第百四十九話 冒険者との正しい付き合い方
僕たちは迷ったが、サクラが今回の出来事について話し出した。
「――セーラさんには悪いけど、私とセラミヤで話をさせて。悪いようにはしないわよ」
「……ん~、そうですか……はい、わかりました」
許可を得たので、
「ねえセラミヤ? あなたは何で私たちを雇ったの?」
「――冒険者ギルド前で見て、直感であなたたちだ! って思ったからだよ。あのひかりの事もあるし」
ひかりは精霊か?
「そうだね、私たちを直感で凄いと思ってくれたものね。――だからこそ私たちみたいなSランク冒険者を雇えたものね。たかだか隣の都市に移動する程度で、格安で――」
サクラの言ったSランクと言う言葉にセーラは驚いた表情をした。流石にそこまでランクが高かったとは思っていなかったのだろう。
「ありがたかったよ! すぐに出発もしてくれたから、予定より早く帰って来られたよ!」
「そうね、契約書も交わさなかったし、冒険者ギルドで依頼の登録もしなかったしね。更にあなたは即金で報酬も渡してきたしね」
セーラはぎょっとして、がっかりもした表情になった。
「だってそうしないと、サクラたちを雇えなかったかもしれないじゃないか」
「まあね。だけど考えてみて。口約束って言うのは、相手が約束を破るって思って行動しなきゃ駄目なのよ」
「――何で! ――お金も払ったし、同意もしてくれたろ? だったらこれくらいはいいじゃないか」
「いえ――――」とサクラが言いながら、いくつかの問題点を上げた。
一つ――冒険者ギルドを通さなかったこと、もしくはきちんとした契約書で契約を交わさなかったこと。
一つ――僕たち黒猫の事を調べなかったこと。そもそも冒険者プレートは、専用の機械でないと本物か確認できない。更に何が得意な冒険者なのかは、冒険者プレートだけではわからない。
一つ――報酬を全て先渡し。持ち逃げ注意!
一つ――気を許しすぎて、自分の秘密も話す。
一つ――自分の身内の所まで何も疑わずに案内する。
そこから考えられる事の一つが、契約自体が口約束だから、その後にもっと報酬を寄越せとごねられかねないこと。
報酬は払っていると言っても、前金のつもりだった! や、貰っていないと言われても、他に誰も証明できる人がいない。
もちろん逆に一Eも払わずに、報酬は払ったはずだ! ともやれる場面だが、あのガイブンとのやり取りのように、不毛な争いになる。
だから何をサクラが言いたかったかと言うと、どちらも後でケチをつけられないようにすることが、どちらの為にもなると言うことだ。
「だから、セラミヤが契約をキチンと書面で交わすことが、お互いのためだったのよ――」
……
……
「全て言われてしまいましたが、そうなのよセラミヤ。――それでサクラさん、今回の報酬はいかほどになるのでしょう?」
「ん~、どうしようかな~。思ったより大変だったから、始めに貰った倍の額にしようかな。それに、この国では珍しくないようだけど、あれがわかるって何故か秘密にしているようだし……。……、うん、三倍ね!」
「――何で! 何でだよ! サクラはそんな人じゃなかったろ! ――なあ、ラウールも何か言ってくれよ! 嘘だろ……」
ん、このまま引っ張る気はないが、サクラはどっちだろう?
「うん、嘘よ! ――セラミヤは純粋ね。――だけど純粋なだけでは駄目よ。あなたは商人の子……いえ、そんな事情の子じゃあないでしょ?」
……
……
「サクラさん……それはどういった事でしょう。私たちは商人ですよ……」
「ふ~ん、ま~どちらでもいいわ。でもいくら商品の為にほかの都市に行く練習とはいえ、あれだけ護衛がいたら意味がないでしょ? ワイルドベアが出た時は、もう少しで私たちの前に出てきていたでしょ? ――ねえ、天井にいる人?」
そう、僕たちはセラミヤの周りにいる不自然な存在には気がついていた。だけど特に僕たちには害もなさそうだったし、ま~良くて冒険者ではBランク位の実力だったし。
それは別にしても、ひとり旅も変だし、護衛があれだけついているのも不自然だ。更に母? 母に会うことも目標だろうけど、だったら都市間の移動が目的とでも言っていたら良かったろう。
そこから導かれるのが……
「セラミヤはタダンタ市に移動したのではなくて、タダンタ市が出発点だったんでしょ?」
「……ん……」
「でもそこまで長く離れていた関係ではない……。だから――――って、何だかわからないんだけどね!」
――そう、僕たちはそこまではわからなかった。たぶんクロウたちはわかってるんだろうけど……
「……はは、はははは、ん、流石に何もかもわかられるものではありませんよ。ですが、少し私たちの事情に踏み込み過ぎでは?」
「まあね」
「私たちを守る人たちがいますが、それでも強気に出られるのですか?」
「まあね」
「――私たちの事情に巻き込まれますか?」
「まあね――とは言えないわね」
「では、私たちと契約を結んでくれますか?」
「――ん~、あなたたちが絶対正義でも、絶対悪でもなければね。……私たちはジルアキラン教国を今は旅しようと思っているから、その範囲ならね」
……
「――では、セラミヤと少し行動を共にしてもらえますか? これは冒険者ギルドを通せないので、冒険者ギルドへの貢献にはなりませんが……」
「――ラウールが良ければ受けるよ!」
そう、最後は僕の許可だった……




