死ぬなんて
「あんた!またゲームばっかして!!」
母の大きな大きな耳の痛い怒声が聞こえた。
「うるさい、今いいとこ!」
そうなのだ。
現在進行形でFPSゲームのオンライン対戦をしていて、あと五人倒せば終わりなのだ。それなのに母はそこにノコノコ出て来て、怒鳴るのだ。学校で先生の教え方がわからなくてイライラしたり友達とかの人付き合いでのストレス等でへとへとな学生にとって、ゲームはいい息抜きなのだ。サバゲーマーなら尚更だ。それなのに、サバゲーに18歳以下ならフィールド指定の同意書を書いてもらえば行けるのに書いてもくれず、「サバゲー行きたいサバゲー行きたい」とサバゲー中毒者特有の『サバゲー行けない』禁断症状が出て来るのだ。それを抑える方法がFPSゲームなのだ。
それなのに、母は「宿題しろ」や「予習復習しろ」とか言って来るのだ。こっちはストレスが堪りに堪っているんだ!
本当に、リアルは面白くない……
いっそ、ゲームにでも行って現代兵器を作って暮らすか?
まぁっ、そんなこと出来たらとっくにしてるけどね………
とりあえず、母が「あーだ」「こーだ」を聞き流し、考えていた内に五人倒されていた。
タイムアップ前に仲間が勝って、僕のスコアは『8デッド 23キル 援護7』だった。そりゃそうだよね、『砂』っていたんだから……
「スナイパー」ってのは偵察や監視をしたりとするが、FPSゲームでは唯一遠距離狙撃しやすいライフルを持つことが出来る。サバゲーでも同じだと思うけど……
あえてしやすいにした理由は二点ある。
まず一点目はどの銃もしようと思えば出来る。例えアイアンサイトでも遠距離狙撃は可能なのだ。
二点目は、操作する人間の経験や勘にもよることだ。
そのことから、「出来る」ではなく「しやすい」と思ったのだ。
そんなことは捨て置いて、そろそろ母がうるさいしやめるか……
どうせ明日も学校だし……………
「ほら、終わった!文句無いだろ!!」
そう言うと僕はイライラしながらも自分の部屋へと帰った。
父親は今は、絶賛単身赴任中なのだ。その為、叱られるのもいつもの半分で済む。これはありがたい。
しかし、サバゲーに行けない…
そんな話は捨て置いて、僕はこの世界に飽きた。
よくアニメや漫画とかでは異世界転移とかしてるが、あんな風に僕も異世界に行きたい。いや、行かせてください。
もう、サバゲーが何ヵ月に一回なんて耐えられない!
あぁぁ、神様!どうか私を異世界に行かせてください!!
「はぁ~~~…」
もう、神様に頼んででも異世界に行きたいと思いつつ、宿題をせずに寝た。
…、………、………………
カーテンの開いたちょっとした隙間から朝日が入り込み、眩しい……
「はいはい、今起きますよ……」
二度寝したくても、どうせ嫌々起きるなら一回がいい。
どうせ、このくだらないロクでもない世界での日常が始まるのだから。
僕はリビングに行き、一人でココアとバタートーストの朝食を食べ、身支度をし、寝間着から学生の軍服へと着替えた。
さて、あとは弁当だが面倒くさいから今日は作らずに学校の売店で1日三個の限定カレーパンとクリームパン二個を買うことにした。
どこの高校でも人気なカレーパンが1日三個しかないかと言うと、近くのカレーの本場『インド』出身のオーナーが営むちょっと有名なカレー屋さんから取り寄せているカレーパンなのだ。オーナーがナンじゃないため渋々作っているから1日三個の限定だと言う噂がある。
そんな感じでカレーパンが楽しみになっていたが、予知能力がない僕は知らなかった。
僕がいつも通り自転車での登校中に『死ぬ』なんて……