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66話『文化祭2日目』

  今日で文化祭は終わりだ。

  昨日は麻那辺さんという彼女が出来た。1番濃い1日を過ごした気がする。

  そして2日目は麻那辺と回る約束までしている。


  見回りの時間になった。長嶺さんと一緒に回るのはちょっと気まずい。

  でも長嶺さんからお願いされてるのでなんも出来ない。だから気にしない振りをして行くことしか僕にはできない。

 

「相澤〜、今日も学校側やからしっかり見て回ろうや」

「わかったよ」


 長嶺さんの目、腫れてたな昨日は泣かせてしまったみたいだ。それでも僕と距離も置かず、いつも通りに接してくれる。ほんと長嶺さんには頭が上がらないな。

 僕もなるべく振れないでいつも通りを心掛けて頑張ろう。

 それから見回りは昨日よりも人が多く、沢山のトラブル解決をした。迷子も多かったし、クレーマーなどもいて大変な時間帯だった。


 そして見回りも終わりの時間となり麻那辺さんのところに行こうと思ったら長嶺さんに呼び止められた。


「ねぇ相澤、ちょっといい?」

「うん、いいよ」


 それから校舎裏に行き、長嶺さんからの話を待つ。

 長嶺さんは口を開いては閉じ開いては閉じを繰り返してる。それから少しして覚悟を決めたのか口を開いた。


「麻那辺さんを彼女にしたんだよね?」


 長嶺さんから聞かれるとは思わなかった。てっきりそのままうやむやで終わってしまうのかと思っていた。だけど長嶺さんは聞くことを選んだ見たいだ。

 なら・・・。


「はい、しました」


 僕も真剣に答えよう。


「そっか、まぁ薄々ウチは選ばれないんじゃないかって、思ってたんだけどな、でもウチは相澤の事が本気で好きになってたんやなって思ったらすごく悔しくて昨日は泣いてしもうたわ、この半年を無駄に過ごしたとは思っとらん、むしろ楽しかった。相澤、麻那辺さんと一緒に遊んだり、じゃれたりするのは楽しかったんや、だからウチはこれからも相澤や麻那辺さんと友達でいたいから、まだ吹っ切れてはいないけど、でもあの楽しかった時間までは無くしたくないんや、これからもウチと友達でいてくれへんか?」


  僕も今のを聞いて泣きそうになった。僕もあの3人で遊んでた時間はとても楽しかった。これからも長嶺さんとも友達でいられるのは嬉しかった。こっちから友達でいてくれなんては言えなかった。でも長嶺さんからそう言ってくれて、僕もそれを望んでいる。すごく嬉しかった。


「はい、もちろんですよ、これからも友達でいてください」

「ありがとう、麻那辺さんを泣かすのはダメだからな、ウチが許さんよ、それと・・・おめでとう」

「ああ、頑張るよ、ありがとう」


 長嶺さんは僕が言ったのに満足したのかひとつ頷いてそのまま先に教室に戻ってった。

 僕もそれに続いて教室に向かう。


 教室に戻ると麻那辺は受け付けの仕事をやっていた。結構人気みたいでそこその行列が出来ている。

 そこへ長嶺さんが行き少し話してこっちに指さしてから麻那辺さんを送り出した。

 麻那辺さんはそこに僕を見つけると長嶺さんにお辞儀してからこっちに向かって走ってきた。


「お待たせ〜」

「お疲れ様」

「じゃあ行こう」


 麻那辺さんに言われ、文化祭を回る。

 昨日は外を中心に回っていたから今日は中をメインで回る。


「ねぇねぇお昼食べた?」

「食べてないですよ」

「じゃあどこかのお店に入って食べようか」

 

