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最強へ誘われる




「ええ?今なんつった?俺を倒すだって?は、笑わせてくれる。お前はやっぱりピエロでもやった方がいいんじゃねぇか?」


「くっ……」



笑われる。剣を目の前の相手に向けてはいるがそれはとてつもなく心もとない。俺の……力量では……


悔しい、悔しい。ふざけるな。お前ごときが俺の全てを否定するな。努力せずに才能ごときで強くなったやつが……!


俺は何日も何日も剣を振り続けた。なのにそれを嘲笑うかのように力技で否定された。



「ふざけるんじゃねぇよ……たかが才能ごときで!」


「おいおい、それじゃお前はなんなんだ?その『才能ごとき』に負けたお前はなんなんだ?えぇ!?答えてみろよ!」


「……」


「無理だよなぁ!?お前みたいなゴミじゃ剣に振るわれるだけ、俺みたいに剣を振ってみろよ!」



この男は……ユーカスは、才能溢れる期待の星と呼ばれている。そんな奴に……俺は、倒すと宣言してしまった。


無理だ、学園最弱の俺では……



「何も言わない……ねぇ?それよりお前、俺を倒すって言ってたよな。なんだ?決闘でもするのか?」


「っ!あぁ!そうだ!」


「あははははは、まじだったのかよ!俺を笑わせるためかと思ったぜ!?」


「うるさい!」


「まぁいいぜ、明日やろうか。負けた時の条件はそうだなぁ……うん、お前の妹を奴隷としてもらおうかな?」


「はぁ!?それは無理に決まってるだろ!」


「あ゛?お前には価値がねぇから代わりの提案しただけじゃねぇか」


「くっ……ならお前も負けたら奴隷になってもらうぞ!」


「無理に決まってんだろ?お前の妹でも俺とは釣り合ってねぇんだからよ?せいぜいお前に謝る程度だよ。まあ俺が惨敗でもしたらその話は受けてやるよ、 無 理 だ が な ぁ ! ?」



妹を守るためには……くそ、これを受けなければならないのか!こんな、こんな不利な……条件で……



「ま、そういうこった。また明日なぁ?楽しみだぜ、お前の妹はどんな声で鳴くかねぇ……」



そういい奴は立ち去る。取り巻きと共に。俺はそれを眺めることしか出来なかった。





夕方、俺は学園から歩いて自宅である家族が経営している宿に戻る途中。目の前で複数の人影が俺の行く手を遮った。



「おいおい、ここに学園祭弱の男がいるぜぇ?」


「あー、やっと見つけた。さっさとやろう」


「そうスっかぁ」



彼らを俺は知っている、ユーカスの取り巻きだ。一体どういうことだ?なにをする気だ?


そんなことを考えているうちに奴らは動き出した。いきなり腰にさしていた剣を抜いたのだ。



「なっ!?」


「困惑してるよな?」


「何故剣を抜いた!」


「何となくわかってんじゃねぇの?明日の決闘に出ないでほしいだけなんだよ」


「……あいつの指示か?」


「そうだ。さて……動けないほど痛めつけられるか、死ぬか……どっちがいい?」


「俺は……」



諦めるのか?こんなことをされてまで出られたくないことでもあるのか?単に妹が欲しいだけ?


いや、そんなのはどうでもいい。俺は……ばあちゃんとの約束を守るんだ。『弱くても意志を曲げない』ということを……!



「明日の決闘に俺は出るぞ!」


「そうかぃ……なら死ねや!」


「ひゃっはぁー!」


「残念だったねぇ!?」



三つの凶刃を俺は……反応もできず、受け入れ、倒れ伏す。右腕は切り落とされ、腹を刺され、首の根っこから心臓の近くまで切られた。あぁ……やっぱり……無理……なのか……











『おいおい、そんな簡単に諦められてちゃせっかくの力が勿体ないじゃないか』



気づくと見知らぬ全てが白い空間にいた。何故か俺はこの空間に懐かしさを覚えていた。



『ん?おーい、聞こえてねぇの?』



周りを見ていた俺は前から聞こえる声に振り向き驚いた。そこにはとてつもなく近いところに老人の顔があったからだ。



「のわぁ!誰だ!?」


『見えてんだろ?なら俺の声も聞こえてるか?』


「あ、あぁ……お前誰だ?」


『よしきた!自己紹介をさせてもらおうか!』



そういい老人は少し下がったあとに両手を広げ声高々に吼えた。



『俺の名前はグリス・アストル!夢を追い、世界最強の剣豪となった男だ!二つ名は『闇霧のグリス』だ』


「……?そんな男の名前は知らないが」


『あったりまえだろうが、こことは別の世界の話だぜ?』


「何を言ってる?別の世界?」


『おう、この世はいくつも世界があってな。俺はその世界のひとつからこの世界に転生したんだよ』


「……それで?ここはどこだ?」


『お前の心の中だ』


「は?なら何故お前がいる?」


『そりゃお前さんに転生したからだろうが』


「ちょっと待て……ちょっとよくわからん……つまりお前は別世界から来たやつで俺に転生したってことか?ならなんで俺は意識があるんだよ」


『それは転生条件だな。お前がいるこの世界では俺は存在しない、例えそれが意識だけだとしても。言っとくがここに存在する俺はただの残骸だ、とてつもなく強い意志を持ってお前へ説明するためのメッセンジャーとして残されたってこった』


