モブ達は笑う
【学園の中庭にて】
「まあ、ご覧になって。ベンチに腰掛けてる、あの二人またご一緒ですわ」
「あら? 確か侯爵子息のラクシス・クロート様と薔薇姫レイア様ではなくて?」
「薔薇姫って近頃、女神様だとか妖精だとか男子生徒たちに騒がれている。あのレイア様ですの?確かレイア様ってラクシス様の婚約者のダナエ・アトロポス様の妹よね」
「えっ? ダナエ様に妹っていらしたの? 私お茶会でお会いしたこと無いですわ。デビュタント(社交界で初めてお披露目する事)の時もいらしてたかしら?」
「何でも、お身体が弱くてやっと学園に通える様になったみたいですわ。デビュタントもしていないはずですわ」
「まあ。そんなにお身体が悪いのなら、アトロポス家はどなたが継ぐんですの? 姉のダナエ様はクロトー家に嫁がれるのでしょう?」
「何でもレイア様が継ぐそうだけれど。お身体が弱いのよね~。多分従兄弟のラオネ様が継ぐことになると思うわ」
「その方。婚約者がいらっしゃるの?」
「いらっしやるわ。商人の娘さんで可愛い方よ」
「残念。あのお二方の従兄弟ならかなりハンサムなんでしょう?」
「ええ。ハンサムよ。真面目な方だからからかっちゃダメよ」
「それにしても、お二人はご家族の付き合いって奴かしら?」
「家族? まるで恋人のようね」
「ダナエ様よりお似合いね」
「そうね。まるで絵のようね」
「あら? あそこにいるのダナエ様ではなくて?」
「まあダナエ様ですわね」
「ご覧になりまして……」
「ええ……」
「泣いていましたわね」
「……」
「……」
【学園の食堂にて】
「あら、あの二人またご一緒にお食事されていてよ」
「私……婚約者のダナエ様がクラシス様とご一緒にお食事されてるの見たことないわ」
「まあ奇遇ですわね。私も見たことありませんわ」
「まるでレイア様がクラシス様の婚約者のようね」
「あら? ダナエ様だわ」
「直ぐに出られましたわね」
「あのお二人にお声をおかけになりませんでしたわね」
「喧嘩でもなされたのかしら?」
「避けてらっしゃるのね」
「さて私達も出ましょう」
「そうね」
「ダナエ様はまた裏庭の池の所にいらっしゃるのかしら?」
「一人にしない方がよろしくてよ」
「ええ。行きましょう」
【舞踏会にて】
「まあ。ご覧になって。レイア様よ。彼女がパーティーに出席してるの初めて見ましたわ」
「それに隣にいるのラクシス様とアトロポス伯爵と夫人ではなくて?」
「? ダナエ様は? いらっしゃらないの?」
「私、ちょっと挨拶して来ますわ」
「私もご一緒に行ってもいいかしら? ダナエ様の事が気になりますわ」
「ええ。いいわ」
「御機嫌よう。アトロポス伯爵。よいパーティーですわね。ラクシス様もご機嫌よう」
「やあ。ミリーもご機嫌よう」
「ダナエ様はどうしましたの?」
「ああ。彼女は体調が悪くてね。代わりにレイアが、私の相手をしてくれたんだよ」
「まあ。そうですの?レイア様素敵なドレスですのね」
「これは、ラクシス様がプレゼントしてくださったんです」
「まあ。ご姉妹にドレスをプレゼントするなんて!! 流石侯爵家は太っ腹ですわね。ダナエ様も優しい婚約者を持って鼻高々ですわね」
「あ……いえ……ドレスは私だけに頂いたので……お姉様には何も……」
「ああ。後でウェディングドレスの生地を送られるのね。学園を卒業と同時にご結婚でしたわね。ラクシス様私も又従兄弟として式に呼んでくださるんでしょう」
「あ……ああ。勿論さ。ぜひ来てくれ」
「楽しみだわ。ダナエ様は刺繡が得意だから素晴らしいウエディングドレスに仕上げるんでしょうね。あら? 婚約者が呼んでいますわ。それでは、皆様ご機嫌よう」
【舞踏会の薔薇庭にて】
「ああ……私達はこんなに愛し合っているのに……貴方は姉の婚約者。なぜ? もっと早く出会わなかったのかしら? 出会っていたら貴方は私を選んでいたわ。私は貴方を愛しているわ。お姉様よりも……」
「私は最低な男だ。婚約者の妹を愛してしまうなんて。レイア君をこんなにも傷つけてしまうなんて……だが、もうこれは決まってしまったこと。王に私とダナエの結婚は認められ。精霊教会でも承諾された。もう手遅れくれなんだ」
「ああ……それなら……二人で駆け落ちしましょう。愛の逃避行よ。グレノス協会なら王や親や教会の許可が無くても結婚出来るわ」
