第百二十三話 バイアント王国復興へ向けて
僕たちはギルドマスターの部屋にいた。今日はエントルギルマスだけが僕たちの正面に座っていた。
「他の国への連絡は終わった。プッチモ王子やラーバンスト王子にも話は伝わったと返事を受けた。……それで……ゴブリンは?」
「あー、無事に連絡がつきましたか。何か言ってましたか?」
「……やりたいようにやったらいいじゃないか! ……そんな返事だったようだ。……それでゴブリンは?」
「やりたいようにって……ま~、やりたいようにやってるけど……こんなときまでそんな話って……あっ、プッチモ王子は屋敷の事を何か言ってました?」
「屋敷? ……いや、そんな話題はなかったようですが、魔人の情報は交換しましたよ。何かあちらでも時々魔人が現れては討伐しているようですよ。……組織だった動きはこの国だけみたいなので……。それでゴブリンは?」
「あ~、他の国にも魔人が出現している……。だけど組織だった動きはない……。――あーー、東大陸で四天王が二人……もしかして、西大陸にも四天王が……。何か四天王について言ってなかったのですか? もしくは冒険者情報網で! ――あ~、こんな時にはデーブンがいたら……」
「デーブン? ……なんの事を言っているかわからないが、四天王の情報はない。魔人も強い冒険者や騎士で何とかなっているみたいだぞ! で! ゴブリンはどうなった!」
「あ~、やっぱり情報収集専門の……荷物も運んでいたな……だけど情報収集のためでもあったし……ん~、何か代わる組織はないのかな? ね~エントルギルマス?」
「ギルマスって……。情報? それは冒険者ギルドで得られるだけでは駄目なのか? ――専門の機関? ……王国にあるような諜報機関か? ……確かにそれがあるなら……。――――だがゴブリンはどうなったんだ!」
「――情報は大切だよ! それがたくさんあるだけで、行動の選択肢が増える……いや、不測の事態が減る……生存率が上がるんだよ! ――ゴブリンなんて気にしている場合じゃないよ!」
……
「――――今バイアント王国はゴブリンがどうなったか気になるんだよ!!」
――あ~、何かゴメン……
「……ゴブリンは大分倒してきたよ。――ざっと……いくらだろう? 上位種はたぶん漏れてないと思うけど……あっ! オークが出たよ! バイアント王国の範囲に!」
「何! ――それではこの国の魔物が正常な分布に戻っているのか!」
「まだ絶対とは言えないけどね。でも僕たち以外の人も頑張ったんでしょ?」
「――ああ、ああ頑張ったさ! ――普段組まない冒険者パーティーを、効率よく動けると思うパーティー同士組ませて……文句が出てもソロの冒険者をパーティーとして動かして…………冒険者ギルドとしてはギリギリの範囲の調整をしたんだぞ! ――下手にこれで被害が出てたら、俺だけならいいが、冒険者ギルド自体が悪いとなるからな!」
俺? ――私じゃなかったっけ? ってこれが普段の口調?
「ごくろうさん!」
……
……
「あーもう!」とエントルギルマスは伏せて小刻みに震えていた。
ん~、言葉かけが失敗したか……でも嬉しさもあるよね。何せここ最近の悩みはなくなったんだし。
でも僕たちの悩みは尽きないんだよ。
タランはゴブリンをようやく集めたって言って戦闘に投入していた。
でもルビックはゴブリンの魔人……おそらくゴブリン族で一番強い。
四天王は悪い関係にはないと考えられて、まだタランとルビックはそこまで協力もしていない。
これはタランがルビックに強いゴブリンを助っ人にほしいと言えば、強いゴブリンに強くするアイテムが揃う……何この強力な相手は――
僕たち以外の人が魔人だらけになった世の中は楽しいのか?
僕とサクラが夫婦として楽しめる世界なのか!
僕は切に願う……楽しい夫婦生活を……
……
……
ようやくエントルギルマスが復帰した。
「次の依頼をしてもいいか?」
「依頼? まだ何か僕たちの出番はあるの? 戦う以外は苦手……でもないか。」
「は――、戦う以外か……あ~、うん、戦い以外だ。これから普通の冒険者には探索依頼をして、国内の土地がどうなっているか確認してもらう。……だからお前たちには復興の手伝いをしてもらいたい!」
……復興の手伝い? 何でそんな低ランクが受けるような作業系の依頼?
「お前らはそれくらい出来るだろ? 今は素早い復興を求められているんだ! だったら頼むよりないだろ! ――――俺はバイアント王国の……王都バイアントの冒険者ギルドギルドマスターのエントルなのだからな!」
……ん? それが僕たちに何の関係が?
「――私たちは自由な冒険者よ!」とサクラに出番をとられた。
「だからこそのお願いだ……。指名依頼でも依頼でも、断られたら何にもならないだろ! だから頼む! 色んな思いがあるだろうが、ここは俺が大切に思ってる国なんだ! 頼む……今苦労をしているズインブン王子のためにも……」とエントルギルマスが土下座をした。
……
……
空気が重い……何かプレッシャーを感じる……エントルギルマスはこの土下座にどこまでの気持ちをのせているのか……
……
……
何も言葉を発せず頭を下げ続けるエントルギルマス……この中年紳士な男にいつまでも頭を下げられていると、僕たちが悪い感じがしてきた。
ん~、いたたまれない……
「ラウール! やってやろうぜ! ――こいつの男気は、あのファンフートみたいだぜ。やり方は違ってもな!」とヤマトが言い出した。
「我もたまには違う依頼も楽しいよ! 」
「私も良いですよ。何か魔の森を開拓していた時のようじゃないでしょうか。創るのも作るのも面白いでしょうね」
「ん~、皆がそう言うなら私もいいけど、ラウールが嫌って言うことはやらないわよ!」
サクラまでもがそんなことを言ったら、僕は反対できないじゃないか……
……
……
結局僕たちは詳しい内容を聞かないままエントルの顔をたてて依頼を受けることにした。
もしもこれが僕たちにとって悪い結果になるなら自分の責任と思って……ってエントルにも何かが起きるけどね!
そんな事を考えながらエントルに話の続きをしてもらった。




