第百四十八話 ジルアキラン教国のタダンタ市に到着
僕たちはタダンタ市に到着した。ここからはまだ人が多く、秘密の話が出来ないので、雑談をして門前での検査の順番を待つ。
この国の門では、貴族用通行門と一般用通行門の他に、教徒用通行門があった。
それをいくらかは知識があるであろうセラミヤに聞いてみた。
ジルアキラン教国では、教団に認められた教徒は、無審査で通行門を通れるようだ。もちろんこの国の貴族は、教団の中でも位が上の人がなっているから、貴族も無審査だ。ただし荷物が一定量以上ある人は、列を離れて手荷物検査はあるようだ。
だからか一般用通行門はそこまで長い列はない。
……
セラミヤとそんな話をしていると、僕たちの審査の順番が来た。
「ここは教徒以外の通行門だが、君たちの身分証明は何だ?」
「俺はこれで!」とセラミヤは商人ギルドのプレートを差し出したようだ。ちらっと見える。
「僕たちはこれを」
そう僕たちが差し出したようだSランクの冒険者プレートを見て、一瞬ビックリしたようだったが、「どうぞお通りください」とあっさり先に通された。
その通された先は、これまでの都市と然程建物は変わらないが、教会関係者? と思えるような印を、衣類や装飾品に付けていた。
特にタダンタ市の中に入ってすぐの所にある教会の前には、ジルアキラン教を布教する人たちが立っていた。
その人たちは、大きな声を出すことはないが、何か存在感があった。――微かに……精霊? ん? これが精霊の気配か? ――いっぱいあるからなんとなくそうなのかと思う。
「おそらくラウールが感じているままですよ」
ソフィアは僕の様子を見ていたようだ。
「ん~、そう言うこと? ん~? 」
その後は何も断言してくれなかったから、会話はそこまでにしておいた。
……
……
その後もゆっくりとタダンタ市内を歩いていたが、僕たちは目立ちすぎた。
十四歳、幼い子が三人と黒猫、黒い鳥、妖精。見えているだけでもこんな感じで、何故か精霊が見える人も他の地域より多い気がする。ふと視線が合うと、僕たちではなくて、僕たちの周囲を見て驚いている人がいる。
この地は、精霊と共に歩んでいるのか?
……
……
だが一先ずはセラミヤを送っていく。
セラミヤは貸家を覚えており、その方向へ進んでいった。
庶民的な町並みを見ながら先に進んでいく。その足取りは迷いがなく、何か沸き立つ喜びも表しているように、何か弾んでいる。
……
……
そしてとうとう目的地に到着したようである。セラミヤがある一軒の家の前で止まり、扉の前で何かを考えている様子がある。
――ん~、目的を達したなら早く中に入ればいい。
……
……
暫くし、意を決したようにドアをノックしたセラミヤ。
ton ton ton
『は~い!』
そう返事が聞こえた後にドアが開けられ、三十歳代程の女性の姿が見えた。
「セラミヤ! ――無事だとは思ってたけど…………お帰り! 無事にナイデラ交易国からここまで来れたね。心配してたけど、合格!」
「ありがとう! 母さんに言われた通り、自分で安全に移動出来るように、冒険者に護衛を依頼したよ! それでこの人たちに頼んだんだ! 冒険者ギルドの前で見つけてピンと来たんだよ!」とセラミヤが、僕たちを紹介するかのように手を差し出した。
「――あなたたちが、ありがとうね。でもセラミヤ、あなたはこの方たちが護衛依頼になるように手続きはしたのかしら? 何か冒険者ギルドの前で――と言ったけど、直接契約を交わしたの?」
「えっ! ラウールたちは良い人だったから、お願いしたら一緒に移動してくれたよ。もちろん報酬もランクにあった額ではなかったろうけど、僕が出せる限度額を渡したよ!」
「は~、一先ずは上がりなさい。……ラウールさんたちもどうぞお上がりください。足りなかった報酬も請求していただけたら差し上げます。――本当に申し訳ありません」
僕たちは何となく言いたいこともわかったが、セラミヤは良くわかっていないようだったので、遠慮なくセラミヤの母が借りている家に入った。
……
……
僕たちはセラミヤの母に案内されて、テーブルを囲んだ椅子に別れて座った。そこに飲み物を持ってきたセラミヤの母も、一つの椅子に座った。
「改めまして、私はセラミヤの母でセーラです。この度は護衛と、この子の不出来をお詫びいたします。……それでですが、あなた様方の冒険者ランクに応じた額の報酬をご用意いたします。それで今回の依頼は終了したと言う署名をいただきたいのですが?」
セーラはそう言うと一枚の紙をテーブルに置き、お金が入っているだろう袋も紙の隣に置いた。
ん~、セーラが危惧している事もわかるけど、このままどう話を進めたら良いか。僕たちが悪い人になるか、今回のことについて、僕たちが正しい冒険者の雇い方を教えるか。
――――それとも――




