真実11
「私は女神。この場では戦いはしません。ですが、お兄ちゃん。頑張って」
「ありがとう。リリィ。頑張るさ」
リリィに返事を返す。リリィは私達より下がって見守るようだ。
さぁ、行こうか!
開幕はヴェルディの咆哮から始まる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「グァッ!」
「グッ!」
「キャッ!」
「くっ!」
「うっ!」
誰もがその咆哮に、圧に耳を塞ぎ、身体が固まる。
――死。
一瞬、そう思ってしまった。勝てない。こんな強大な相手に勝てるわけがない、と。
だけど、歯を食いしばって全身に魔闘気を纏った。身体を縛っていた圧が消え去る。
周りの皆も動き始めていた。
「我、召喚せし衝裂に恐れ戦慄せよ。敵対する者に逃れる術は無し――」
エリカから膨大な魔力が迸った。そして、詠唱は完成する。
「――流星雨!!」
ヴェルディの上空から魔方陣がいくつも展開する。
圧倒的な量の岩石が、流星の如くヴェルディを襲った。
(グアアアアアアア! 神級魔法だと!?)
流星の如く降り注ぐ岩石の雨は、ヴェルディを圧殺しようとする。
――だが、それでもヴェルディは倒れない。
両翼は折れ、身体から血を流しつつも耐えていた。
「それなら、私が! 我、願う。相対す者よ。我の封印の中で安らかに眠れ。永遠に――」
エリナも膨大な魔力で詠唱を開始し、発動する。
「――天上の光雨!!」
同じく。ヴェルディの上空に魔方陣が何十にも展開され、そこから光が発射される。
ヴェルディの体に触れた光は、その鱗を焦がしながら浄化しようとする。
(また、神級魔法だとおおおおおおおおおおおお!!)
二つの神級魔法を受けたヴェルディは倒れた。だが、その目の闘志は未だ燃えている。
(まだだ。まだ終わらんぞ!)
ヴェルディの体を覆う程の魔方陣が展開される。
「……ッ! これ以上があるのか!?」
「なにか来るかもしれない! みんな気を付けて!」
「ああ、俺に任せろ。大丈夫さ」
「私にも任せてください」
ヴェルディの体が光り輝く。その閃光に目が見えなくなる。
そして、光から出てきたのは、翼の生えた百八十センチの男性。血を流しながらもこちらをみている。
「これじゃあ、大規模な魔法は使えないわね」
「そうですね。出来て、上級が限界でしょう。それも、誰かを巻き込んでしまうかもしれない」
エリカとエリナがそう、話している。
「ってことは――」
「――俺達の出番ってこった!」
アレンと私がヴェルディに向かっていく。
5間の距離にて、炎を発動。連にて足に魔力を込めて、飛び掛かる。
上段での右袈裟。それを、ヴェルディは左手で受け止める。
観で見ると、ヴェルディの左手は魔力で覆われていた。
クソ! 防がれたか!
「くらえ、――猿廻」
ヴェルディの体を宙返りしながら飛び越え、右肩の背後を斬り付ける。
ヴェルディは私の剣を受ける為に、膨大な魔力で防いでいた。
そこに、このアレンの奇襲技によって、右肩から血を流した。
「――車掛かり」
ヴェルディの背後に着地したアレンが、連続の上段斬りを右左と斬り付ける。
ヴェルディはアレンに向き直り、その連続の上段斬りを受け流すのに必死で、こちらには目を向けていない。
今がチャンスだ!
「ハッ!」
瞬動にて背後を右袈裟に斬り付けた。
(グアアアッ!)
無防備な背中に斜めに血が撒き散らされる。
人型だけど、やはり龍か。堅い!
「ハァッ!」
膨大な魔力で反転、紫電の太刀を放つ。
ヴェルディがその膨大な魔力に危機を感じて、紫電の太刀を受け止めようとするが、腕ごと吹き飛ばした。
「まだ、こっちもいるぜ!」
アレンが同じく、突きで心臓を狙う。
そして、今まで隠していたとっておきを解放する。
紫電の太刀で居合で振り抜いた体勢のまま、足を組み替えて二撃目を放つ!
「――紫電二連!」
ヴェルディはどちらをも守るために残った右手で、アレンの突きを防ぐ。
そして、残った左の上腕二頭筋で紫電二連を受け止めようとした。
(ガッハ……ッ!)
私の渾身の一撃は上腕二頭筋を斬り飛ばして、喉笛を半分まで斬り裂いた。
ヴェルディの喉笛から血が大量に出る。
(よく……ぞ。試練を……乗り越えた、な。聖戦士よ。……後は頼むぞ)
ヴェルディの体は発光し、そして霧散していった。
残ったのは、巨大な八十センチはあるであろう魔石。それと、なにかの宝玉。
「やった。やったぞ!」
「ああ、やったなアラン!」
「お疲れ様です。皆さん」
「お疲れ! アラン!」
そこで、リリィが前に進み出て、宝玉を手に取った。
「これが、お兄ちゃんを過去に戻す為に、必要な宝玉。そして、魔石」
「じゃあ、ヴェルディは最初から死を覚悟していたのか」
「そう。ヴェルディもまた、星から生み出された守護者。その宝玉と魔石を使えば、過去に戻ることができる」
リリィは答える。ヴェルディも星が生み出した存在だったのか。
だから、試練と言っていたんだな。私を見定めるために。
自らの命を懸けて……。
私の為だけに命を懸けたのか。
それだけ期待されているってことなんだろう。
私は、その期待に答えられるだろうか? 答えは分からない。
だけど、その気持ちには全力で応えようと思った。