「それはできない。その協会で結婚すると言うことは、平民になるということだ。私には守らなければならない領民がいるんだ。王に対する忠誠もある。すまない。私達は別かれるしかないんだ」
「お願い。別れるなんていわないで。あなたがいないと生きていけないの。あなたが、居ないと死んでしまう」
「レイア……すまない。愛しているよ」
「お姉様さえいなければ……私達は……」
「……」
「……」
「聞きまして?」
「ええ……」
「随分とお熱いことで」
「そうね。二人とも自分に酔っているのね。火遊びは大概にしないと大火傷を負うわ」
【帝都の人気菓子店の二階喫茶コーナーにて】
「待った?」
「いや。今来たところだ」
「四名様ですね。ご注文は何になさいますか?」
「俺たちはコーヒーで」
「私達はケーキセットで、私はチーズケーキで」
「私はモンブランで」
「はい。賜りました」
「ところで新米医者様は忙しいですか?」
「ああ。クラウン様はお医者に成れたんですの!!その若さで凄いです!!!」
「あら。ミリ―様の婚約者様も既に領地経営を手掛けてらっしゃるそうで。凄いですわ」
「あら? あれ……」
「うん。ラクシスにレイアだな」
「ホテルから出てきたわね」
「あそこって、いわゆる連れ込み宿だな」
「人目を気にしなくなったわね」
「馬鹿だな。彼女。もうまともな貰い手はないな」
「ほら。あそこにも、ここにも。お喋りスズメは居るのに」
「わざとかしら? それとも馬鹿なのかしら?」
「劇場型恋愛で自分に酔ってるんだろうね」
【王城のパーティーにて】
「お聞きになりましいて」
「ええ。凄いですわね」
「略奪愛って言うんですの?」
「彼方の国では花盗人って言うんですって。キャー♥」
「彼方の国では、本と花は一番愛しているなら盗んでも良いそうよ。私も誰かに盗まれたいわ♪」
「鳥籠に囚われた花を日の当たる大地に連れ出して、愛を注いでくれるなら。いくらでも盗まれたいですわ」
「おめでとうございます。ダナエ様。うふふふ。幸せになるんですよ。お辛い目に合ったんですから。今度こそ。幸せにしてあげてくださいね。ダモクレス王太子様」
「おめでとうございます。ダナエ様その首飾りダモクレス王太子様からの送り物ですか? 素晴らしいエメラルドですね。」
「エメラルドは割れやすいからなかなかその大きさの物は手にはいらないですものね。流石帝国の国宝」
「ほうっ。エメラルドの周りのダイヤも素晴らしいですわ」
「国宝を送られるなんて愛されていらっしゃるのね」
「えっ? 国宝より皇太子様みずから探してくれた四つ葉のグローバが、一番の宝物ですか?」
「なんて謙虚なのかしらふふふ。流石わが国の真珠姫と言われる美姫ですわ」
「薔薇は枯れてしまうけど、真珠の美しさは永遠ですわね」
「ダナエ様、ダモクレス様とお幸せに」
「ご婚約おめでとうございます」
「ご婚約おめでとうございます」
「お幸せになってください」
「皆お姉様の事ばかりね」
「……」
「何で? 私達も結婚するのに……誰もお祝いの言葉は無いの?」
「……」
「おい。聞いたか?クロート侯爵子息とレイア嬢が結婚するんだってさ」
「ああ。しかしクロート侯爵子息も馬鹿だよな。」
「大物逃がして雑魚で我慢するなんて(笑)」
「本当は俺ダナエ嬢に惚れてたんだよな~」
「なんだ、お前もか。ダナエ嬢は、俺の初恋の人なんだ。」
「侯爵の婚約者だから諦めたけど、最後にラブレター書こうかな~」
「貴女の事が好きでしたってか? 止めとけ。ダモクレス皇太子に睨まれるぞ」
「ドラゴン(ダモクレス)に金の羊を かっさらわれたな~」
「ダモクレス皇太子も上手くやったな~」
「しかしラクシスも馬鹿だよな~俺なら絶対彼女の手を離さないがな~」
「薔薇姫だとか妖精だとか女神様だとか言われていたけど。婚約者のいる男に言い寄って、しかも姉の婚約者だぜ~。一皮むけばただの阿婆擦れか……がっかりだよな~。二人がホテルから出てきたの俺も見ていたけど。身体が弱いんじゃなくて頭が弱かったんだな。外に出せないはずだ」
「見ろよ。彼女幸せそうに笑ってる」
「彼女。あんな風に笑えたんだ。綺麗だな。好きな男の側で幸せそうだ」
「ちきしょう~!!我が国の真珠が~!! 今夜は飲むぞ!!」
「よし!! 俺も付き合うぜ!!」
「ちきしょう~!! 俺も混ぜてくれ!! レイア嬢とラクシスが引っ付けば彼女が手に入ると思ってあおってたのに~!!」
