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身近で身近ではない問題

 うっかりと美幼児に流された日以来、私は定期的に王宮に王太子の遊び相手としてあがることになり、ときには王妃と王太子がお忍びで我が家にやってくるようになった。

 王子といってもまだ幼い子供にすぎないラウレンス様のやりたがる虫とりや騎士ごっこといった貴族令嬢がしないような遊びにも、私は大人の広い心でつきあった。・・・まあ、せっかくもう1度育つのだからと思わず童心に帰って全力で一緒に遊んでしまったところもある。そのせいか出会いから3年ほどたった今では、ラウレンス様にはずいぶん懐かれてしまった。・・・不覚だ。

 さらに不覚なことに、ここに私達と同じ年のコルネリス・エトホーフトとエルベルト・ボスマンスが加わった。前者が宰相の長男、後者が騎士団長の次男で、問題なのは共に攻略対象なのだ。・・・大問題だ。たぶん将来の側近候補なのだろう、遊び相手として王宮に招かれていた2人とも全力で一緒に遊んでいるうちに、すっかり仲良くなってしまった。・・・何度でも言おう、不覚だ。

 ヒロイン登場までまだ疎遠になる時間はあると懲りずに自分に言い聞かせつつ、バッドエンド回避のために、私は別の方向から着々と準備を進めることにした。

 いよいよ王太子の婚約者の有力候補になったとご満悦な父親がつけた家庭教師から、文字を学び歴史を学び、自分を取り巻く世界を理解し、父親の行動パターンを分析し、次にとるステップのための準備をした。体もまだ十分じゃないけど、だいぶ動けるようになった。そろそろ次の行動をとる頃だ。

 今夜は、父親と母親は王家主催の夜会に出るために夫婦そろって出かけた。おそらく立派な仮面夫婦っぷりを発揮しているのだろう。王宮で開かれた子供も出席したお茶会で、さすがにそのときは付き添っていたが、久しぶりに会った母親が、理想の夫婦で羨ましいと言われていたときには、横で聞いていて倒れそうになった。あれはお世辞、いやいっそ嫌味だったんだと思いたい。

 アンナに寝かしつけられた後、もう眠ったと思われてる時間を待って、私は行動を開始した。こっそりと与えられた部屋を出て、廊下を目的地までひっそりと進む。目指すは父親の書斎だ。

 下準備は、済ませてある。1か月に1度父親は領地に視察に出かけ、帰った日の夜は書斎に直行する。3日前がちょうどその日で、私は、その日も今日と同じようにして部屋を抜け出し、父親の書斎に主より早く侵入して、カーテンの影に隠れて待った。まだ小さい体はこういうときに便利だ。まんまと父親に気が付かれずに見たいものは見れた。

 そして、今日いよいよ作戦を決行するときだ。首尾よく誰にも見つからずに父親の書斎に忍び込み、あの日父親が私が見ているとも知らずに開けていた本棚の隠し引出しをあける。中に入っていた書類を確認すると、案の定目的のものだった。やった、と拳を握りしめていると、

「何をしているの?」

静かに声がかけられて、思わず声をあげそうになった。

「っ!」

 後ろから声をかけた誰かに掌で口元をおおわれて、そのまま抱き上げられる。なにやつ!?と顔を見上げると、

「お兄様・・・?」

 少し年の離れたお兄様が私を見下ろしていた。またか。何者だ、兄上。お兄様は、抱き上げた私の手にあるものをみると軽く眉をひそめ、書類ごと私を抱き上げたまま、密かに部屋を出る。お兄様は黙って私を抱き上げたまま廊下を進むと、あの日の様に自分の部屋へと連れていった。

 お兄様は誰にも会わないまま自分の部屋へと入ると、私をソファへとそっと下ろしてくれ、私の手から優しく、しかし確固たる態度で書類を取り上げ、目を通し始めた。

「・・・これは私も探していたものだ」

え?お兄様ってまだ15歳くらいだよね?こんな幼い体の妹に言われたくないだろうけど。ほんと何者なの、お兄様?

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