第二十三話 指輪が欲しい
昨日はフリーマーケットを見て回り、皆が満足をしてから宿に戻った。
そして夜に直接、結婚指輪をどうするかサクラに聞いてみた。
サクラはあのプロポーズだけで満足したと話し、今すぐに指輪は購入しない事になった。
だけど僕は一度気になってしまったので、機会があるごとに商店を覗くと決めた。
二人で気に入った物を発見したら、直ぐにでも購入するのだ!
そうなるとやはり指輪だけにはお金をかけたい。
結局その思いが出てしまい、依頼をこなし素材を売却してでもお金を稼がなければ!
最終的に自分達で作っても良いから、素材だけでも良いものを手に入れる。
依頼を受けるモチベーションが上がった!
朝からそんな考えを持ち、気合いが入っている。明日は騎士と顔合わせだろうから、今日は冒険者ギルドに行き詳しい話を聞く。その後で稼ぎに出よう。
そうと決まれば、素早く冒険者ギルドに移動していた。受付に今日も副ギルは居らず、またもや他の受付さんが対応した。
冒険者ギルド内の反応は昨日と同じだ。
受付さんが言うには副ギルからの伝言がある。その内容が『明日お前らに会う人物は二人。他の冒険者も個別で打ち合わせをするよう調整しているぞ。お前らは朝に冒険者ギルドに来るんだ。話し合いを終えたら早速調査に出ると言い出すかも知れないから、装備は整えておく事。泊まるとは言わないと思うが念のため準備をするんだ。調査範囲は騎士団が指示を出しているから、話した騎士に詳しく聞くのだ』
副ギルの伝言を聞き、一度受付を離れた。
僕とサクラは夜営道具が何もないから、今日は買い物もするか相談した。
オークの討伐分の報酬は副ギルに会ったときに貰っているから、ある程度の物は買えると思う。
僕の問いにサクラとクロウまで返事をした。何でも今回はそこまで自重していないのだから、魔法で小さな穴蔵でも作って休もうと提案された。
「あ~そうか、そうだね。僕はまだ前世の目立ず行動しようとする癖が残っているね。今世は何でもしようと思ってたんだった」
気持ちがなかなか切り替えることが出来ていなかったが、これからは便利な魔法ももっと使う事にした。
そこまで僕達の中で決まると、今日は割りの良い報酬を得るための依頼に出掛けた。
割りのいい依頼は、やはり今はオーク討伐だった。まだEランクの僕達には、上のランクの報酬は額が違った。
と、一日王都周辺のオークを倒していた。
オーク肉も食べることは出来るが、野生の獣も一緒に探した。今回は猪に兎が手に入り、他にも牛を見つけた。野生の牛の肉の旨さは外で食事をする時の楽しみにとっておく。
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そしてとうとう騎士と話し合いをする日となった。
話し合いは冒険者ギルドで行うと言われていたので、いつもの道を進んでいる。
途中でベテランの雰囲気がある、冒険者らしき人物と騎士が門に向かって歩いている。
もしかすると今回依頼を受けた他の人達が、既に話し合いを終えて調査に出ているかもしれない。
そんな人を見かけながら先に進み、冒険者ギルドに到着した。
冒険者ギルドに入ると会議室に行くように言われ、僕達が会議室に入ると既に金属の鎧を着た人物が二人いた。
一人は若い女の人でもう一人は老年の男性だった。
僕達は遅れてしまったかと思い謝罪した。
しかし相手は気にしていないのか座るように促され、僕達と騎士の話し合いが始まった。
「おはよう! 今日から暫くは一緒に行動するからよろしくね! あの副ギルドマスターが推薦したんだから、実力は疑っていないけど若いわね~」
若い女の人が先に話しかけてきた。
「こちらこそよろしくお願いします。僕はラウールで隣が妻のサクラ。肩に乗っているのは僕達の子、魔物のクロウです」
目の前の騎士二人は『妻』『魔物』の言葉に反応していた。
「そう、若いのに夫婦なんだね! 羨ましいけど今日はそれは関係ないものね。私はビルルよ! それで隣にいるのはフィフトよ」
「ワシはフィフトと申す。よろしくお願いするぞ」
騎士二人は、疑問に思ったこともあるのだろうが名乗った。
「ご丁寧にどうも。僕達はまだEランクの若輩者ですが、ご一緒するにあたり何か疑問などはありますか?」
騎士二人が顔を見合わせてから答える。
「特にはないわね。副ギルドマスターから色々と聞いているからね! じゃあ私達も少し自分達の事を話しておくわね!」
ビルルは二十歳で、学園を十五歳で卒業し騎士団に入った。第十三騎士団所属で、主に諜報活動をしている。今は身分を知らしめるため金属の鎧を着ているが、諜報活動時は身軽な格好をする。
フィフトは元第十三騎士団の副団長だったが、六十歳を過ぎた為後進の育成のために副団長の地位からは降りている。
騎士団も様々な経験を積み、適正のあった部隊に組み込まれる。だからこの二人も戦闘力はそれなりにあると言う。
特にビルルは今は第十三騎士団に所属しているが、将来は戦闘が多い部隊に編入する人材だとフィフトが話した。
そんな自己紹介の後は副ギルの予想通り「さあこれくらいで現場に行くわよ! 後はお互いに現場で実力を示しましょ!」と言い出し、僕達は既に王都を出ていた。