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おともだち

「なーんかさー」

「ん?」

「本っ当にエミル、あいつが気に入ってたんだなって」

「まあ、そうだな。あの様子じゃな」

 オフィスの衝立に隠れるようにして、アデルと、そして昨年の暮れに彼の同僚となったダンが、こそこそと話していた。

「伸びてきたわね、髪」

「そ、そうですか?」

「前のサイドパート(七三分け)も悪くなかったけど、あなたの顔なら、髪がもうちょっと長い方が似合ってるわよ」

「あ、ありがとうございます。で、でも」

「どうしたの?」

「何と言うか、その、目の端に映るようになったって言うか、あの、うっとうしいなって言うか、そんな気もするので、あの、切ろうかどうしようかって」

「あら、勿体無いわよ。あたしがまとめたげるから、そのまま伸ばしなさいな」

 二人の様子を衝立の間からチラチラと眺めながら、アデルたちはあれこれと邪推する。

「サムとは何度か仕事してたんだろ? 前からあんな感じで、姐さんと仲良かったのか?」

「そう言やそうだな。あいつの方も、俺やロバートとはあんまり積極的に話さなかったけど、エミルとはちょくちょく絡んでるし」

「相思相愛ってか?」

「な、何だよそれ? 女同士だぜ?」

「有り得ん話でもないだろ」

「あってたまるか。ってか前も『サムはミラー元局長の……』だの何だのって言ってたよな。そう言うのが好きなのか、お前ら」

「面白いだろ? そう言う話の方が」

「俺には分からん……」

 と、衝立からトントン、とノックの音が響く。

 アデルが振り返ると、衝立の上から顔を出していたエミルと目が合った。

「あっ」

「あっ、じゃないわよ。何話してんのよ」

「いや、その」

 たじろぐアデルを薄くにらみながら、エミルは刺々しい口調で続ける。

「なんならマジで、サムにキスして来よっか?

 その後であんたたちには、あたしのスコフィールドとキスしてもらうけど。喉まで突っ込むがっつりディープなやつよ」

「……すまん」「俺が悪かった」

 アデルとダンが揃って頭を下げたところで、エミルはくる、と背を向ける。

「悪いと思ってるなら、『ランクス&アレックス』のキャラメルクランチドーナツ、オフィスにいる人数分買って来なさいよ。揚げたてで。

 あたしはコーヒー淹れてくるから、その間によろしく」

「おう」

 アデルたちがそそくさとオフィスを出たところで、エミルはサムに声をかける。

「そんなわけだから、あんたも手伝ってちょうだい」

「あっ、は、はい」

 サムはガタガタと音を立てながら机を離れ、辺りを見回す。

「え、と……、あれ?」

「どうしたの?」

 そう尋ねながら、エミルもオフィス内を一瞥し、「ああ」と声を上げる。

「局長なら留守よ。『おともだち』とDCで会食ですって」

「ワシントンに?」

「ええ。『もうじき代替わりだからいい加減、彼の栄光と幸運を祝いに行く』とか何とか言ってたわね」

「代替わりって、……えっ、ま、まさか、それって?」

 目を丸くするサムに、エミルはいたずらっぽく笑って返す。

「ま、本当の目的は他にあるんでしょうけどね」

「え?」

 一転、エミルは真面目な顔になる。

「探りに行ったのよ、政府筋を。

 ほら、前にも話したでしょ? 司法省に組織の手が伸びてるんじゃないか、って」

「え、ええ」

「ま、現時点では局長も、『本当に司法省が掌握されているか、私にも確証は無い』って言ってたけど、懸念はしてたみたいよ。

 あたしたちがその話をしてから局長、大きなところにあっちこっち、顔を出してるみたいだから」

「大きなところ?」

「この周りだと、W&B鉄道とか大西洋交易銀行とか。後はD州の連邦信託とか、P州の東海岸製造とかね」

「大丈夫なんですか? 組織が、その、活発化してると聞きましたけど……」

 そう尋ねたサムに、エミルは憂鬱そうな顔を向ける。

「一応、腕利きって自慢してるのを何人かボディガードに付けてるって言ってたけど、それでもこんなにしょっちゅう出歩いてたら、不安になってくるわね。

 と言っても、今更あたしたちがDC行ったってどうしようもないし、無事に帰って来るのを待つしか無いわね」

「はあ……はい」

 エミルの言葉に、サムはただひたすら、戸惑った顔をするばかりだった。

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