準備万端!
村の市場に液状鉄を買いに来たシャーサは迷っていた。
買いに来てわかったのだが、なんと液状鉄は一種類だけじゃなく二種類あった。
一つは意図的に作られた人工物、二つ目は鉱山で取れる天然の物だ。
人工物は安いが莫大な魔力を有するが天然の物は少し高いが人工物よりは微量の魔力で作れる。シャーサの魔力は人工物で作っても尽きることのない魔王以上の実力だ。
「う~ん……」
シャーサは迷いに迷って店主オススメの天然の物を買うことにした。
とりあえず、作りたい銃はM4のようなアタッチメントが付けやすく、頑丈で分解安いライフルだ。スコープやバイポッドを作って付けると大体5Kgになるため、1Kgで5000サールするが5.5Kg分買うことにした。
滅多に売れない物が売れてよほど嬉しいのか、ハキハキと大声でお礼を述べてきた。
「ありがとうございました!またのご利用お待ちしてます!」
店主はシャーサが店を出て後ろを振り返ると手を振っていた。
シャーサは微笑みながら手を振った。
「村一番の美人の天使が買いに来てくれた……自慢話になるぞ!」
シャーサには聞こえなかったが、店主はニヤニヤしながら店に戻った。
さて、シャーサは「これで銃が作れる!」とワクワクしていた。しかしスコープを作るにはガラスレンズが必要だと思いガラス屋に行こうとしたが、家にある使われていない水晶で作ろうと考え、早足で家に帰った。
帰るなり、家族に見せて部屋の隅っこに液状鉄の入ったワイン樽を置いた。
今日の晩御飯は一角鹿の肉で作ったハンバーグであったが、早く銃を作りたいと思い早口でバクバクと食べに食べまくった。その為、せっかく血抜きから生臭さをハーブで取ったりの手間の掛かった家ではあまり出ないジビエ料理の味なんて覚えていない。後悔はしそうだが銃が作れるとウキウキしている為、今のところ後悔はしていないようだ。
「まずは、試しに何かキーホルダーを作ろうかな」
シャーサは自室の隅っこに置いた液状鉄の入ったワイン樽に手を突っ込み、マニアックだがアメリカの『CHEY-TAC』と言う銃器メーカーが開発したDSR-1と言う1500M以上と言う驚きのロングレンジでのスナイプが出来るSF映画に出てきそうな外観の大口径スナイパーライフルに使われる#.408CHEY-TAC弾__カートリッジ__#を想像した。
すると、魔力を発している手にわずかに温かい物の感触が生まれた。軽く握ると、弾のような形状が出来た。
液状鉄の樽から想像した弾を握っている手を引き出し、ちゃんと出来ているかと恐る恐る広げてみると、先端は銅の輝きで中間から後方にかけては金のように輝やいていた。実験は成功で弾らしい弾が出来たのだ。
「やった!!想像通りに全然魔力を込めずに作れるじゃないか♪」
実は並大抵の魔導師でもヘトヘトになる作業なのだが、シャーサはやすやすとやってのけた。
さて実験で作った弾だが、本来なら後方の尻の部分には雷管と呼ばれるところがあるが、今回は撃つためではなくキーホルダーとして作った為か紐を通しやすそうな小さなリングが付けてあった。
「これでM4を作れるぅぅ!!」
シャーサはベッドに飛び込んだ。
明日からは地道にM4を作ろうと思っていたら、重たい荷物を持って帰って来たシャーサはいつの間にか寝てしまった。
……、………、……………
ドアを少し開けて、こっそり母親は我が子は一体何を作るのかワクワクしながら見ていた。
その後ろには、村長でもある父親もいた。
「おい、何を作っているだろうか」
小声で父親は子供以上の好奇心で我が子を見守る母親に尋ねた。
「そうね~…多分矢じりだと思うわ♪」
父親の質問に小声ながらも、いつも通りの口調で答えた。
「矢じりだとしても、あんな形をしないだろう……ひょっとして失敗か?」
父親は不安そうに我が子を見つめた。
しかしシャーサは「ちゃんと作れた」と言ったので、隠れながら覗いていた二人は見つめ合い、小声で話し合った。
「あれで完成なのか?」
「そうみたいね~♪でも、弓矢を作っている気がしないわ~…」
二人は考えたがわからないので、深くは考えなかった。
そして二人は談笑しながら、おつまみのチーズを食べ寝付け酒を一杯ではなく一瓶飲んで、二人の部屋に戻りベッドインするとなにもせずに朝まで寝た。