第2話 分不相応
またもや遅くなってすみません。
お金が絶望的な状態からは脱して一安心といきたいところだが、人間やはり何も食わずに生きることなどできない。ということで2人の意見は一致したので宿探しの途中ではあるが軽く遅めの夕食を済ませることにした。
ここでいったん得た情報を整理しよう。まずは今いるこの場所だがこれはさっきの門番のおじさんが教えてくれた通りアイナク大国の首都であることは間違いなそうだ。金銭的な問題はさっきの門番のおっさんのおかげで一応解決した。今後の生計の目処としては冒険者という職業になってギルドから斡旋される仕事をこなしていこうと考えている。それにはまず冒険者登録をしなければならないがそれは明日にまわそうと思っている。この大陸の区分はアイナク王国とカナリア共和国の大国2つに分けられている。勢力は同じくらいで年に1度ほど小競り合いをしてはいるが国間の行き来は自由である。現在得られている情報はこの程度である。
2人は名前のわからない植物のサラダと猪に似ている肉の丸焼きを食べた。この料理を選んだ理由は特になくおすすめをお願いしたのだが、日本の料理と比べても美味しかった。ちなみに店の名前はビーン食堂らしい。
店をでた2人は今夜の宿を探すべく宿泊施設の集まる区画へと向かった。これまで順調だったが、中央の通りを離れたところでいきなり10人を超える人数に囲まれてしまった。俺はとりあえず冷静に誰何してみることにした。
「えーー、俺たちに何か用でしょうか?」
すると1番偉そうな人が
「国王陛下の勅命でミツキとコトネ両名の身柄を拘束させて頂く」
と宣言した。何かやらかした覚えもないので抵抗しようとしたがただの高校生だった俺にはどうすることもできず意識を手放してしまった・・・
◇◇◇◇◇
「おい!起きろ」
という怒鳴り声が聞こえたと同時に俺はだんだんと意識を取り戻した。意識がハッキリとした直後、反射的に
「琴音!!」
と叫んでいた。どうやらすぐ近くに居たらしく真横から
「碧月・・・?」
という声が聞こえた。俺はほっとしたと同時に周囲を確認しようとしたところで
「これから質問を開始する。なお回答に対する黙秘と拒否は認めない」
という声が耳に入った。
「これはいったいなんですか?」
俺が少し怒りのこもった声で警察っぽい人に質問すると
「質問も許可しない。」
と一蹴されてしまった。ここは黙って聞くべきだと判断し、素直に頷いた。
「1つめの質問だ。お前らは他国の間者か?」
「いや、俺達はこの国しか知らない。」
嘘をついたらまずそうなので事実だけを述べる。
「そうか、では2つめだ。王都デッセンブルグに来た目的はなんだ?」
「冒険者になりに来た。」
「それにしては貧弱そうだが・・・能力検査は行なったか?」
「いえ、まだしたことはありません。」
「そうか・・・では、検査をするからすこしまってろ」
そう言い捨てて男は部屋を出ていった。その間に琴音と話をすることにした。
「琴音大丈夫か?」
「うん、大丈夫だけど、検査ってどんなのかな?」
少し怯えた様子で言っていたので元気づけてあげようと思ったがタイミング悪く男が帰ってきた。
「この魔道具に触れてもらう。まずはコトネからだ。」
男が魔道具と言ったものは真珠を大きくしたような球体に古い印刷機のような物が繋がっていた。琴音が恐る恐るその球体に触れると球体が5色に光った。色は順番に赤→青→緑→黄→紫だった。そして男は印刷機のようなものから出てきた紙をみて
「これはっ!」
と驚いていたが、深呼吸をしてから
「次はミツキ、触れてみろ」
と言われたのでよく分からないがとにかく触ってみると、球体は真っ白に輝いた後真っ黒になった。さっきと同じように男は紙を確認しまた驚いて
「上に報告してくるから待ってろ」
と言い急いで部屋を出ていった。俺達はよく分からないままこの部屋に放置されてしまった。