第百四話 ドラゴン戦……討伐は
僕達は一晩休みドラゴンと戦う。
ドラゴンも同じところに留まっていて、準備は十分だ。
「じゃあ殺ろうね! 私は久しぶりの大鎌よ! んーー過剰?」
「サクラ……過剰って言うかオーバーキル……」
「サクラが大鎌を持つと、我の出番がない!」
「俺もだぜ!」
「私はどちらでも良いのですが、過剰だと思います……」
「んーーもう! 私だってたまには本気をーー「駄目!」だし……」
「サクラ……僕達が本気を出すのは憎い相手を相手にするときだけだよ……あんなドラゴン程度じゃあ、環境破壊の方が大きいよ!」
「はい」
「「「素直……」」」
僕達以外の人はこんな僕達の話についてこれていないが、ドラゴン討伐が始まった。……今回のドラゴンはウィンドドラゴンだが、まだ飛んでもいない……。あのドラゴンにしては細身の姿だが、飛行で翻弄するドラゴンのはずだが?
昔僕が頑張っていたRPG……ドラゴンに乗り冒険するゲームのスピードタイプみたいな体……今にも走り出してから飛ぶステルスのような体……その体長は十メートルはある。おそらく飛行も出来るだろう。
「えーと、黒猫だけでやる気か? 俺も戦いたかった……『ガキッ!』」と突進してきたドラゴンの爪の攻撃を防ぐラーバンスト……
「くっ! 頼むぞヒューズ!」
ラーバンストがヒューズに声をかけると、詠唱を終えた魔法がウィンドドラゴンに飛んでいく……「……ウィンドアローズ!」
ドラゴンには無数の風に矢が飛んでいく……
!?風に風!
全くダメージを与えられなかったドラゴンが反撃か尻尾を鞭の要に動かす……
その尻尾の攻撃もラーバンストが弾き、ヒューズが次の魔法を唱えた。
「アースジャベリン! 斉射!」そうヒューズが唱えた魔法は十数個の土の槍を飛ばす。
ドガ!
ザ!
いくつかの土の槍がウィンドドラゴンの鱗を砕き、出血する。
「おし! 俺も行くぞヒューズ!」とラーバンストが叫びウィンドドラゴンを斬りつけた。
斬りつけられたウィンドドラゴンはまた別の箇所から出血し、後退する。
「あーー私の出番がないじゃない!」とサクラは不満な様子だが、ラーバンストとヒューズが上手く戦っているので、戦いのバランスを崩さないように介入はしない。
……
……
僕達パーティーとモイスさんの出番がないまま戦闘が進み、ウィンドドラゴンを二人で倒してしまった……
「もう……私達はなんのためにここに来たのよ!」
サクラがラーバンスト達にそう言うと、ラーバンスト達は謝ってきて、素材は山分けにしようと言った。
モイスさんはその提案に乗ったが、僕達は何も手を出していないので、素材を受けとることを辞退した。
……
……
プンプンプンプンしているサクラをどうにか宥めながら王都にもう半日で到着する所で、盗賊に襲われている冒険者を発見した。
まだ駆け出しのような冒険者……あれは冒険者ギルドで僕達に声をかけてきたコーンス達だった。
「誰か……」
「ここには誰もこな! あーーなんで今まで気配がなかったのに、お前らみたいな冒険者がいるんだーー」
僕達に気づいた盗賊が僕達を指差しながら叫んだ。
「フフフフ……ここは譲らないわよ……ドラゴンはあなた達が取ったんだから、ここは私の大鎌が……」と言いながらすでに動き出していた。おそらく僕達パーティーメンバー以外は動き出しも見えなかっただろう。サクラが消えたと思ったら、目の前にいた二十人の盗賊は倒れているように見えただろう。
「ふん! ドラゴンと戦いたかったわよ! こんな雑魚相手に……」
僕達以外は唖然としていた。一瞬の出来事で何が起きたのかわかっていないんだろう。
そして一番悪そうな人をサクラは生かしていた。この男にソフィアが聞くには、この盗賊が今王都に聞こえてきた根城を持つ大盗賊集団の一員だった。
「ふん! 三百人の盗賊集団? ここから半日も走ったら着きそうな場所に根城があるの。ふーん、ラーバンスト達にドラゴンは任せたとして、私達が殲滅しちゃおっかラウール?」
「んーそうだね、クロウもヤマトも欲求不満? ソフィアはそこまで戦わなくてもいいんだろうけど……行く?」
「「行く!」」
「……あのー……助けてくれてありがとうございます……何も見えませんでしたけど……それで……言いにくいんですけど……俺達と一緒に王都に戻ってもらえませんか……こいつ達が恐怖で……魔物に襲われても対応できなそうで……」
んーー? 戻るか……でも戻ったら討伐隊が出ちゃうよね……ラーバンスト達に任せるか……一緒に盗賊の殲滅に行くか……あ!
「ねえ、君達も盗賊が倒されていくのを見たら、盗賊に対する恐怖がなくなるんじゃない!」
「……ごめんなさい……人を殺したこともないし、今目の前で人が死んだのを見ると……」
「あーー、なんかごめん……」
「もう! じゃあ私じゃ頼りないかもしれないけど、一緒に戻ってあげるわよ。ドラゴンの素材でお金も入ってくるだろうし。……でも私はこう見えてもお姉さんだからね!」とモイスさんが言ってくれた。
モイスさんはコーンス達と王都に帰る。僕達とラーバンスト達は盗賊の根城に向かうことになった。
「ラーバンスト? ヒューズ? 今度こそは私達が先に戦うからね!」
サクラは気が立っているからか、ラーバンストとヒューズからさんが抜けていた。だが僕はそこには何も言わないことにした。聞かなかったことにするのも夫婦円満の秘訣だよね?




