第百話 アルグリアン学園の実技試験の護衛開始
依頼日当日……僕達は王都から北の通行門を出て集合場所にいる。他の冒険者や騎士も続々と集まっている。
そして集合時間になると、アルグリアン学園の生徒も皆揃ったようだ。引率の教師もクラスの数以上にいる。
大体……学園関係者は三百人……聞いてはいたけど、意外に多いな。
この人達を護衛する……一番の大外で守りながら適切なランクの魔物を、適切な数見逃すのは確かに高ランクの冒険者でないと出来ないだろうな……
……
「今回の卒業試験の護衛冒険者はこの人達です。ど・ん・な・見た目でも、皆さんがあなた達より強者です。ですから安心して試験の合格を目指して下さい」と教師が言っている横に、僕達冒険者は整列していた。
……
教師が僕達をそう言って紹介するものの、何か嫌な視線も感じながら試験が開始された。三桁の数の視線は僕の心では受け止めがたいよ……
「我が求めに応じろ! 火の力ーーファイヤーボール!」
「我に従え水よ!ーーウォーターボール!」
「…………アース……」
何か学園生が格好つけながらサクラをチラ見している。
ゴブリンを一撃で倒せないくらいの魔法だが……ドや……おいおい「俺のこの姿は格好いいだろ!」……そんな顔でサクラを見ている……
……しかし邪な思いを感じたのか、魔物はそのまま学園生に突撃し、学園生も避けれない様子がある……
……
……
「石礫改……」と僕は銃弾のように石を魔法で作り、ゴブリンの眉間を撃ち抜いていた。
んーー拙い……こんなんで良いのか?
僕は学園生の戦力がこの程度なのか落胆していたが、ちょっと離れたところから強者の気配がした。
ジャ!
ジャス!
……ドゴ……
おーー学園生なのだろうけど強いね。
ゴブリン相手だが全くの無傷……だけどなんだろううあの外見には気を使っていませんよと言うような見た目は。
何となく粗悪品に見える片手剣に普段町中で着るような服……この子は平民……それを通り越して貧民?
「うぇりゃ!」と気の抜けた声も聞こえてきたが、こちらも格好悪いポーズになっているけど魔物を倒している。
なんだ、普通にいい戦闘力を持った人も育っているんだな。
戦闘の素人の様な人ばかりではなくて、戦いに向いている人もいる。
やっぱり戦闘職にはいくらかの適正は必要なんだな。
……
僕達は生徒の個性を感じながら危なそうな場面になる前に強い魔物は倒していく。
んーー言われていたより強い魔物が紛れ込んでいるけど、こんなものなのかな。
ゴブリン程度までではなくて、マッドパペットまでは出現を確認している。
この魔物は名前のとおりだが、まーー泥◯坊みたいな感じだ。……意外に学園生には厄介な魔物だろう。
……
それでも順調に魔物は学園生に倒されていき、大部分の生徒は合格ラインを越えたのか、顔つきも緩んできていた。
そんなときに遠くから勢いよく僕達がいるところに近づいて来る魔物の気配がした。
その魔物は森にある木など関係ないかのように一直線に進んで来ている。
「ん、クロウ? この気配はなんだろう?」
「我が感じるのは猪? 強いけど猪の魔物……ボアかな?」
「ボア……この強い気配で……どんな猪の魔物だ」
僕達は少し構えた。
強さの気配だけならSランクの魔物の、ロード種並みのボアってどんなボアかが想像がつかなかった。
ドゴン!
バキッ!
ベキ!
ーーザザン!
自然が破壊されている音が近づいてきて、僕達の所を通り抜けそうだったから、柔らかい結界、衝撃を逃がして動きを止めるて捕まえるタイプの魔法を唱えた。
ドドドドドドドドdldldldldld!
パフん!
…………
何かが捕まった。
衝撃を殺すとはいえ、数十メートルは先に進んでしまった魔物を確認に行く。
……
「いててててて……おい……もっと優しくしてくれよ! 俺は走ってただけじゃないか!」
そんな言葉を話した相手……体は猪、ボアだが……全長が五メートルはあり、顔が……人間だよ! 最近出会うことが多い魔物人間か! 人間魔物か!
……
「で、僕の唱えた魔法で動けないみたいだけど、何か言うことはある?」
「……あるぞ! 大いにあるぞ! ……何故俺がこんな目に遭うんだ! ただ走ってたいただけだろ!」
「……走っていただけでも人間が死ぬだろ……そんな大きな顔でわかりきった事を言われても……」
「ああーーん、俺の顔は体と一緒で大きいんだよ! 仕方がないだろこんな体なんだからな!」
んーー意外に話せるね……と思っていると、僕達に一番近いところにいた学園生らしき人が僕達の近くまで歩いて来た。
「おいお前! そいつを私に寄越すのだ! 冒険者風情が私に獲物を献上できるのだ。ついでに私の妾と下男にしてやろう。光栄だろ?」
は?
「私はジューブン・スタンデンス。スタンデンス伯爵の長男だぞ。光栄だろ我が伯爵家の恩恵が今後は受けられるのだぞ?」
は?
この魔物人間が気になっている時に貴族……アルグリアン王国は貴族もそんなにでしゃばって来ていなかったんだけど、ここで運が悪い出来事が……
「ジューブン様? 今の状況を理解していますか?」
「おい! 俺をこのまましているのか!」
「あの珍しい魔物を学園に渡したら、私が今期の首席になるだろう。」
あーー二人の言葉を一気には聞けませんよ!
今日はまた僕の運が悪い日なのか……




