銃を作ろうかと相談してみた
シチューを食べ、シャーサは食器をお母さんと嫁修行の一環として一緒に洗い、片付けをしていた。
「う~ん……」
シャーサはあることで迷っていたため唸った。
実はそろそろ成人となる彼女は『冒険』に出るのだが、木材や金属、魔石を使って、弓使いや魔導師の英雄が多いエルフ族の成人を迎えた子供達、は弓矢や魔法杖を自分に合わせて作るのだが、彼女は前世ではミリオタのサバゲーマーの男子高校生だったため、『ライフル』と『ハンドガン』を作る予定なのだ。この世界では金属は二種類ある。
一つは手間は掛かるがナイフや防具を製作しやすい『鉄板』だ。しかし、二つ目は安いが賢者レベル以上の魔法を使えないと液体のままの使えない『液状鉄』だ。
液状鉄で製作を試みた者はいても出来た者は誰一人いない。
銃を作るには鉄板からがいいが、銃を作るため機械や工具が無いため鉄板からでは作れない。そうなると魔力を少しずつ使い思い通りの形になる後者の液状鉄しかないわけだ。
「どうしたの~?」
彼女のお母さんが何かで迷っている我が子に話し掛けてきた。
「うん?実はね………」
彼女は食器洗いを終え、お母さんに液状鉄から武器を作りたいことを伝えた。
しかし、武器と言っても『銃』と言うことは伏せて相談した。
「いいんじゃない?」
予想外のお母さんの発言にシャーサは気の抜けた声が漏れた。
「へ?」
シャーサは前世では、「あれしろ、これしろ」と言われることはあっても、自分から「これしたい」と言ったら拒否され、「これはこうしたらいいんじゃない?」とちょっとしたアドバイスさえも拒否されてきた。
そのため、こっちでも意見やアドバイスは拒否されると思っていたが、あっさり了承されてビックリした。
「安いしやるだけやってみたら?」
「う、うん」
「あなたなら大丈夫よ♪私達より遥かに凄い魔力があるからきっと大丈夫よ♪」
村で魔力1位2位を争うお父さんやお母さんより魔力があるシャーサは、村の自慢でもあったが、液状鉄で銃を作れるのか不安だったため相談して「良かった」っと思った。
「だから好きなようにしなさい♪」
お母さんはそう言うと「さてさて、洗濯するわよ~♪」と話題を変え、洗濯の準備をしていた。シャーサも手伝い、準備をした。
家にはこの世界には存在しないはずの『洗濯機』がある。発案者はシャーサのお父さんである。実はお父さんは物を作る(無論鉄板から作る)のが好きで、お母さんが楽できるようにと、洗濯機以外にも『冷蔵庫』や『掃除機』、『バスタブ』や『シャワー』などっと言った、魔石を使った最新鋭家電を作ったのだ。
お父さんは「何事もしないことには始まらない」っと言って、シャーサや妹には何事にもチャレンジしてもらうことを望んでいた。
もちろんお母さんもその教育精神に賛成で、それに乗っ取ってシャーサの今回の相談を了承した。
「洗濯機に洗濯物入れてあるからあとよろしく~♪」
お母さんはそう言うと、40℃のいい感じの温かさのお湯の張ったバスタブに入りにいった。
シャーサは洗濯剤、柔軟剤を入れて、蓋を閉めてスイッチを入れた。
洗濯機は魔石を使っているため「ウォンウォン」言わず、ほとんど無音に近い状態で小刻みするくらいだ。
魔石は属性ごとに反発しあったり、引っ付いたりと様々だ。
例えば『火』と『水』は反発しあい、『お湯』となる。この反発を使い、バスタブはお父さんによって作られた。
魔石は属性ごとに一つあるため、加工しやすく需要が高い。しかし、魔石は色んなところから採れるため比較的安いのだ。
その頃、晩御飯を食べ終えたお父さんは業務用サイズの冷蔵庫からキンキンに冷えたビール樽から一杯分をジョッキに注ぎ、飲んでいた。
「さて、これを飲んだら行くか……」
この村では朝と夜に別れて村の近くの警備を行う。
警備をしないとスライムで村中がベトベトしたりオークに子供が拐われたり、古代火竜により村が破壊されたりする。
そのため、愛する者を守るために村の成人した男達は警備に就く。
警備をしている甲斐あって、モンスターはほとんど来ない。
「もう一杯飲みたいが警備を薄める訳にはいかん」
そう言うとビールを飲み干し、エルフの武器では珍しい『大剣』を担ぎ、村と愛する妻や子供達を守るため家を出て行った。