第一話 異世界での生命線(お金)
投稿遅くなってすみません。ちょっと病気で床にふせってしまって……
こらからは週に2度の投稿を守るようにしたいと思います。
碧月はまだ朦朧としている意識の中、そばですやすやと眠る琴音を起こそうと立ち上がった。
琴音の整った顔に一瞬見惚れてしまってから(いかんいかん)と心の中で思い直し、軽く肩をゆすった。
「おーい 琴音!! 起きろーー!」
肩を5回ほどゆすったところで琴音は気だるげに瞼を上げた。
「碧月?…… ここはどこ??」
不安そうな顔で琴音は碧月に聴いてきたので安心させるためにもちゃんと答えてあげたかったが、あいにく碧月も現状を把握しきれていない。
と、言うより全くと言っていいほど何もわかっていなかったので、
「ごめん、俺もいま起きたところで……ここが日本いや元の地球なのかすら分からないんだ……」
「そう、じゃぁ まずはそこからだね」
恐怖が大きいのか努めて気丈に振舞いながらそう言った琴音の顔は誰が見ても強がっていたが、自分を元気づけているようにも聞こえたので、その件には触れずに
「そうだね。まずは見えている街に入ってみるのはどうかな?」
と碧月が琴音に提案すると
「そうしようかな。こんなところにいたら何かに襲われるかもしれないしね!」
あくまでも明るくそう言ってきたが、実際に周りに広がる森に目を向けてみると狼のような鳴き声が聞こえたり、兎に似た(知っている兎より2倍ほど耳がながいが)動物が此方を覗いてきているので本当におそわれそうな雰囲気だ。しかもいまは夜なのか辺りは真っ暗である。身の危険を鑑みても、ここは街に入るべきだろう。
しかし碧月は門のところに武装(西洋風の鎧を着て手には槍を持っている)している人が2名立っていることにいぶかしさを感じていた。現代ではたとえ紛争地域の国境線だろうとあんな鎧を着ている人はいないしずっと此方を観察するように睨めつけているようにみえる。記憶のなかで一番近いのはまさにゲームに出てくるだいたいモブキャラである門番である。逆にそうとしか言い表せないので、街に普通にはいることができるのだろうかととても不安だった。なぜなら彼の知っているゲームのなかでは街に入るのにお金が必要だったり、身元の証明ができるものが必要だったからだ。しかしそんなものを持っている訳は無い(日本の円と学生証はあるがつかえないだろう)し、手に入れられる目処もつかないのでとにかく行ってみるしかなかった。そんな思考をしていたせいか琴音が
「どうしたの?大丈夫?」
と聞いてきたのでとにかく行動あるのみと割り切って
「ああ、大丈夫だよ」
とにこやかに返した。
「じゃぁ、行こうか」
と琴音に行って門の方へと歩き出すのだった……
◇◇◇◇◇
門へたどり着くと待っていたぞと言わんばかりの顔で門番が
「名前と年齢、職業を答えろ」
と聞いてきてので、琴音の方に目をやると
「私は神楽 琴音、年は17です」
と臆せずに答えたので碧月は少し早口気味に
「俺は雅楽川 碧月、年は同じく17だ。職業は特にない。」
と答えると門番は訝し気に
「コトネにミツキか……珍しい名前だな。それにしても17で職業がないとはお気楽な奴らだな。まぁいい。ここはアイナク大国の王都である。この国の首都にはいるのに特にこれといった決まりはないが中で問題を起こすとめんどくさいことになるので気を付けるように!!」
碧月は無事入れそうだなと内心ほっと一安心していた。
「では、せいぜい問題を起こさないことだな」
そういって門番はまた周囲の監視もとい見回りに戻った。ちょうどタイミングも良かったため碧月は琴音に
「じゃぁ、まずは寝床を探さないとな。 行こうか琴音!」
と呼びかけて手を取った。琴音の顔が少し赤くなったがそんなこと気にすることなく碧月は街中へと入っていった。
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ちょうどその頃、王城では一人の見回り兵が懸念される問題について報告していた。
「アイナク陛下、先程わが王都に入ってきたコトネとミツキという者に関してですが年が17というにも関わらず職業を名乗りませんでした。わが国を含め15以上の者は原則としてなんらかの職業が与えられます。他国の王族でもない彼らが例外だとするならば対処された方がいいかと存じますればいかがいたしましょう?」
「そうだな、確かに一理ある。では、抵抗されなければ無傷で、もしも抵抗してきた場合は軽度の負傷の範囲で捕らえたのち拘置所にて尋問せよ。尚、尋問の様子は我も別室にて見届けるとしよう。」
「はっ。では今から第一騎士団と拘置所の準備をいたします。30分後までには尋問を開始できるようにいたします。」
「うむ。」(何かしら特別な力を持っているやもしれん。うまくいけばあのことにも……)
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安心したのもつかの間、碧月はまたも途方に暮れていた。なぜなら宿をとるためには、確実に金銭が必要とされるだろうからだ。かといって一人ならまだしも琴音がいるため野宿という選択肢は碧月のなかではありえなかった。
「なぁ、琴音。情けないことながら俺は今何も良い考えが思いつかないのだが、どうするべきだと思う?」
と恥ずかしさからか碧月にしては珍しくつっかえそうになりながら話しかけると琴音は
「そんなにかしこまらないでね。そのぉ、こっちがなんか申し訳なくなっちゃうからさ。それはそうと、私もいまどう行動すべきなのかは全くといっていいほど見当がつかないわ。ごめんなさいね。役に立てなくて。」
申し訳なくという表現が最も適する顔でそう答えられたので、碧月は慌てて
「いや、そりゃそうだよね。逆にどうすればいいかわかるんだったら多少は知っている場所のはずだもんね。」
とフォローをいれながらもまたどうしようかと思案を巡らせ始めた。
そこについさっき門の前で話をした門番のおっさんがやって来た。
「おい、お前らこの王国の金を持っているのか?もし、持っていないなら金利4%で貸してやってもいいぞ」
金貸しの金利の相場は分からないがどうせ今のままじゃ貸してももらえなさそうなのでありがたく申し出を受けようと思い琴音の方を見るとうなずき返してくれたので
「本当にありがとうございます。一応、返済期限を教えてもらえませんか?」
そう、ここが肝心なのだ。無理な返済期限だと借金は2倍にも3倍にも膨れ上がってしまう。だから契約云々にかかわらずこういう決め事はしっかりしておかなければならないと俺は思っている。
「うん?あぁ、それは心配しなくていいぜ。この王都にいる限りはいつまででも待ってやるから、逃げたりはするなよ! ははっ!!」
ふーーと一息吐いてから
「ではなるべく早く返せるように頑張ります!それでいくら貸してもらえるのでしょうか?」
「そうだなーー。二人で300シアでどうだ?」
えーーっとさっき見た限りだと1シア=1000円ってところだから30万円か・・・
「では、それでお願いします。」
「おうよ!まあ、せいぜい頑張れよ!」
お金を即金で渡してくれた後、最後にエールを送って街の方へと行ってしまった……
「琴音、半月くらいで返せるように計画を立てよう!」
「ちょっと楽観的な気もするけど、とにかく頑張ろうね、碧月!!」
大丈夫、希望は繋がっている!そう思いながら自分を鼓舞してまずは安い宿屋を探しに街へくり出したのだった。
このとき、二人は宿屋に無事到着できると何も疑ってなどいなかったのだった……
誤字等がありましたら知らせてくれるとありがたいです。