第百一話 ここでこんなに……どんな状況……
この状況は……
僕は貴族の子と魔物人間との間に挟まれていた。
そしてここに学園の教師も合流した。
「ジューブン! 君は何を言っているのかな? 我々教師が試験の前に言ったことは覚えているのか?」
教師が普通の事を言っている。
「おい! 俺にまとわり付いているこの魔法をとれよ!」
魔物も普通に要求してくる。
「くっ! おいただの平民の教師の分際でそんなことを言ってもいいのか?」
「ああ、アルグリアン学園の校風は耳が痛くなるほど説明しただろうが! 何年同じ事を言わせるんだよ!」
ジューブンと言う生徒は卒業試験まで到達しても、入学の時から言うことが変わっていないのか?
それはそれで何かが優秀だったのか?
僕達はあまり鑑定をしないから相手の力量は予測になっているが、ジューブンの能力を見てみた方が良いのかなーーと僕が考えていると、
「んん、じゃあまた何時か会ったときに誘うとしよう。じゃあな」とあっさりと立ち去って行った……
何だよこの状況は……
……
そんな何かおかしい雰囲気の中でも僕達が捕まえた魔物人間のボアはマイペースだった。
「おい! 話が終わったなら俺をキャッチアンドリリース! 何てギャック……ジャックーー俺を逃がしてよ!」
あーーここに来てジャックも入ってくるか……情報量過多だよ。
だからこそ僕達はこの魔物人間は自分達で話を聞き出そうと思った。
既に学園の教師は生徒に帰還を命じるようで、森の中では忙しく人が動き回っている気配がするから。
……
「……でジャックって?」と逃がせと騒いでいた魔物人間に聞いてみた。
周りでは騎士や冒険者、教師が慌ただしく動いているが、僕達が魔法で捕らえていると思われてるから魔物人間の側にいる。
「ジャックなんて言ったかなーー、そんなことは言っていないなーー。俺はこんな状況だから何も話せないなーー。誰か(チラ)俺を逃がしてくれないかなーー」
僕達の事をチラ見して魔物人間がそう言った。
だがここまで騒ぎになっているが状況じゃあ無理だね。
折角良い情報が得られるかと思ったけど、この後は仲間だけで今後の行動について話していた。
そこからは魔物人間も無視され始めたからか静かになった。
僕達を勧誘? してきた生徒もだが、生徒は一部の騎士や冒険者と王都に引き返した。
既にここに残っているのは学園の代表者と、王都から応援が来るまで魔物人間を抑える要員の人だけだ。
……
しばらくは僕達の周りは騒がしかったが、僕達は暇だった。
僕達がいくらここで頑張っても、王都に戻ってからも魔物人間の尋問には加われない。
……
で、ようやく騎士団が到着して魔道具化されている檻を持ってきていた。一応弱い部類のドラゴンの攻撃は防ぐことが出来るそうだ。作るには恐ろしい値段になるようだけど……
で、僕達は冒険者ギルドの何時ものギルドマスターの部屋にいる。
「えーとですね、状況を教えていただけたら……」そうパッショギルマスが聞いてきた。
その言葉に僕達はそのまま正直に全てを話した。ジャックの名前が出てきたことも伝えると「ん、ジャック……」とパッショギルマスが呟いたが、それ以上突っ込んで話を聞き出そうとはしなかった。
「あーーギルマス! 私達を勧誘? スタンデンス伯爵の長男って言う子供が魔物人間を寄越せって言ってきたわよ! 後は私を妾! ラウールを下男にしてやるなんて! ……我慢した……我慢したんだから何とかしなさいよ!」
サクラはジョーブン・スタンデンスの時は、確かに我慢していたな。普段ならその場でキレるのに……
「スタンデンス伯爵のところのですか……スタンデンス伯爵は良い人なんですが、子育ては失敗したようですね」
そんなことを言いながらも、学園には冒険者ギルドから抗議はしてくれるそうだ。
「徹底的にね……でないと私達が……」とサクラが言うとパッショギルマスの顔色が青くなっていた。
……それからはしばらくパッショギルマスから依頼を紹介されながら、Aランク依頼をこなしていた。
まだ受付では依頼を受けられていない……パッショギルマスがいる日でなければ依頼が受けられない状況になっているので、おおよそのスケジュールは教えてもらっているが……
何か危機管理が足りない様な気もするが、この方が冒険者ギルドが平和になるのだろう。
まーーこんな感じで大きな変化もなく、学園の卒業試験ももう一度行われ、学園生が卒業する時期になったようだ。
……
更に日が過ぎていき、学園の入学試験が近づいてきたようだ。
何となく僕達が学園に入学するにはどうしたら良いか聞いてみたが「必要がないと思いますが……」と返されてしまった。
つくづく僕達には学園に縁がないようだ。
……
僕達はいつも通り依頼がないか確認するために、冒険者ギルドに来ていた。
ギルドマスターの部屋に行く前には当然冒険者ギルド内を通ることになる。
何時もよりも初々しい冒険者が多いなーーと思いながら冒険者ギルドの受付を通りすぎ、ギルドマスターの部屋に行こうとすると、珍しくここで話しかけて来る人がいた。
「ねえ! そこの女の子! 俺達と一緒に依頼を受けないか!」
なんと初々しい冒険者が僕達に話しかけて来たのだった。
この時、冒険者ギルドの一部の時間が止まったかのように静かになったのであった。




