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第百二十六話 対竜の時にヤマトは

僕たちは自分たちで補修した王都の外壁の外で竜を待ち構えていた。

一般強度にした外壁は、竜の攻撃では破壊されるかもしれないと考え、皆で少しずつ強度を増すように魔法を使っていた。



……

……

……



どんどん猛スピードで近づいてくる竜……



あっさりと僕たちの目の前に移動してきた竜……



その姿はこの辺一帯の魔素が一気に集まったのか、戦闘力は龍に迫るほどあるように感じた。



禍々しく……なく、僕が知っている地球で、昔から描かれているティラノサウルスのような姿……いや、某RPGの◯王のようだと言ったら良いのか……



二足歩行の竜が僕たちの目の前で止まり、前触れもなく氷のブレスを吐き出した!



ひゅおーーーう!


と僕では上手く発生できないような音で、冷たい……いや凍えるほどの息と、氷の塊が僕たちに向かってくる。



するといち早くヤマトが僕たちの前に立ち、猫の口からブレスを吐いていた。


「はーーーー! 俺に任せな! クロウはそこで大人しく見ていろよ! 早い者勝ちだ!」とヤマトの顔は見えないが、おそらく想像通りの顔をしているだろう。



「あーー! 出遅れた! ズルい、ズルいよ! 我は一回も早い者勝ちって聞いてないよ」



「フフフフフフ~。言ってないからな! ――――はっ!」



「あっ、ヤマトはやる気ね。龍の姿になった」

「あ~そうだね。――おっ! 珍しく巻き付いたよ!」

「へ~。ヤマトはあそこからあんなに尾で上手く攻撃が出来るようになったんですね」

「ラウール! ヤマトはズルいよ! あっ! 手加減して楽しんでるよ! サクラ! 周りに被害が出ないように皆で殺ろう!」

「――駄目よクロウ――――えっ! あそこからあの竜も短い手で攻撃を始めたわね。諦めようよクロウ……」

「あ~、あの程度の爪の攻撃じゃあヤマトの鱗に傷もつかないだろうね。――クロウ! 駄目だよクロウの爪で攻撃しようとしても」

「そうですよ。クロウ、あなたの爪はヤマトに向いてるのではないですか?」

「――我はそんなこと――ゴメン!」


ヤマトが飛び出しそうだったが、ソフィアがやんわりと止める。

そしてヤマトは遊びながらも確実に魔法ではなく、肉体で竜にダメージを与えている。



「おっ! 竜の腕が両方とも切り落とされたよ!」

「そうね……あ~、後は一方的ね」

「そうですね。……部位ごとに切り分けられて、後は生命力が尽きるまで少し待つだけですね」

「ヤマト! ――悔しいけどおめでとう! 次は譲ってね!」



「早い者勝ちだぞクロウ!」

「もう、そこは我に譲るでしょ!」


こんな会話をしている間に戦いは終わった。

竜の解体の手間が省けたので、僕たちは肉が新鮮なまま、亜空間に収納せずに冒険者ギルドに運んだ。



……

……



まー、王都の中、冒険者ギルドの中では大騒ぎだった。

ゴブリン討伐が終わったばかりなのに、何故か竜が出現し討伐された。この短時間であった出来事は、見ていた人によって拡げられ、ここから何故か本当の復興が始まった。

ヤマトの龍の姿も見られたが、これは噂になりそうだが放置した。かえって噂に誇張がされたと思われそうだから内緒にはしない。



ゴブリンのボスが倒されるよりも、竜がボスに相応しいと考える人が多かったようだが、復興に対しての士気が上がるのであれば、この竜の存在も良いものになるが……



……



竜の素材を冒険者ギルドに売り、僕たちは王都の外壁をもう一度補修した。

少し戦いの振動で弱くなっていた壁の一部を念入りに……



……



それでも僕たちに対する……ソフィアが言った報酬の準備がまだ終わっていないと言うので、王家から証明書をもらって各地を廻った。


ここの弟子たちにも必ず一度は帰って来るからと説得した。



大きく丈夫な外壁を持つ都市や、小規模ながら守りやすく出来ている外壁など、様々な形の壁を修復して歩いた。



移動も急がなかったので、出現する魔物を確認しながら、食べられる魔物は倒して冒険者ギルドに納めた。

他にも薬の素材になるものなど、目についた物は回収しながら移動した。


で、ゆっくりだが隣国との国境線付近の都市や町に移動している時には、獣も見つけることが出来た。

まだ倒さず成長を見守り、早く繁殖することを願う。



……

……



時間をかけながらバイアント王国の外周付近も探索し、王都へ戻り始めた。


帰り足では奥の方でも獣が見つかるようになり、順調に生き物がバイアント王国で増え始めたようだ。


食料になる魔物も増え、残りは穀物や野菜が育つようになる土壌の整備だろう。

僕たちは生き物を見るまですっかり忘れていて、帰り足に数ヵ所の町の田畑の整備より出来なかった。



……



それでも僕たちの姿が噂で流れ始めたのか、僕たちを見る目が変わってきていた。


前は容姿で皆を引き付けていたが、道ですれ違う幾人かは尊敬の眼差しを向け、幾人かは拝んでいる人までいた。


それは王都に入るまで続き、通行門の前に並んでいたが、騎士が迎えに来て、貴族用の門から王都に入ることが出来た。


王都に入ってからも騎士は王城に案内しようとしたが、僕たちは冒険者なので、冒険者ギルドに先に顔を出した。


するとエントルギルマスが涙ながらに走って近寄ってきて「国のためにありがとう!」と僕の手を掴み上下にブンブンとし、サクラにも同じ事をしようとして避けられていた。



そんなエントルギルマスからも勧められ、僕たちは王城に――――王城の中に――――謁見の間に入り、ズインブン王子の前に立っていた。


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