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第二十七話 Dランクへのランクアップ試験

僕達が訓練場に移動して模擬戦用の武器を選んでいる間に、今日いた冒険者が皆移動したのではないかと思えるほど、観客が大勢いた。



「おい! 見えないぞ! そこの奴! 屈め!」

「彼奴らが……」

「おーー! 女の子は大鎌を持っているぞ……」

「相手をするギルド職員は誰だ! 気の毒に……」

「俺が代わってやるかー「本当に代わるか!」……ご免なさい! 嘘でーす!」

「おいおい、何でEランクのしけ「お前も来てるだろうが!」ん……お、おう……」

「サクラちゃーーん!! 頑張ってーーー!!」

あら、違う声援が……。

「ラウーーール! 羨ましいぞーーー!」

あれ?

「お前らーー! 瞬殺だ~! 俺の金を増やしてくれ!」


あ~、賭けもあるか……。

それでも声援があるな。



ラウール達に今まで関わっていなかった冒険者達。

直接被害を受けたのは、あの時のだけだった。


あの時の事を思い出して恐怖を感じる事はあったが、決してラウール達だけが悪いわけではないと思っていた。


その証明に、ラウール達が自ら危害を他の冒険者に加える事はなかった。


かえって他の冒険者同士の争いの方が多かった。


意外にラウール達が気にしているだけで、何もしなければ目の保養になる人達と思われていた。


声援を聞いたラウール達が驚いていると、審判役の冒険者ギルド職員が話し出した。


「それではこれより、ランクアップ試験を始める。公開される試験はこのランクまでで、騒ぎたい気持ちは分かるが、騒ぎ過ぎないように。それではEランクの冒険者、ラウールとサクラのどちらから受けるか?」




「私よ! ラウールが出るまでも……でなきゃ駄目か……。私に勝てないなら…………ラウールが出るまでもないわ!」


サクラが両手を腰にあて、堂々と立っている。


「「「うぉぉぉーーー! サクラちゃーーん!」」」



ここぞとばかりに、普段話しかけることの出来ない冒険者が声援を贈る!



「私はラウール意外に興味はないわよ!!」



ガガーーーン……と聞こえそうなほどがっかりしている……。



「ん、んっ! 始めるぞ!」



そう言った声が聞こえ、僕達は試験官を見たが、顔がひきつっている……。



「では、始め!」



試験官は待ちの構えだ。


「おい、お前も強いんだろうな……。だが、試験だからお前からかかってこい……」


足元がやや震えているが、姿勢は良い。



サクラは試験官の話を聞き、戦闘体勢になっている。



「じゃあ真っ直ぐに正面から切りつけるから、上手く防いでね。ラウールに攻撃する時より……どれくらい手加減になるかな?」



と『なるかな』と言う言葉の時点で試験官の前にいた。そして、試験官が構えている剣に大鎌を当てている。

衝撃も与えず、ただ大鎌は添えるだけ……。


「どう? もっと力を込めようか? 試験も続ける?」



驚いている試験官……。


「終了で……良い……」


サクラは終了と聞いてラウールの顔を見た。

そして満面の笑みを浮かべた。


「ラウール! 見てた! 私の絶妙な手加減……。本気で戦えるのはラウールとクロウ、そふぃ……だけよ! 今度模擬戦しようね!」



サクラ……ソフィア達の名前を言いそうだったな……。

思い出すと、寂しいな……。


「わかったよサクラ! 君の全力を受け止められるのは、僕だけだよ! 」


ちょっと大声で言うのは恥ずかしいな。



「じゃあ私もそっちに戻るね!」


サクラがそう言うと、周りの冒険者が目で追えない速さで僕の隣に来た。



ガヤガヤガヤガヤ

ガヤガヤガヤガヤ



「おい! 試験官にどうやって攻撃したか見えたか?」

「見えるわけないだろ!」

「何だ……何をしたんだサクラちゃん……」

「ラウール……羨ましいぞ!」

「なんてEランクだ!」

「俺達のパーティーに入ってくれないかな……」

「あれじゃあ誰も手は出せないな……しかし、貴族が狙うぞ……」

「あの容姿……無事でいて……」

「国王様なら……。守ってくれるかも……」



ん? 最後の方で貴族情報が……。

国王様は好い人か?



「では、俺も冷や汗と緊張だけですんだから、続けてラウール! 来い!」



「ラウール、頑張ってね! 手加減を間違えて殺さないでね? ラウールならそんなことはないと思うけど……頑張れ!」


サクラはそう僕を応援すると、両手で僕の顔を挟み見つめてきた。


「もちろん! 直ぐに戻ってくるからね!」



とサクラの手を優しくはなし、試験官の前に立った。


「それじゃあ……ラウールは武器を持たずに出てきたが、素手か? 魔法か?」



「今回は素手で行きます。それと、試験官さんの剣は壊れても大丈夫ですか?」



「おう、これは模擬戦用の武器だから、壊れても弁償はしなくていいぞ!」



「じゃあ、僕はその剣を破壊します! 素手でそれが出来たら、合格でいいよね?」



「……十分合格点をあげれるな……。しかし俺も頑張るからな!」


試験される側が強気なのは変だけど、僕達の実力をわかってくれているな。


「では、行くぞ!」


今回は試験官さんが受けではなく、先に攻撃を仕掛けてきた。

サクラの時は受けるって言ってたのに……。


目の前に迫る試験官の剣。

僕の頭に振り下ろされる剣は、普通なら相手に大怪我を負わせることが出来そうだ。


しかし僕はその剣を…………


人差し指で……



スパッ!!



切った。


剣を振り抜こうとした試験官の体のバランスが崩れ、前に倒れそうになる。

そんな試験官を助ける……ことをせず、避けた。



「「「「うおおおーーー!!」」」」



僕の攻撃はおそらく目で追うことが出来たのだろう。


体勢を整えた試験官も「これで試験は終了だ……」と宣言し、ランクアップ試験の結果は協議後に教えてくれるそうだ。



興奮がなかなか収まらない訓練場だったが、僕達が退場すると皆も徐々に引き上げるのだった。


その中には「稼げたけど少しだけだったな」と言う声があり、僕達の勝利にかけた人が大勢いたと思われる。



僕達は結果を聞くために冒険者ギルドに残るのだった。

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