 そして僕と麻那辺さんは校舎を歩き回り、たこ焼き喫茶に入ることにした。

 たこ焼きと喫茶店を混ぜるとは斬新だ。


「美味しい〜」


 僕はたこ焼きと珈琲、麻那辺はたこ焼きに紅茶だ。


「美味しいですね」

「こっちの明太子味もなかなか美味しいよー、食べさせてあげる!あーん」

「なっ!」


 あーんだと、恥ずかしすぎるよ、他にも人いるんですけど。


「相澤君早く、恥ずかしいよ」


 ええーい、お互い恥ずかしいんだから仕方ない。


「あ、あーん」

「どう?どう?」

「美味しいです」

「だよね!」


 麻那辺も恥ずかしかったみたいで耳まで真っ赤だ。

 それから少し休憩してから、自分たちのクラスを参加者側で楽しもうと決め、クラスに行く。


 クラスはさっきよりも空いていたので並んで入る。

 受け付けにいたのは長嶺さんで僕達を見るとニヤニヤしている。

 そして教室の中めがけてカップル1組入りマースと言っている。

 そして教室に入ると前日の準備で入った時と同じ風景が見えてくる。でも隣にいるのは麻那辺なのでまた違った楽しみがある。

 僕と麻那辺さんは迷路の構図がわかってるので、行き止まりはなるべく行くことにした。


「なんだろね、準備してた時よりワクワクするよ」

「ですね、楽しみです」


 そして行き止まりに着いたので、麻那辺さんにそこにあるお題箱の中から1枚抜く。

 内容は『腕を組む』だった。よかった、恥ずかしいお題じゃなくて。


「腕組みだよ、じゃあ・・・えい!」


 麻那辺さんは腕に抱きついてくる。組むじゃない気がするけど・・・それと柔らかいものが当たっててなんともいい気、いやいや何を考えてる!それはダメだ。


「ま、麻那辺さん、行きますか?」

「次に行こう」


 そして麻那辺さんと次の行き止まり目指して歩く。

 右腕が重くなるけど、それと同時に幸せな気持ちも溢れてくるのでなんとも良いものだ。

 次の行き止まりで引いた内容は『ハグ』だった。


「ハグですか」

「だんだん恋人っぽくなってきたよー、ワクワクするね」

「じゃあ失礼して」

「する必要ないけどね、はいぎゅー」


 麻那辺を抱きしめようとしてたら思いっきり抱きつかれた。もう幸せ、死んじゃう!そして可愛い!


「むふふ、今まで出来なかったことが出来るのはやっぱり楽しい!」

「よかったですね」

「あれー?相澤君はあんまり乗り気じゃない?」

「いえ、幸せですよ、楽しいです、ただ恥ずかしすぎて・・・」

「ならよかった、でも次で最後だし頑張って!」


 そして最後の行き止まり、そこには1枚だけ入っていた。なぜ1枚?と思ったがとりあえずそれを開く。

『お互いの名前を呼ぶ』


「えっ!」

「ねぇ玲央君」

「はい!」

「さっきのカップル1組って言うのはね合図なんだよ、私達が来る時にね最後の行き止まりだけこの1枚を残してもらったの」

「ええ!?なんでそんなことを?」

「だって私は学年の中では有名人だもん、玲央君に迷惑がかかると思ってたし、だから私はみんなに話して協力してもらった、これはその1つ、玲央君、名前呼びお願いしても、たまにしかしてくれな気がしたから、だからもう命令にしてしまえってね」


 あー麻那辺さん・・・いや愛花はここまで考えてたのか、それを長嶺さんも知ってて、凄いなぁ・・・


「あ、愛花・・・」

「玲央君」

「愛花・・・これでいいですかね?」

「ここを出てからもちゃんと愛花って呼んでね、隠したりしないでね、私達は堂々と恋人としてやって行こうね!」

「わかったよ、愛花」

「じゃあ行こっか、お客さん待たせちゃってるし」

「分かりました」


 それから教室を出ると受け付け側にいた長嶺さんから親指を立てられた。

 それ対して僕は手を挙げて応える。その流れで僕と愛花は出口担当のクラスメイトと交換して愛花と残りの時間の作業を担当する。

 それから1時間して文化祭も終わりを迎えた。


 終わった後の片付けは一瞬で終わった。パネル運びが大変なだけで他はそのままゴミ袋行きだ。

 そして文化祭が終わったあとは後夜祭だ。

 校庭の真ん中にキャンプファイアがありそこでフォークダンスをするのが毎年恒例だ。

 今年は愛花と一緒に踊れるから僕達は参加組に入る。

 本当はこのタイミングで告白の返事をする予定だったけど、1日早かったので後夜祭には参加だ。


 「玲央君、一緒に踊ろ!」

 「はい、喜んで」


 そして踊りの輪の中に入りぎこちないながらも2人で踊っていく。

 とても楽しい時間を過ごせたと思う。

 後夜祭も終わり、解散の流れとなったので僕と愛花は手を繋ぎそのまま帰宅する。

 帰る場所が同じなのでなんとも妙な感覚がある。

 これからは毎日こうやって並んで行き帰りが出来るとなると嬉しいものだ。


 「愛花」

 「なに?」

 「楽しかった」

 「そうだね、私も楽しかったよ、でもこれからも楽しいことはあるからね、一緒に楽しもうね!」


 愛花が笑ってそう言った。その顔を見るのが僕にとってはとても幸せなことだと思う。

 この顔を崩さないようにこれから頑張ろう。

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