第百五十八話 年が明けてセラミアが
ラウールたちが戻ってきた。何処に行っていたのかは教えてくれなかったが、皆の顔がスッキリしていた。何故か従魔の三匹までそう見えた。
……
俺は今、ソクランスさんの依頼内容を思うと、いきなり旅立つのはどうかとも思ったが、今は何か動き出したい気分になった。
それで早速俺とダイヤはタダンタ市を出ることを提案し、ラウールたちは同意してくれた。
「では次は何処に行くと考えてるの?」と返された。
そこで俺が考えていた、「トランバー都に移動しようと思うんだけど……。トランバー侯爵が治めている領都、ここにはタダンタ市よりも人が多く集まっているから、俺の知りたい情報が集まるかもしれないし……」
「いいよ、僕たちもついて行くよ。ま~、それだけの戦闘力になったから、大物が出なければ道中も大丈夫だと思うけどね」
「――ありがとうラウール、その言葉は嬉しいよ。――で、俺とダイヤはパーティーを組んだんだ」
「へ~、セーラさんにとっては良い報告になりそうだね。で……パーティー名は決まったの?」
「ああ、パーティー名は保留にした。まだまだ人数を増やしたいから、せめて四人くらいのパーティーになってから考えるよ」
~~~~~
そんな話をしてから旅の準備をして、ラウールたちと一緒に冒険者ギルドに旅立の報告をした。
特にソクランスさんには周囲の魔物と盗賊の討伐具合を伝え、引き続きトランバー都に行くまでも同じような事をしてほしいと頼まれた。これは依頼ではないが、俺たちの都合でここで打ち切ったので、頑張ることにしよう。特に聖女に関することは、できる限りは力になろうと考えた。
……
急な旅立だったからラウールの弟子たちが悲しんだが、そこは冒険者――――また出会えることを楽しみに待っていると別れた。
そしてタダンタ市から旅立ち、徒歩で移動をした。
馬車に乗るだけの金銭は稼いでいるし、今は冒険者ランクもDまでは上がっている。だが、ラウールがたまには歩こうと言ったために、皆が歩くことになった。
……だが、ラウールが三日で飽きたと言ったので、結局はムカデ型ゴーレム馬車で移動した。
~~~~~
宿場町や村、町、村と経由して、もう少しで領都トランバーにもう一日で到着する。
そこで誰かが教われている気配がするとクロウが言い出した。
「――ここは助けるべきでしょう!」と何かダイヤが張り切っている。
「ここは定番の貴族の令嬢……それとも御頭首様……商人? ――さあ! セラミア! 急いで駆けつけましょう!」
転生者と告白したダイヤは、前世の物語の定番を教えてくれていたが、これか?
俺たちはラウールに断り、気配がすると言われた方向に走った。
……
……
「くっ! マーリン様を守るのだ!」
「どうしてこんな所にワイバーンが!」
「――五匹のワイバーン! ――巣が近くにあるなんて聞いていないぞ!」
「黙れ! 今はそんなことを言っている場合ではない! ――マーリン様の乗っている馬車を囲んで――守れ!」
俺とダイヤが駆けつけた時にはもうワイバーンに馬車が狙われていた。馬車の側には焼けた鎧を着た人と思われるものが転がっていた。
ワイバーンは火を使うのか! 初めてのワイバーン戦、勝てるのか?
「おい! 何をこの定番の場面で止まってるんだセラミア! ――行くぞ! ここで最大魔法だ!」
「お、おう……」
「我が手から――――『エターナルブリザード~~~~~!』」
おい、それはラウールから習った後にダイヤが改良した……
……
ダイヤが放った魔法でワイバーンが凍りつき、空から堕ち、割れた……
……
……
誰もが唖然としていたが、一番早く意識を戦いに戻した騎士らしき人が、俺とダイヤを警戒する。
「――助かった! ――――だが、お前たちは誰だ! ――私はこの馬車の守護者、この馬車に危害を加えるなら……死んでも抵抗しよう……」
すると俺より先にダイヤが、
「いやいや、私はDランクの冒険者ダイヤ! 襲われている気配を感じ、助太刀に参った!」
「――助太刀は感謝する……だが、我らにも事情があるから、近づかないでほしい……」
「待ちなさい! 団長……、それは助けていただいて失礼にあたります。私が……」
「いえ! お嬢様は――」
「いえ」
「いえいえ」
「いえいえいえ」
――
――
いえいえ合戦が止まらないと思っているときに、ラウールたちの馬車が到着して、更にこの場が混沌とした。
~~~~~
だが、ラウールとサクラがSランクの冒険者プレートを、団長と言われたフルプレートの鎧を着た人に渡した。
そしてそれを自分で確認し、馬車の中にも渡し、最後には丁寧にラウールに冒険者プレートを戻した。
「――これは失礼した……。Sランク冒険者のお仲間だったのか。すまぬ……」
「――まあね、ラウールたちは仲間? 師匠だからね」
「――なんと、同じ年頃ではないか……。フム、ラウール殿……もし我々があなたの冒険者プレートを奪い去ったり、悪用しようとするなら、そんなに簡単に渡しても良いのか?」
「あなたたちには悪用すら無理だよ?」とラウールが返事をしたと同時に、馬車の周囲の人の動きが止まった。
皆必死に動こうとしているが、少しも体が動いていない。
「ってね、どう?」とラウールがまた話すと、騎士がドタッと倒れた。変に体に力を入れた状態で動き出せるようになったようだ。
――
――
「すまぬ……」もう一度フルプレートの騎士が話し出した。そして兜を脱いだ。
「私はダイアナ・トラッド、この馬車に乗っている御方の守護騎士の団長だ」
――女の人だった……兜でわからなかったが、二十――五歳、二十五歳位の女の人か?
「いいえ、御貴族の方が馬車に控えているなら、当然な行動でしょう。私はセラミア、そこにいるダイヤとパーティーを組んでいる」
「ほう……その雰囲気は、どこぞの貴族の子か?」
「――ご想像にお任せ致しますが、あなたもその名乗りは、貴族の子女でしょ?」
「ふふ、まあ良い、で、あなたたちにはここを立ち去ってほしいな。ワイバーンを倒してくれたものに言う言葉ではないが……」
「ちょっと待ちなさい! ダイアナ、私はそのような無礼を許しませんよ!」
そう馬車から声が聞こえてきた。
そして馬車から一人の女の子が降りてくる。貴族らしき雰囲気を醸し出した、馬車での移動をするときには楽そうな格好をした子……、俺たちと同じくらいの年頃か?
「――ありがとう、助かったわ!」と言葉とは裏腹に、優雅な動作で頭を下げた女の子、綺麗だ……
「――いや、当然の事をしたまでだ。俺はダイヤ! 只の冒険者ダイヤだ!」
先に出たか……あの顔は、ウキウキしすぎだろう……
「……先程の声が聞こえていたかもしれませんが、私はセラミアと申します。ジルアキラン教国ではありませんが、とある国の、とある貴族の……とある子ですよ」
「ええ、その礼はそうなのでしょう。ありがとうセラミア様……」
俺たちとマーリン、ダイアナの出会いだった。