「ラクシス様皆が、酷いことを言ってる……誰も私達の事を祝福してくれない。何故なの? 何とかして!! ラクシス様!!」
「すまない。ちょっとミリーに話がある。レイアここにいてくれ」
「あ……ラクシス様……」
「ミリー」
「あら? ラクシス様どうなさったの? 怖い顔をして。折角レイア様と婚約できたのに、そんなお顔では台無しですわよ」
「君の企みか?」
「あら? やだ。貴方はレイア様を愛しているんでしょう。感謝して欲しいわ。薔薇園では熱い抱擁でしたのにもう熱が冷めましたの?」
「見ていたのか!! デガバメ女!!」
「ならば何故? 人目につく所でやっていましたの? 悲劇のヒロインを演じていた阿婆擦れと可哀想な彼女を救えるのは自分だけと思い込んでいる盛りのついた猿は、笑えましてよ。それともダナエ様に当てつけていたのですか? 『私が悪いの?』『一体私はどうすればいいの?』そうおっしゃってダナエ様泣いてらしたわ。だから私言ってあげたの『二人のために身を引きなさい』って『本当の貴方を愛してくれる人の所で幸せになりなさいって』貴方知ってたでしょう。昔からダモクレス王太子がダナエ様の事を好きだって……ダモクレスはダナエの幸せを祈って身を引いた。貴方は婚約者の立場に胡坐をかいてダナエを傷つけた。私ダナエのこともダモクレスもことも好きだから、幸せになって欲しいの」
「私は……私は……俺は……」
「貴方はただ壊すだけ。本当の愛は無い。貴方にレイアはお似合いよ。いつも相手の愛情を確認しないと不安で、誰かに認めてもらわないと自分の存在を認められない。本当に絵に描いたようにお似合いね」
「違う……ち……が……」
「愛する二人を引き裂いても。偽りの愛は破れるのよ」
「ち……がう……俺は……かの……じょ……を……」
「愛してないわ。レイアと一緒に恋愛ごっこで遊んでなさい。お幸せにね」
~ Fin ~
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登場人物
★ ラクシス・クロート 21歳
侯爵子息。ダナエの婚約者。ダナエの妹と浮気する。
★ ダナエ・アトロポス 17歳
伯爵令嬢。ラクシスの婚約者。婚約破棄して隣の国のダモクレス王太子と結婚する。
★ レイア・アトロポス 16歳
伯爵令嬢。ダナエの妹。身体が弱く外に出して貰えなかった。
薔薇姫とか妖精だとか女神様だとかいわれる。ただのビッチ。
★ ダモクレス王太子 22歳
昔からダナエが好きだった。タッチの差でラクシスが婚約する。
ミリーから手紙をもらい王に働きかけてダナエと結婚する。
待ったかいがあった。
★ ミリー・K・ブレイダン 18歳
ダモクレス王太子とは従兄弟。ラクシスとは又従兄弟。
ダモクレス王太子がダナエのことが好きと知ってる。ダナエの近況報告をしていた。
ラクシスの態度に怒り王様を操りダモクレス王太子とダナエの婚約を執り 行う。
ラスボス。怒らせてはいけない。
カシスが婚約者。
★ カシス
ブレイダン家の婿養子の予定。
★ クラウン・アリソン 21歳
ソフィアの婚約者。ほぼモブ。
★ ソフィア・ルール 17歳
ルール男爵令嬢第三子。クラウンの婚約者。モブ。
本当なら名前はなかったんだが、不便なんで付けた。
男爵令嬢(平民になるので)ラクシスやレイアやアトロポス伯爵に無視される。
ちゃんとミリーの後ろにいたよ。
★ グレノス協会
王や教会に認められない駆け落ち組が、唯一結婚出来る協会。
ただし正式なものでは無いから。国の補償や身分は、はく奪され平民となる。
★ この世界には精霊魔法があるので。保存の出来るアイテムポーチや時間停止の宝物庫が
あります。だから真珠も管理と手入れさえしっかりしていれば二・三千年持ちます。
感想で真珠の事が気になる方が多かったので説明付け足しました。
★ エメラルド
エメラルドには恋愛成就・幸せな結婚と浮気封じの意味があります。
まあ浮気の心配は無いだろう。
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2018/5/10 『小説家になろう』 どんC
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最後までお読みいただきありがとうございます。