第二十五話 オークの集落を発見
僕達が先頭になりクロウが示す方向に進んで行く。
途中でゴブリンとオークが一緒に出現し、僕達だけで倒すとまた驚かれた。
今の僕達は十二歳。
十二歳の僕達が魔法の『風の刃』を使い、オークを一発で倒す。
ゴブリンも弱いが魔物。こちらも素早い動きで後ろに回り込み、一撃で仕止める。
クロウは目にも留まらぬ動きで、騎士達には見えていないだろうが、魔力で爪を伸ばし攻撃した。
何も話さなくなった騎士達だったが、素直に僕達の後についてきた。
そのまま先に進んで行くとクロウが「近いよ!」と言い、僕達でもオークの気配を感じる事が出来た。
「ん~、これは多いね。この感じはオークやゴブリン、あとフォレストウルフかな?更に強そうな気配もあるし、上位種もいるのかな? クロウはどう感じるの?」
「我も上位種がいると感じるよ! こんな集落が複数あるよこの森に! オーク単独ではないよ!」
「そっか~、どうするかな……。僕達でここだけでも殲滅しておく?」
するとフィフトさんが復活したのか、僕達に近寄ってきた。
「話しているところを邪魔するのじゃ。ワシには何も感じないぞ。一応ワシ達も魔物を確認する役割があるのじゃ。お願いするぞ。ワシ達も確認するために、先に進みたいのじゃ」
「良いわよねラウール。私達だけで全てを終わらせても、私達がいない時に困るのはこの人達よ。だから、私達だけで解決するのは止めましょ。私達はお手伝い程度にね」
「わかったよサクラ。じゃあフィフトさんもビルルさんも一緒に来て。その代わりに姿は絶対に見つけられないようにね。一応気配は感じられないように魔法をかけておくから」
そう言ってから僕はフィフトさんとビルルさんに魔法をかけた。
本当は姿を消すことも出来るけど、そこまでは見せないでおく。
魔法をかけられた二人は驚いた顔をしている。
お互いの気配を、感じることが出来なくなったようだ。
そこまでしてから僕達は二人を促した。僕達の後ろをついてくるように。
皆で移動して、木がなく開けた景色が見え始めた頃に、人工的な建造物が見えてきた。
粗末だが大きな壁。
奥には小さな崖があり、幾つもの穴が開いている。
入り口も見えづらくしているのか、木の策が突き刺されていた。
魔物も見張りをしている雰囲気で、穴の前と壁の周囲をウロウロ歩いている。
「ん~三百匹くらい? オークだけではないけど、合ってるクロウ?」
「合ってるよラウール! 大体三百匹だよ」
今回はビルルさんが会話に入ってきた。
「三百って本当に! 疑うわけではないけど、ヤバイわね……。早く帰って報告よ!」
「報告でいいんだね? 僕達が殲滅して帰らなくても」
「いいわよ! って言うか返り討ちに遭うわよ! 冗談を言っている暇はないわ!」
ん~、こう言っているならいいのか?
ま~、僕達の役割は調査だしね。
でも、王都の辺りにはオーク。
クレイダの町の近くにはゴブリン。
合流して一緒に攻め困れたら、やばくないか……。
フラグか!
「じゃあ帰ろっかサクラ。クロウもお疲れ! 次に受ける依頼が少し怖いよ……」
「私にもわかったわ! フラグね! 私の昔の口癖のテンプレね!」
サクラ……更に追い討ちを……。
これは覚悟しておくか。
僕達は変なフラグを立てながら、フィフトさんとビルルさんを促し、一緒に王都に戻る。
途中で出現した魔物もあっさりと倒し、素材を回収した。既に一度強さを見せていたので、お金の為に魔物を回収している事を説明した。
まだEランクだから調査依頼だろうけど、勿体なくてと言うと許してくれた。
おそらく無駄な時間は使わずに倒し、回収も偽マジックバックに素早く入れていたから。
帰りも順調で、王都の入り口に到着した。
何か急ぎの報告と説明したのか、普段と違う入り口から入った。
お陰で並ばずにすんだ。
ビルルさんとフィフトさんは騎士として報告に行くと、入り口で別れた。
僕達も一応依頼なので冒険者ギルドに報告に行く。
夜営があるかもしれないと出発したが、今はまだ夕方。副ギルはいるかな?
受付に誰がいるか予想しながら冒険者ギルドに入る。
うん、副ギルは居ないな。
じゃあ誰に報告しようかな?
受付の人達を見ると、皆が目を逸らす。
……僕には選ぶことが出来ない……。
「サクラ……、ここは、どの人に報告に行くか任せてもいい?」
「もちろんいいわよ。何も気にしないことよ! 私達は悪いことをしたわけではないし。副ギルも謝ってくれたでしょ?」
サクラがそう言って、ただ一番近くの受付の列に並ぼうと……、列が無くなった……。
「ん~目の前に誰も居なくなったけど、みんな用事が出来たのね? とは流石に言わないわよ! ねえ! 私達は楽だけど、こんな対応は嫌よ! 私達は並ぶから、みんなも避けないでよ!」
僕よりサクラの方がハートが強いようだ。
僕には言えない……。
だけど今日はこれくらいの発言でも良いのかも。
おそらく多くの冒険者に、討伐依頼か防衛依頼が出ることになるから。
その時の戦場では、目の届く距離にいたなら、助けることも出来るから。
そんな事を考えていると、クロウが受付さんにオークの情報を伝えていた。
おいクロウ! 僕達と一緒に説明するなら良いが、クロウが流暢に話して説明してるから、受付さんが目を丸くしているぞ……。
そして集落が沢山あるとまで言っちゃうのか……。信じてくれたら良いけどもどうだろう?
僕とサクラはただ、「「クロウが言っていることが全てです」」と受付さんに伝えた。
受付さんもただ、「報酬は後で……」と返事をした。