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第百四十七話 ジルアキラン教国に移動する


僕たちに話しかけてきた子から事情を聞き、僕たちはさっさと旅に出た。


一緒に移動する子は母がいる場所はわかると言った。だからあのバントールみたいに探せと言う依頼でもない。


報酬も多くは出せなくてすいませんと話していた。更に僕たちのランクを聞いて、一度は依頼をなかった事にしようとしたが、そこは僕たちがさっさと旅立ちたかった事もあり、格安で請け負った。


でもそれでは悪いと言い出したので、今回は徒歩ではなく、乗り合い馬車で国境まで移動する事になった。


この子が言うにはジルアキラン教国の国境を過ぎて、一番始めにある都市に母がいるそうだ。


今回は母親が一人で一度は旅をしてきなさいと言い、行きも冒険者ギルドで護衛を探して守ってもらった。いくら馬車での移動でも更に安全に移動したかったと説明を受けた。

だから帰りも用件を済ませ、護衛を探すために冒険者ギルドに着いた所で僕たちに会った。


それで何故か僕たちが強いと確信し、つい依頼し、僕たちもつい受けてしまっていた。



この子はセラミヤと自己紹介した。この子も十四歳の男で、商人の子だと言ったが――そこはちょっと怪しい。


……

……



だが、道中は楽しいとまでは言わないが、悪い子ではないし話題も豊富で暇はしていない。



国境を超えるのも何も問題は起きず、僕たちはジルアキラン教国に入った。ここからは大体一日進むとタダンタ市だ。ここに母が家を借りてセラミヤを待っているそうだ。



……その行動からして商人の子の一人旅? と疑いたいが、本人がそうだと言うからには僕たちが何か言う事もない。



タダンダ市に向かい馬車は順調に進み、これでも夜営が三回目になるが、タダンダ市までもう半日の所で今日は休む事になった。

馬車の乗客にも変な人はいなかったから、僕たちは大きな不安もなく寝ることが出来る。今日もそのつもりで自分たちのテント(今回は普通の物)を建て、セラミヤとは別に休んでいた。



……


ただ雑談をして眠くなるのを待っていたがクロウが「あっ! 来たよ!」とタダンタ市方向に顔を向けた。



僕たちだけが待ち構えると、馬車の護衛をしていた同じ乗客の冒険者がよってきた。


「何があるんだ? そんな物騒な格好をして、乗客を襲う気か!」と全く見当違いな事を叫んだ。


確かに僕たちは威嚇のために武器を持っていたが、乗客がいる方向は向いていないじゃないか。



するとセラミヤもテントから出てきた。


「大丈夫だよ冒険者さん。この人たちはSランクの冒険者だから! ――あっ!ラウールさん、サクラさん、内緒って言われてないよね?」



「まあね、私たちは何もなければ、ただの乗客として旅を楽しんだんだけどね」


「だね。僕たちがわざわざ出るほどでもないならね」


「でもこれから来るのは、私でももう感じたけど一人の冒険者じゃあ大変だしね。おじさんはDランクくらいでしょ? ――だったら無理よ」



「ぐぐっ……、確かにそこまでの戦闘力はないが、これでもベテランだぜ?」と四十歳代の冒険者が言ったが、その歳でそれはね……



と、作戦を立てるとかでもなく、ただランクについて話していると、遠くから音が聞こえ始めた。


『――』


『――――』



……


……



『ワンワンワン!』



と見えてきたのが、大きな犬が先頭を走り、後ろからはワイルドベアが三匹追っている姿だった。



「おい! ワイルドベアが三匹も一緒にこの道に出ることはなかったぞ! ――何が――あの犬も!」


護衛を兼ねた乗客の冒険者は焦ってる。



「ラウール! 我が感じるのは、あの犬は犬だよ! 熊だけ殺って!」



「熊だけって、ワイルドベアだけね。――僕一人でいいか今回は……」


僕は黒い刀を持ち走り出した。


一瞬でワイルドベアに近づき刀を一閃!


それだけで決着は着いた。



……

……


「あっけなかったけど、クロウは何かを感じたの? 普段なら自分でやってるんじゃない?」



「我の行動に特に意味はないよ! ――だけどソフィアもヤマトもあれがわかるでしょ?」



「ああ」

「ええ」



「あれって? 私たちにまたわからないだけで、また何かがいるの?」



「サクラ、まだ私たちだけより見えないようだけど、また精霊がいるのよ。あの犬は精霊が乗っていたのよ。もう犬は走り去ったけど、精霊は残っているわよ」



「また精霊が……僕たちには見えないからね。でも何でこんな所に?」



「フフフフ、それはまたあとで教えますよ。ですが、また――光の精霊ですよ。それも今まで一緒にいた光の精霊と以前一緒にいた精霊ですって」



「ん~?」



僕とサクラは深く考えるのを止めた。だからワイルドベアを収納し、あの冒険者以外が気づく前に休むことにした。


もちろんあの冒険者は何か釈然としない表情をしていたが、自分が倒せない魔物だからか、あまり何も言わなかった。



そしてテントに戻ってソフィアから言われたのが、「これからも光の精霊が集まって来るようなので、見えるようになったら数を数えてみてください」だった。



集まって来る? 僕とサクラはその意味はわからなかったけど、見えないものを気にしてもいられないから、寝た。



……

……



朝になりセラミヤと合流した。そして馬車に乗る前に話し始めると、セラミヤが言った。



「ラウールさんたちの周りの光が増えてるね。この前は一つだったから、たまにそういう人もいるから言わなかったけど……と言うか母には止められてたから言わなかったけど……。ラウールさんたちなら誰にも言わないよね? ――――それって精霊でしょ?」



何――僕たちにも見えないものが、セラミヤには見えるのか! ――僕たちにもは余計だろうけど、セラミヤは精霊が見える人か。


でも、精霊が見える人は、精霊から力も借りられるんじゃなかったっけ? ――で、だとしたらセラミヤは凄いスキルの持ち主? ――って、何故そんな人を一人旅させるのだ?



ちょっと疑問点が多くなってきたが、馬車の出発時間だから他の人も周りにいる。


流石にもうタダンタ市に着くまでは聞ける状況ではなかった。




……聞きたいけど、タダンタ市に着いてから聞けるタイミングはあるのだろうか?


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