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そうだ、お茶会しよう

 そうだ、お茶会しよう。

 とりあえず実家ごと没落のフラグは潰した。そして、あの父親を潰したということはもう1つ回避したフラグがある。それは、ずばり現宰相の失脚!なんとあの父親は自分の不正発覚防止と、公爵家以外から宰相が出ていることへの不満から、宰相を陥れて失脚させるのだ。

 ・・・本当にあの人はろくなことをしないな。

 宰相が失脚したことから、宰相の息子であるコルネリスは、この国での居場所を失い、母方の実家である隣国の伯爵家で育つことになる。母や祖父から、父親の失脚は冤罪であると教えられて育ったコルネリスは、父の冤罪を晴らすために、隣国の伯爵家からの留学生としてこの国に舞い戻る。

 失脚後の周囲の人間の反応を聞きながら育ち(その育て方もどうかと思うけど)、ゲームの中でコルネリスは人間不信でこじらせた少年に育っていた。が、ヒロインと出会い、心をとかされ、共に父の冤罪を晴らす。・・・で、それに伴って宰相を陥れたことが発覚した父親と共に我が公爵家は没落するわけだ。

 この私にとっても忌まわしい流れは無事断ち切られた。コルネリスは幼馴染であるし、彼が苦しむような未来を回避できたことも何よりだ。が、ここで私は1人気になる人物を思い出した。

 コルネリスの婚約者であるフロリーナ・クリンケルスである。コルネリスルートでは、彼が目的を果たす結果没落するものの、私は悪役令嬢として君臨はしない。このルートで登場するのがフロリーナで、ゲームの中でコルネリスの家は失脚しているから、婚約は破棄されたものの、元婚約者への幼い初恋を深く静かに熟成させている。

 そして、留学して来たコルネリスのことに気がつき、自分は彼に近づけないのに、彼と関係を深めていくヒロインに嫉妬を深く静かに熟成させていくのだ。

 王太子ルートでシルフィアにやられるように、面と向かっていじめられることはコルネリスルートではないが、持ち物がなくなったり、誹謗中傷の怪文書がまかれたりジワジワとメンタルにくる嫌がらせが続く。

 その犯人が隣の席でにこやかにクラスメートをやっていたフロリーナだとわかった時には、思わずお前か・・・!と声に出たね。大人しく内に秘めてしまうタイプの人間のほうが怖いことってあるよね。いきなり思い切った行動に出たりするし。と思わず前世を思い出したが、それはともかく、フロリーナである。

 婚約が破棄されることはなくなったけど、ヒロインが登場しても悪役令嬢になって断罪されるなんてことは避けられるか心配で気になる・・・というか、友達になりたい。今世では王太子の遊び相手をやっている間にコルネリスとエルベルトともすっかり幼馴染になった。友達と言ってもいい。でも同性の友達が欲しい。

 フロリーナのうちは確かうちと同じ公爵家で、3公爵家と宰相の橋渡しのような形でフロリーナとコルネリスは婚約したはずだ。我が家と同格で同じ年の女の子。友達になるには絶好の条件ではなかろうか。もちろんお互い気が合えばの話だが、とりあえず出会いのきっかけがほしい。

 そこで、そうだ、お茶会しようということだ。

 貴族の家では、子供達のためにお茶会を開くことがあるらしい。友達作りのためというと微笑ましいが、そこは貴族、将来の人脈づくりの端緒だそうで、ちょっと世知辛い。

 お茶会は、各家の女主人が主催するらしく、我が家でいえば、お母様ということになる。であれば、お母様に役に立っていただこう。父親が領地に去り、新たに家族で過ごすことになって以来、ぎこちなくもお母様は私達に歩み寄ろうとしている。

 それに対してこちらは突っぱねるのもあまりに子供だ。・・・実際子供だがな。ということで、とりあえずそれなりの関係を築こうとしているお母様に、母親としてのお役目をはたしてもらおうということだ。私のためにお茶会を開いてもらおう。

 今までお母様に何か求めたことがない私が、急にお茶会をやってほしい、同じ公爵家のフロリーナは絶対に呼んでほしいと言い出したことに、お母様は戸惑ったようだった。それでもお母様は、すぐに私のためにお茶会の準備をしてくれた。密かにフリッツが教えてくれたところによると、嬉しそうに熱心に準備を進めていたそうだ。

 ・・・悪い人ではないのだ、お母様は。ただ弱くて自分に不都合な事実に向き合えない人。前世でも見てきたそういう人なのだろう。それがわかるから、私は、ルートを不器用ながらも可愛がろうとするお母様に、思わずルートとの間をとりもってしまう。抱っこしてあげてとか一緒に寝てあげてとか。

 そういうときお母様は私も抱きしめようとしてくれるから、私もそれを受け入れて、私達は少しずつ親子らしくなっているのかもしれない。・・・まるで大人同士みたいにふるまうお兄様を見てると複雑だけど。

 いつか兄弟3人だけでなく、お母様も一緒に家族になれたらいい。そう思うようになっていた。

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