「うん……まぁ、何となくわかった。それがなぜ今になってでてきた?」


『死にかけてるからだな』


「あ……そうか、てか……あれじゃ俺は死ぬだろ?今更でたって意味ないんじゃ」


『闘気を使えばあんな傷治るわ、腕もくっつけれるしな』


「んな化け物じみた事できるかよ……」


『そうでもなきゃ人類としてではなく生物としての世界最強にはなれなかったんだよ』


「そうか、なら今の状況はなんとかできるのか?」


『おう、できるぞ。次の説明だ、急ぎ足でいくぜ。まず俺は世界最強に剣だけでなった。普通はそんなことは出来ない。だが俺もお前と同じように前世があった、その時の知識、技術、闘気でなんとかなったんだ。今のところの質問は?』


「……何回転生したことがある?」


『数え切れないほどだ。そしてその全てが剣に関することで強くなっていた、男でも女でも……魂に刻まれたかのごとく。だからお前も剣に執着してるだろ?』


「そう……だな」



確かに俺は剣にいつも執着していた。今回だってそうだ、俺がやってきた剣に関する努力を否定されたからこそ怒ったんだ。



『っとまぁあっさりと説明したがよ、極論を言うとお前さんの魂にはとてつもないほどの知識や技術が眠ってんだ……よし、伝えたぜ。そろそろ時間切れだしな。いくつか質問は聞くが』


「て、転生って……そんなにもたくさんできるのか?」


『無理だな、一般人なら転生すら出来ずに魂は崩壊し、新たな魂のエネルギーとなる。強い魂でも一二回が限度だ。つまり俺が……俺たちが異常なんだ、他には?』


「さっき闘気を受け取ったとか言ってたが……」


『おっと、忘れるところだった。ま、俺が消える頃には自動的に渡される仕組みになってるだろ……後で渡される闘気は俺達の努力の結晶だ。ちゃんとそれが最大値になるし有難く使え』


「そう……か、他にはもうない」


『本当かぁ?お前さん……いや、いいか。いつかは気づく。そいじゃあな、この世界の俺。最後に俺達から一言だ、俺達から貰った力は自分の力じゃないとか言うなよ?それは正真正銘お前自身の力だ、じゃあな』


「おう、短い間だが……なにか懐かしかったよ」


『俺ん時もそうだったなぁ……』


「おやすみ」


『おぅ……おやすみぃ……』



怒涛の展開だったが……何故か俺はこの状況を受け入れていた。さっきあいつが言っていたように魂になにか刻まれているのだろう。だからこそ……自信が満ち溢れてくる。


これで……奴らを……見返すことが出来る。俺の……力で。何年も積み重ねてきたこの俺たちの剣で。












「やっぱり弱いなこいつ」


「そりゃそうだろ、こいつは正真正銘の雑魚だからなぁ!」


「馬鹿な選択したねぇ……んじゃ、妹さん迎えに行きますかぁ……ひひっ……」



彼らは立ち去ろうとする……が、後ろでなにか動く音がした。1人が振り向くと……そこには……右腕がなく、腹に穴が空き、左肩にはとても大きい切り口があった男が立っていた。



「よくも……やってくれたな?」


「な……なに?お前……生きていたのか……いや、関係ない……殺る!」


「ちょっとはしぶとかったってことかぁ!?」


「もういっぺん死にさらせぇ!」



3人は再び襲いかかるが。



「遅い……斬血(ざんけつ)流・血斬り!」



その男の右腕から溢れていた血が、剣の形になり3人の攻撃を真っ向から切り伏せた。



「がっ!」


「なにぃ!?」


「まっじかよぉ!オラァ!天界流・昇り滝!」



1人は反撃に成功し、下からすくい上げるように剣を振るうが。



「斬血流・血滑(ちかつ)


「んなっ……滑って……!?」



血脂により剣は滑り、そのままの勢いで横っ腹を切りつけられ、地面に付すことに。



「お前……なんなんだそれは……!なんなんだよ……お前は一体なんなんだ!?」



全身から闘気を溢れさせる目の前の男はとてもだが最弱とは言えない。男はめいっぱい息を吸い、はっきりと言った。



「俺はアラン・ストーレン。世界最強の剣豪を目指す男だ!!」



その声は世界に轟く。音として響かず、力となって響いた。


時代は進む。一人の男の手によって。




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