第百二十五話 王都バイアントから補修を始める
僕たちが依頼を受けると返事をすると、僕たち以外の人が喜んでいた。これは冒険者ギルド同士でも僕たちの情報を交換していたな。
そして依頼の報酬についての話し合いになったとき、ソフィアが金銭以外にも欲しいものがあると告げた。
ソフィアが言うには、自分たちだけで依頼をこなすので、場所だけ記した地図や計画書を寄越すこと。
依頼達成かどうかは報告後に確認に来てほしい。それで満足であれば依頼は達成。
これだけバイアント王国が利益となる働きをするのだから、西大陸に渡りやすくなる何かが欲しいと告げた。
……
ズインブン王子は考えたあとに、バイアント王国は西大陸には面していないため、「役にはたてないと思う」と言った。
そこにソフィアが再度口を挟み、冒険者ギルドや他の国を頼ってでも何かが欲しいと言った。
ズインブン王子は確実に約束は出来ないから……と弱気だったが、エントルギルマスが「協力するから!」 とまるで孫を擁護するかのように立ち回り始めたため、僕たちの報酬は金銭と西大陸に行きやすくなる、西大陸で過ごしやすくなるアイテムとなった。
……
……
話し合いから数日後、僕たちは何故か王城の隣にある王宮で依頼開始を待っていた。
暇だと言えば王都の外には出られたが、王女や王子、さらにはその友達の貴族と戦闘訓練をする時間が多かった。
自分の国の王様がしたことで隣国にも借りができ、国力が弱った貴族の子たちは素直だった。
自分たちが何もしないまま迎えた将来をきちんと考えられる、残された貴族は質が良かったようだ。
……
……
それで依頼もようやく開始されたが、一番はじめは王城の城壁から開始し、その後は王都の外壁を補修することになった。
この補修は特に難しいこともなく、ただ魔法で修理、強化するだけだから、本当は一日で終わるが二週間はかけることにした。 ――十分早いのだろうけど……
城壁を補修し、王宮に戻れば訓練に付き合う。
同じ事を繰り返す日々だった。
……
だが王都で依頼のあった所を修理し終わると、僕たちが教えていた人たちが焦り出した。
「師匠……これからもご教授を……」
「待ってください! 俺はまだ強くなってない! ――俺を強くしてくれよ!」
「サクラ師匠! 私にあの凍らせる魔法を!」
「――俺もついていく!」
「あーーー! 俺だって!」
何だか収集がつかない。
ただ教えていただけだけど、お貴族様に言うのもなんだけど……
こいつらも強くなったしな!
何かオーション市の弟子と言われた人たちを思い出す。
今だと何か感じるところがあるのか、子供扱いされなくなったしな。
諦めが良かったのかな?
「君たちを連れていくわけにはいかん! 僕たちは王家の依頼で町に向かうんだ! だから……君たちは鍛練を怠るな……」
ってはーーーーー、恥ずかしい!
「ーーーーーはい! 師の名に懸けて!」
ってこれで良いのか?
何故か王子や王女が訓練に参加した。さらに逃げなかった公爵家、侯爵家、法衣貴族の子…………子だけではなく当主まで参加していた……
何か急に立場が上がったような気がするが、僕たちはまだAランク冒険者……Sランクまでは頑張らなければ……
……
だが結局は貴族の勢いと、絶妙な旅立ちの妨害、王子や王女の懇願で、王都の外壁の補修が終わってもまだ僕たちは王都にいた。
……
王都にいるならまだ生態系が戻っていない環境……外で依頼を受けるよりは王城の訓練場で貴族を鍛えていた……
……
絶妙に引き伸ばされた期間で、一ヶ月半が経過していた。
王都の外は大分魔物の種類がもとに戻ってきたと言われ始めた頃、僕たちは気づいていたが、遠くから強い魔物の気配を感じている。
……
「ラウール? あれは竜? 我が行ったら一番早いと思うけど、倒してもいいよ!」
「クロウ! 竜といったら俺だろ! 元々は龍だった俺が行ったらいいだろ!」
「ハイハイハイハイーーー、ストップ! ――――クロウもヤマトも一旦待って!」
「「わかった(おう)!」」
サクラの一言で自分の獲物だって主張する争いは終わった。
「で、この竜はこの国で湧いたのかな? だったらもう一歩、こいつを僕たちが倒したら大分魔素の分布が元に戻るんじゃない?」
「私が感じるところではそう思いますが、クロウはどう思いますか?」
「我が感じることも一緒だよ! あれが最後のダメ押しだよ! ――別れずに密集してしまった魔素をバラバラにするチャンスだよ!」
「……私が考えるだけかもしれないけど、もうすぐ王都に到着する?」
「おいサクラ! 気を抜きすぎか! ――俺は移動し始めたら、気付いたぞ!」
「我は産まれたとき!」
「私もクロウと同じですね」
「僕はサクラと一緒!」
「「「おい!」」」
「は~」
「ゴメン、僕も油断してたよ! ――だけど気配は捕まえたから――――もう十分くらい?」
「ラウール! 我は竜なら五分だと思う! んーーー、戦闘体勢!」
――――僕は油断していたが、今は……今日も王城にいたので、正直に皆にも説明し、僕たちだけで王都の外で待ち構えた。




