第百四十三話 戦闘以外のギルド関係者
「すまないなあんなことを言って」
そう言って会話が始まった。僕たちはオークション会場の一室に集まっていた。参加者は僕たちとあの商人風の男、オークション会場の支配人だ。
「私はウーケン・ガドロス。当オークションの支配人をしております。皆さま方にはとんだご迷惑を……」と五十代の男が頭を下げる。
「私は――いや、ここは素だろうな。俺はサントール・ボロット。まーサントールと呼んでくれ。これでも商人ギルドじゃあ偉いんだぜ」と四十代の商人というが引き締まった体の男がそう自己紹介した。
「はじめまして。僕たちはSランク冒険者で、パーティー名は黒猫です。僕がラウールで隣が妻のサクラ。僕の肩にいる鳥がクロウで猫がヤマト。サクラの頭にいるのが妖精のソフィアです」
「ほーう、そうかとは思っていたが、やはり黒猫だったか。そのパーティーの構成、見た目、何か理不尽な力を感じるその圧力……ふん、あの伯爵は相手が悪かったな」
「あれを知ってるんですかサントールさん?」
「サントールで良い、言葉も普段通りで良い。君たちは俺と対等に話せるだけの胆力はあるだろ? だったら違う道を進んでいても対等だ!」とサントールさん――サントールはそういう一種の圧力を感じるほどの存在感があった。
「――わかったよ。たまに言葉が丁寧になったり砕けたりするのは癖だから気にしないでくれるならね」
「ああ、素で良いぞ」
「で、僕たちに何か用件でも? あのままウーケンさんと交渉を成立させても良かったんだけど」
「ああ悪かったな。だがあのまま行方を眩ませられそうだったからな」
確かにすぐ移動したろうね。
「――だから単刀直入に言うが、サポイタンヒュージュン病擬きをどうにかしたい。――協力してくれ!」
――何故? 僕たちはただ妖精を手にいれようとしていただけなんだけど……何がどうして魔力放出病に行き着くんだ? 病の表現は違うけど……
「なぜ僕た「勘だ!」……」
被せられたよ……勘って……商人の勘?
商人は数字で動いてよ!
「俺はな、ウーケンがいるところでいう話でもないが、勘を大切にしてきたんだ! だからこそ俺は今の出会いを――勘を信じるぞ!」
「ガドロス様! 流石です!」とウーケン……
「――サポイタンヒュージュン病の治療は出来るでしょ?」
「ああ、サポイタンヒュージュン病はな……。だが俺は似た病気が似た治療でただ治まっているだけだと思う。治療院や他のギルドも証明できるものがないからこのままだが……」
ん~、クロウたちが治して歩いて、治療薬も作れそうだとこの前教えてくれたけど、これを普及させたら楽なんだろうけど、何故この病気が流行ったかは解明出来ていないんだよね。
もし人工的に広められたものだったら、また厄介な病気が流行っても困るし……
「頼む! ――断りもせず何も言わず、考え事をしてる君たちは、何かがわかるんだろ?」
――おう、このタイムラグまで……
「ん――――」
……
と、結局サントールに協力することにした。魔力放出病は妖精を材料にしなくても薬を作ることが出来る。
勿論サポイタンヒュージュン病もだが……
僕たちは思いきって魔力放出病の事も話した。
これは誰も識別出来ないだろうけど、クロウはどっちにも効く薬も「我作れるよ!」と言ったからだ。
……
……
そこからの動きは早かった。
勿論妖精は僕たちのものになり、妖精さんと精霊さんは常に一緒にいる。
これは二人ともやはり面識があり、妖精さんも光属性に適正があり、同じ集落で過ごしていたそうだ。
病の治療薬はクロウが指導した。
サントールが集めてきた職人もはじめはクロウが話して、自分たちも知らない事を説明して戸惑っていた。
だが治験者が良くなる姿を見て真剣になった。
……
……
そんな時にも僕たちは時間が空いてしまったので、随分遅いが地球の娯楽……リバーシ、将棋、チェスの特許を商人ギルドに申請した。――特許があったのだ――。
更に乞われて幾つか地球的な何かの知識も披露した。
……
……
そんな感じで数週間ナイデラ交易国の商人ギルドに通っていたが、職人もある程度の薬を作れるようになった。
これで僕たちは何となく心置きなく次の国に行けると思った。ちなみにパナックさんは律儀で、お金に変えられるものでないと思ったのか、魚介物を――特に珍しい物を頻繁に持ってきてくれた。
後はアルグリアン王国のあの伯爵だが、ラーバンストからの話では、次の世代に領地は引き継がれたそうだ。
元々は悪政だった人でもなく、サポイタンヒュージュン病をどうにかしたい一心だったようだ。――やり方が悪い!
だから僕たちに絡んできたことも不問にした。――これ以上あの伯爵が何もしなければだが……
さて、タラトン王国は船でも行けるし、ジルアキラン教国を経由しても行ける。
ジルアキラン教国は陸続きだから歩いても馬車でも行ける。
今のこの感じだと、何処に行くのが一番面白いんだろう?
僕たちは相談した。




