の冒険者の助けになる薬を作成した。
出来るなら使わないで済むように祈りながら……。
そんな事をした次の日、冒険者ギルドが慌ただしくなっていた。
副ギルの姿は見えないが、冒険者ギルドにはいるようだ。
受付さんは緊急の依頼でない依頼を、今は受けられないと冒険者に説明を始めた。
そして冒険者には、副ギルから緊急のお願いがあるので、このまま冒険者ギルドに残っていて欲しいとのメッセージがあった。
おそらくは魔物に関することだろう。
冒険者ギルド内には騎士の姿も見え、これも合同の依頼になると感じられた。




