3-19 暴徒襲来
王室の重要人物たちが、目の前の赤いカーペットを右から左へと歩いてく。
淡々と何人もの偉い人たちが通り過ぎていく光景の後ろでは、きれいな青空と太陽と、照り返す大理石が広がっている。それに加え招待された人たちは、そのカーペットの横でサンドイッチの如く皆で押し潰しあっている。
端的に言えば、暑い……厚い……熱い……!!
なんでこうなるのー!?
エラちゃんの登場もまだまだだし、屋内に入れるのは一体いつになるやら……これならまだ見物席にいた方がまだマシと言えるかもしれない。
ここでは例え暑かったとしても移動は不可能。体を動かすのも不可能。……いっそ腹痛ということにしてトイレにでも駆け込もうか……
私はトイレなんかよりももっと正当な理由がないか、前方しか見えない視覚と人並みの聴覚で辺りを探る。
すると、後ろの方で係員が明らかに慌てているのに気が付いた。
だが私がいくら耳を立てたとしても、この距離では何を言っているのかさっぱりわからない。
一体どうすれば――少しだけ考えたが、自分にはあの方法があったのだと気づく。
「……耳神よ、我に力を与えたまえ。アンプリファイア……!」
私のランクでは気休めほどにしかならない聴覚強化の魔法だが、それでも何とかギリギリ会話を聞き取ることができた。
「大男達の暴徒が裏門から侵入しようとしているそうだ」
「まだ宮廷騎士たちが抑えられてはいるが、時間の問題らしい」
「例の脱獄した元軍人たちらしい、あいつらは相当な精鋭だぞ」
……なんと、こんな神聖な場に武力を持った者たちが押し入ろうとしているようだ。
自然と、私の手には力が入っていた。
させない。せっかくのエラちゃんの大事な結婚式なんだ。めちゃくちゃにするなんて許さない!
私は列から抜け出し、正門とは逆の方向に走り出した。
場所はよく分からないけど、裏門と言うからには正門の反対側にある筈……!
城の脇を駆けると、喧騒とは真逆の異様なまでの静寂が広がる。そこには私のヒールが地面を叩く音と、微かに、数人の気配を感じた。
「あっちだ!」
その気づきと、言葉とともに、先の方から剣戟の音が鳴り響いた。
「っ……!」
唇を噛みしめ、尚も走る。
怖いのだ。飛び出してきたはいいが、私はただの魔法使い見習い。今は頼りになるお兄ちゃんがいなければ、ヒリアさんすらいない。たった一人で何ができるだろう。
それでも走った。足は止まらなかった。だって。
「……守りたい人がいるなら、守らなきゃ」
やがて光が見える。
何が起こっているか、何が起こるか分からない不明の戦場へ、足を踏み入れる――――




