表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

はじめの一歩へ

 アンナに押し込められたベッドの中で『花咲ける乙女の祈り』について覚えている情報を整理し、取るべき対策を考える。前世で弁護士であった私にとっては昔取った杵柄である。依頼者からの情報を精査し、取れる法的手段を考える。

 ・・・まあ、割となってすぐに死んじゃったんだけど、事故で。むなしいなぁ、あんなに必死で勉強したのに。しかし、そんなことを考えていても仕方がない。切り替えの早さは、前世からの私の取り柄だ。

 『花咲ける乙女の祈り』の中での私は、メインの攻略対象者である王太子の婚約者兼攻略対象者公爵令息の姉で、立派な悪役令嬢としてヒロインに立ちはだかる。嫌味、嫌がらせ、いじめ・・・。

 いじめ、だめ、絶対。

 でも嫌味くらいは言うのも無理はないとは思いながらプレイしていた。ヒロインは男爵令嬢でしかも平民育ちという王道パターンだから、口のきき方もなっていないようなぽっと出の女が、自分の婚約者や弟に近づいてきたらそれは牽制するだろう。

 ただ最終的には王道の階段からの突き落としにまで至るので、それは、だめ、絶対。よくて傷害、下手したら殺人未遂だから。

 その所業が暴かれて、さらに父親の領地での不正も暴かれて、悪役令嬢は華麗に没落するのだ。具体的な場面は描かれてなかったけど、悪役令嬢自身は処刑、父親は領地も爵位も失い自殺、とさらりとテロップが出てたはず。

 弟だけは攻略されていれば王太子の側近としてそのまま務めてヒロインと結ばれるし、逆ハーレムエンドでもヒロインと結ばれないまでも地位は同じだった。いやーそれでも家族がこんなことになったら、弟も相当茨の道だよね、エンディング後とクリアしたとき思ったけど。

 処刑されるなんてまっぴらだし、こんな家族皆不幸になるエンディング、絶対に嫌!絶対回避!・・・とはいっても今の体はあまりに幼くて、できることは限られる、か。うん、まずは身近な家族問題だな。

「よし!」

 決意を込めて小さな掌を握ってみたけど、この体はたくさん睡眠を求めてるみたいで。具体的なことなど考える暇もなく、眠りに落ちてしまった。

 しかも目が覚めると、さんさんと午後の陽ざしが部屋に差し込んでいた。

「なんてことだ・・・」

倒れた直後だからといってこの体は寝過ぎではないだろうか。それとも幼児はそういうものなのか。

「お目覚めですか?よく眠っておられましたね」

 昨日と同じように、アンナが声をかけてくれる。思い返すといつもそばに控えていてくれる気がするけど、一体アンナの勤務体制はどうなっているのか。なんてことを寝起きの頭でぼんやり考えていると、アンナの顔が心配そうになった。慌てて、自分でベッドから起き上がる。

「もうげんき!」

 力強く主張して、止められたりする前にぴょんとベッドから飛び降りた。うん、本当に体が軽い。

前世の記憶ばかり探って眠りに落ちたせいか、自分の体の軽さを改めて感じる。

「それでは、お食事をご用意しましょう」

 アンナはすぐに軽食を用意してきた。・・・こんな風にいつでも食事が出てくるなんてこの家の厨房の人達の勤務体制はどうなっているのだろうか。しかもそういえば私の分の食事だけがいつも用意されている。手間がかかるだろうにと思いつつも、食事をいつも1人で食べていることにも思い当たった。この世界の貴族はそれが普通なのだろうか。マナーをわきまえない幼いころはそんなものかもしれない。

 つらつらとそんなことを考えている間にも、アンナが食事の手伝いをしてくる。いや、1人で食べられるから。・・・いや?1人では食べられないんだった。

 大人しくアンナの手を借りて、食事を終えると早速、私は行動を開始することにする。さあまずは、家族問題だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