第十話 またもやギルマスの部屋にご招待
僕達は町に戻り冒険者ギルドに出向いていた。
報酬を受け取り、今日こそ装備を手に入れたい、そんな気持ちでいた。
冒険者ギルドに入りあのDランク冒険者推しの受付の列に並ぶ。
列はそこまで長くなかったので、すぐに僕達の順番が来た。
「こんにちは。とりあえず依頼の採取物を出すね」
そう言って僕が薬草を取り出そうと鞄に手を入れた時に、受付さんがやめさせようと手を伸ばした。
「ここじゃあ採取物や魔物の素材を受け取っていないんだよ。あっちの専門の受付に声をかけるんだ」
へ~、そんな仕組みになっていたんだ。
初めに聞いとけばよかった。
そう思いながらも別の受付に声をかけた。
何人かいる受付で、何もしていない人がいたからちょうど良い。
「こちらで依頼達成の物を受け取っているんですか?」
僕がその男に声をかけると、何しに来たと言う顔で目つきが悪い中年が反応した。
「お前らが何か採取できるものがあるのか? 見たところじゃあまだ冒険者なり立てだろ? そんな身なりで何が出来た?」
あれ、この受付さんは昨日いなかったんだろうか?
「初めましてですか、僕達は昨日冒険者登録をしたばかりなので、よろしくお願いしますね」
「おう、これはご丁寧に…………じゃなくてだな、まあいい、何を持って来たんだ?」
そう言われた僕達はまずは薬草を取り出しカウンターに乗せた。
「おう、こりゃあいい状態だな。数も十分ある。依頼票をかしな」
そう言って手続きをしようとしたが、僕達の本命は他にある。
常設依頼だが、ゴブリンの右耳を一つずつカウンターの上の皿にのせ始めた。
「おう、お前らその身なりで強いんだな。だが、他の奴が狩ったゴブリンの耳をそいできたんじゃあないだろうな?」
受付さんはそんなことを言ったが、僕達はお構いなくゴブリンの右耳を置いていく。
十個まで出したときには受付さんは黙り込む。
二十個出すと目が僕とゴブリンの右耳とを行ったり来たりする。
三十個まで来ると僕のバックを見始めた。
マジックバックがこの世界にも存在しているとはいえ、薬草とゴブリンの耳がこの量は入っているようには見えない形だ。
そしてまだ続けようとしたが、慌てた受付さんが僕達を遮った。
「お、おい、お前らは……まだ入っているのか?」
「はい、まだまだありますよ。」
そんな返事をすると会話が聞こえたのか他の冒険者や冒険者ギルド職員も何かを話し始めた。
「いくら弱いとはいえ、あいつらは……」
「あいつら昨日の奴だろ……それでは……」
「ギルマスに報告を……」
何でこれくらいでギルマスに話が行くんだ?
「あいつらあの時間から出かけてあの数…………集落か?」
「スタンビートでもあるのか?」
「誰か強い奴がついてるんじゃないか!」
「冒険者になる前からためてたのか?」
何か色々と言われている。
だけど、もしかしてゴブリンが異常繁殖していると思われた?
「お前ら、ちょっとだけ待ってろよ! ここで全部出すなよ。俺も一度ギルマスと話してくるからよ!」
そう言うと受付さんは上の階に走っていった。
は~、待っているのがめんどくさい。
自重はあまりしないと決めたが、めんどくさいのは嫌いだ。
少しばかり周りから何か小声でうわさ話が聞こえてきたが、その話を聞きながら待っていると受付さんから上の階に案内された。
そこはやはりギルマスの部屋……
僕達は受付さんと一緒に部屋に入ると、ギルマスが座っているところへテーブルを挟み目の前に座らせられた。
「お前達は何をしてるんだ……。強いのはわかるが、状況を説明してほしいな」
「それは簡単ですよ。僕とサクラがクロウに言われた場所に行き、ゴブリンが二百匹位いたので、全滅させただけですよ」
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・・・・・
「に、にひゃく、二百匹だと! それはもう集落じゃないか! そんな近くに集落があったなんて、本当か?」
「本当かと言われたら、そのゴブリン達は一か所で生活しているようだったよ。それに、上位種というのかな、強いゴブリンもいたよ。とりあえず全部の耳を出す?」
「お、おう、持ってきているのか?」
「あるけど、どこに出したらいいの?」
そう聞くとギルマスは受付さんに敷物を持ってこさせた。
その上においてくれと言われ、マジックバックから全ての右耳をそこに出した。
「おい、これは上位種だな……。これは、メイジか……。あっ、ここまでの集団ならもっと上の奴がいたろ?」
「もっと上位種と言ったら、オーガみたいなゴブリン?」
・・・・
・・・・
「いたのか? オーガ……。あいつがいたのならやばかったな……」
「とりあえず証明するために何か出す?」
「おお、あいつなら、首から上をそのまま出せるか?」
首から上……自動解体でもう形がないや……。
「ちょっと理由があって素材に解体したから、角でもいい?」
「十分だ、どこに置いてあるんだ?」
「このかばんに入っているけど、一応内緒ね」
そう言って僕はゴブリンオーガ? の角をギルマスに見せた。
「おおお! これは本物だな! おい、他で狩ってきたやつじゃあないだろうな!」
「違うよ。これは森の奥になるけど、人がいるところじゃあこの町が一番近いだろう所にいたやつだよ」
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「助かったぜ……。ゴブリンオーガはゴブリンの上位種で、こいつが産ませた魔物は、上位種に成長するんだ。厄介なことにゴブリンとオーガの性質をもっていてな、強い上に繁殖力も強い……。更にこいつが進化すると、オーガ種かゴブリンの更に上位種になるんだ」
へ~、両方の性質を持つんだ。
それにゴブリンオーガはそのままの種類なんだ。
進化も知られているみたいだし、ちょっとおもしろい世界だな。
「よし! 常設依頼だが報酬はゴブリンの分も上乗せしてやろう。上位種は何か依頼が出ていなかったか確認する。素材も上位種なら買い取れるがどうする? 魔石も買い取れるぞ」
ふ~ん、ゴブリンの右耳の討伐証明で銅貨五枚だけでなかったんだ。
魔石も買い取ってくれるなら、倒した分の価値もゴブリンにはあるのかな。
「わかった。ゴブリンオーガ以外の素材と魔石を納めるよ。それと、集落に合った価値のありそうな物はどうしたらいい?」
「あ~、それもあるんだな……。その鞄に全て入っているのか?」
「入ってるよ。出そうか?」
「頼む……。だが、お前らはその鞄の事も誰にも言わないほうが良いぞ……。見た目で狙われ持ち物で狙われ、そんな未来が見えるようだ……」
そんな言葉をギルマスから言われたが、僕は集めてもらった物を全てギルマスの部屋に置いた。