異世界転生しちゃった
3
『5:00』
僕は確かに十字路の交差点にてたまたま会社からの電話でスマホを弄っていた最近やっと初心者マークが取れた20代の真面目な男に引かれたはずだった……
引いた男は慌ててやっとローンを払い終えた黒の中古軽自動車のブレーキを踏んだが止まらず、慣性の法則が働き、急ブレーキは『無』に等しいことになり、僕を跳ねた。
えっ、それだけじゃ死なないって?実は続きがある。
跳ねられた僕は、青信号で混雑していなかったからちょっとスピード出しすぎていた最近こっちに越して来た40代の大阪出身のBBAの運転するキャラバンに跳ねられた。
つまり、人生初の交通事故は二度引かれ、ボロ雑巾化したのだ……
そんな安売りのミンチになりかけた僕は、見知らぬ変な部屋にいた。
どこが『変』なのかと言うと、5m×5m正方形の真っ白な部屋なのだ。ただそれだけでは変ではない。
ソファーや人をダメにするビーンズソファー、テーブルなど家具や良く読む小説の棚がないのだ。ただ何も置いてない訳ではない。
コンセントのないはずの唯一この奇妙な部屋に設置してあるテレビの様なものだけなのだ……
そんなテレビには大きく『5:00』と言う、何かしらのカウントが写っていた。肉片になっていておかしくないのに生きていた僕は一様驚きはしたが「夢」だと思い込むことにした。
そんなことはさておいて、何もない真っ白な部屋に唯一置いてあった不思議なテレビを触った。
すると、『4:59』『4:58』、『4:57』へと何かしらのカウントダウンが始まった。
テレビに写し出されていた『5:00』は『5分』だったらしい……
「えっ、どうしよう……」
僕はこの部屋に着いて初めて言葉を発した。
これはあれなのかな?
『夢』じゃなくて『現実』なのか?
だとしたら死んだはずの僕はどうなるんだ、ひょっとして「虫」に転生させられるのか?
「それだけは嫌だぁぁぁぁ!!」
うずくまったり行ったり来たりして、どうにか落ち着こうとオロオロしていたらあっという間に『0:05』になっていた!
「いくらなんでも早い!!」
最後に日本人として、そう『日本語』で言った言葉はそうなった……
……、………、……………
「オギャア、オギャア」
とある村で元気な赤ちゃんの産声が響いた。
赤ちゃんを産んだ母親はこの村の村長の嫁さんだ。最近隣村から嫁いで来たのだ。助産婦ともども金髪で耳が横に長く、青色の引き込まれそうな目をしていた。
そう、この村はエルフによるエルフの為の村であった。
その為、エルフ族やダークエルフ族とは関係無く仲良く支え合って暮らしていた。皆に平等な村に新しい命が生まれたことは、村人達にとって嬉しかった。
何より村長の子供となると嬉しかろう。
村長の嫁さんの出産に付き添っていた助産婦は生まれてきた子供を抱き抱えると、我が子をなんとしても産もうと必死になっていた『お母さん』に渡した。
「よく頑張られました!お疲れ様でした!」
「ふぅ、あっ、ありがとう…はぁ、生まれてきてくれてありがとう♪」
新しく母親になったシンク・ベダー・アリスは我が子にそう弱々しくも歓喜に満ちた言葉を小声で言った。
助産婦は後片付けなどをあっという間にすると、すたすたと何も言わずに帰った。
さて、元気に生まれてきた子供は女の子だったがすくすくと成長し、1年が経ち、1歳の誕生日が来た。
女の子は自分の部屋に閉じ籠って、何か呟いていた…
「えっと、確か死んだよね?」
そう、彼女はテレビ以外に何も無い不思議な真っ白な部屋からやって来たのだ。そして、1歳にして、日本で言う『5教科』を高校生で習うことをある程度覚えていた。しかしそれだけではなく、『平均』や『銃』などの『ミリタリー』と言うことも覚えていた。
つまり『#土宮 雄太__つちみや ゆうた__#』は人間ではないがエルフとして、この『異世界』と呼ばれる土宮の前世の世界と平行して存在している世界で生きることになった。
土宮はその小さな可愛いらしい手で股を触った。
「やっぱり無い……」
何故か悲しくなってきたが、そう言いながらへなへなと床に崩れ落ちた。幸い彼1人の為、変な心配はされなかった。
「でも、こんにゃすがたでにゃにをしたら…」
そう、土宮はエルフの『女の子』なのだ。
しばらく考えたがどうしようと思うのであった。
確かに前世の世界から抜け出したいと思っていたが、本当に抜け出すことになったが、なんで『性転換』しないといけなかったのか?
そう考えたが「まぁ、虫になるよりはましだが、何か違う…」と思った。