第百四十二話 敵対する人間
僕たちが競り落としたと証明されないまま、会場に皆がいるままの状態での落札宣言がないまま時間が過ぎていった。
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「――そろそろ終われ……これで終了なんだろ!」と恰幅の良い男が言い放った。
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「はい! ――それではこれでオークションは閉幕です! ――おい、幕、幕! 早く幕を閉じろ!」
何か司会の人が焦りながら誰かに怒鳴る。
「――ちょっとあなた! 私たちの番号を言わないと、オークションの規定だと私たちが競り落とした事にならないわよ! ――なに適当に終わろうとしてるのよ! ――それとも私たちが競り落としたことを後で無くそうとでもしてるの?」とサクラがニヤッと叫び出した。
「――いえ……、そんなことは……」
司会の人がそう言いよどんでいると、どこからか――ヒラヒラの服を着た恰幅の良い男がまた叫んだ。
「――はくしゃ……」
「良いか! 司会の者!」
「は、はいーーー」
「っていいわけないじゃない! ――なに私たち落札者を無視してるのよ! ――主催者は何してるの! 私たちみたいな正当な落札者の話は無視!? なに、オークションではなく談合なの?」
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「……沈黙は肯定ととっていいのね……。はーーー、馬鹿みたいよね、こんな茶番劇に付き合わされるなんて……。でも妖精は私たちの物よねラウール」
「――そうだね、僕たちが落とす金額は払えるって証明したし、これで後でうやむやにされるのは、この大勢の人に何て言うのかな?」
「ラウール! 我はもう契約を変えた! もう妖精は我たちが買い取った! ついでに――――(ジャラララララ――)はい、これが支払い!」
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「……ああ、これでもいいのかな? ――僕たちは支払いする場所じゃあなかったと思うけど、クロウのポケットマネー(亜空間収納マネー――いくらあるんだ……)で支払いはすんだよね?」
……
……
司会以外の人たちがステージの外から出てきて、お金を集め始めた。
「――少々お待ちください――」とその人たちがお金を集めながら言ったので、僕はつい……
「あっ! 足りなかったら言ってね。それは僕の従魔の個人資産だから……。足りなければ、僕の冒険者プレートからは落札額は引き出せるし、僕の妻の冒険者プレートも同じくらいは引き出せるからね」
「――は、い――」
……
……
「なんだお前らは! 私の――アルグリアン王国伯爵の私の言うことが聞けないのか! ――私は遊びでオークションに参加したわけではないぞ! ――私はアルグリアン王国のためにーーー!」
「――何をするんです?」とオークションにかけられた妖精と同じ姿のソフィアも参戦した。
妖精は結局ソフィアと同じような感じだった。
「あ~! ――お前はすでに妖精を持ってるじゃないか! だったらいらないだろ! ――黙って俺に寄越せ! ――俺が次点の落札者だぞ!」
次点の……本当の落札者の次の落札額を宣言した人……
一番がいなければ落札できる人……
もしそれをコントロールするなら、もしかすると確実に一番で落札する。駄目でも一番を不正として二番で安く手にいれる。
そのために裏工作……ん、予想通りだろう。
「――ふっ……僕はただの落札者さ!」僕は髪をフサ~~と手で上にふわ~とやって言ってみた。
「くっ、何だその態度は……私の領土と戦争するか、一般人のお前は!」
「あ~、私たちは一応Sランク冒険者よ! ――一応ね――で、この子たちは、私とラウールと同じ強さよ!」
あ~、名前を出しちゃったか、僕の――
「――僕はラウール、Sランク冒険者だよ」
「――俺はラーバンスト……わかるな!」
と、急に立ち上がったラーバンスト、アルグリアン王国の王子が話に入ってきた。
……
「――はい……。」
「それでお前は何をやっているんだ!? 」
「……いえ……」
「ここでは言えないのか!」
「……はい、申し訳ございません……」
「――であるなら、ちょっと来い!」
そう言ってラーバンストがおそらくアルグリアン王国の伯爵にあたる人を連れていった。勿論お互いに護衛はいるから、ある程度の人の動きを皆が見ていた。
……
……
「――で、私たちに何か言うことはないの? あなたたちオークションの関係者全員に不信感があるんだけど? ――それに正式ではないとしてもお金も払ったんだけど!? ――何か言うことはないの?」
「…………申し訳ございませんでした……」と司会の人が頭を下げる。
「二度とこのようなことが起きないように致します……」とあとから来た、支配人なのかな? その人が頭を下げている。
……
こういうときに限って何か嫌な目に遭う。不運の連続だ。
「おい! オークションのやり直しだろ! こんなことがあったんだから、日を改めるのべきだろ! 妖精の出品はこのけちがついた回ではなくて、数回は出品を見送るべきだろ!」
は~、面倒なのがまた……。格好は商人か?
「取引は不成立だろこれは……。あいつもこいつもまだ妖精を手に入れる権利がないだろう? だったらお前らもまた利益が出るように、日は改めろよ。それにお前、金はここで払うものではないぞ? ――いくらそんなことをしても、オークションのルールでいったら、お前たちが所有権を主張も出来ないからな」
まあね、正式ではないけどね。でも最後まで金額を言ったのはぼくだから、後は番号さえ呼ばれ、決められた手順で手続きをしたら終了だったんだけどね。
「――はん、その顔は納得はしてないんだろうな。だったら一度私と一緒に来い! ――悪いようにはしない!」
どんな方向に話がいくのかわからないし、この人と話しただけで何が解決するかわからないけど、何か僕の中で話した方が良いという思いになった。
更にオークションの主催者もそれをこの会場で望んだため、僕たちは名も知らぬ人たちと話し合いをすることになった。




