安息1
「んで、その子は一体なんなんだい?」
ノインさんがリリィを指して問いかけてくる。
今は前に私が感動して嵌った和幸でノインさんとリリィと共にとんかつ定食を食べている。
何故ノインさんがいるかって言うと、幼龍退治の時に色々とアドバイスを貰ったので、そのお礼にご飯を奢ると言われたからだ。
今は、仕事から抜け出して昼食を食べに来ている。
どうせ、誰も来ないから別に良いんだよですって。
うん。今日もとんかつは美味しいな。噛みしめると肉汁がジュワッと溢れてくる。
そのとんかつと共に食べる玄米は最高だ。
出来れば白米が良いがそれは仕方ないね。
「おい、聴いてんのか!」
ノインさんがお怒りだ。
おっと忘れてた。リリィが一体何だって話だっけ?
どう説明すればいいだろうか。
その話の渦中のリリィはとんかつ定食を美味しそうに頬張っている。
赤いフードを被っている赤ずきんスタイルだ。可愛い。
耳も隠れているので普通に見てもエルフだとは気づかれないだろう。
「んーそうですねぇ」
ハイエルフの少女ですって素直に言ったら、それはマズイだろう。
かと言って、エルフの少女ですって言ってもこの国のエルフの事情が分からない今、説明がわからない。
でもまぁ、エルフの少女ですってくらいなら言っても大丈夫だろう。
ノインさんはなんだかんだ面倒見の良い人だし。
悪い事はしないだろうしね。
「エルフの少女ですよ。名前はリリィ」
小声で伝える。流石に周りの客にエルフだと聴かれたら人攫いに襲われるかもしれない。
撃退出来る自信はあるけど、リスクは回避すべきだ。
「エルフ!? あ、いや、悪い」
ノインさんは少し声を大きくしてしまった事に罰が悪そうに頭を掻いている。
「いえ、大丈夫ですよ」
彼女は腕を組んで目を瞑ってなにか考え出した。どうしたのかな?
「……おい。聴きたいんだが」
恐る恐ると言った感じで問いてくる。
「まさか、幼龍の賞金で買ったのがこの子じゃないだろうな?」
「…………」
目を反らして唇を吹く。いや、全くの大当たりですよ。ノインさん探偵の才能があるんじゃないかな?
というかこれバレたらマズいよね。
どんな言われを受けるか……。
「うん。そうだよ」
っておい! リリィがあっさり答えちゃったよ! せっかく、誤魔化そうと頭を捻ってたのに意味が無くなっちゃったじゃん!
「…………」
「…………」
重苦しい沈黙が続く。
いや、まぁ、オークションでリリィを買ったのはその通りなんで、言い逃れ出来ないんですけどね!
「……ロリコン」
ぽつりと呟く。ノインさんそれは言っちゃいけない奴だよ!
「私はロリコンじゃないですよ」
「ロリコンってなに?」
リリィが無垢な瞳で尋ねてくる。
「リリィちゃん見たいな小さい子が大好きな変態さんの事だよ」
ジト目でこちらを見ながらリリィに返答する。
「ち、違う! 私はロリコンじゃない! 無実だ! Yesロリータノータッチ!」
余りにも動揺して変な言葉を言ってしまったが、それだけ必至だということを理解して欲しい!
「お兄ちゃん。ロリコンさんじゃないの? リリィの事嫌いなの?」
リリィが蒼い瞳を潤ませてふるふると震えながら問うてくる。
ああ、もう! どうすりゃいいんだこれ!
「いやね、リリィの事は好きだよ。でもね、私はロリコンじゃない。それを声を大にして言いたい」
「ほんと! 良かったぁ」
リリィは安心したようだ。笑顔を見せてくれる。
「じゃあ、一体なんなんだよ。死ぬ気で龍退治した英雄さんよ」
未だにノインさんはイライラしながら問い質してくる。
うん。どうしようか。
その時、天啓が降りてくる。これだ!
「私はロリコンじゃない。リリィが好きなただのシスコンなんですよ!」
――決まった。
「…………」
「…………」
だが、また重苦しい沈黙が降りてくる。
「血も繋がってねーのに。何言ってんだ? 結局、ただの変態じゃねーか」
呆れたように溜め息を吐く。
おかしい。上手い切り替えしだと思ったのだが、違うのだろうか。
「シスコンってなに?」
「リリィの事が大好きなお兄ちゃんの事だよ」
「嬉しい! 私もお兄ちゃんの事大好きだよ」
ああ、向日葵のような元気になる笑顔だ。癒されるなぁ。
「アホか」
終始、呆れるノインさんだった。
「で、ですね。ノインさんに聴きたい事があるんですよ」
食事中、ノインさんに聴きたい事を尋ねる。
「ん? なんだ? 変態な事はお断りだぞ」
「それはもう勘弁してください……。実は、図書館か本屋の場所を教えて欲しいんですよ」
「なんだ。そんな事か。なんか調べものか? 図書館なら、北東の方にあるぞ。本屋なら北に向かう大通りの途中にある」
「ありがとうございます。ええ、少し調べたい事がありましてね。と言うのも、リリィは記憶喪失なんです。なので、それでエルフについて調べたいんですよ」
実際には、それも調べたい一つの事だが、本命は違う。
だが、本当の事でもある。
「記憶喪失……。なるほどな。分かった。協力できることがあるならあたしにも言ってくれ」
「助かります」
「ありがとう。お姉ちゃん」
頭を下げる。リリィも私に倣ってペコリと頭を下げる。可愛い。
「ああ、それとアランに渡すものがあるんだった」
そう言って、小袋を渡される。
はて、何だろうか。小袋の中身を空けてると小さなコインが一枚入っていた。
手のひらの上のコインは金色に光っている。
「き、金貨!? ってことは10,000コルですか!? これは一体なんでですか?」
「幼龍の頭部を欲しいっていう貴族がいてね。まぁ、珍しい物欲しさの金持ち貴族さ。あ、安心しな。冒険者ギルドはもう何割かは言えないが仲介料も貰ってるから安心して受け取りな」
なんでもないかのように言うが、金貨1枚だ。何もしなくても宿屋で3年半は暮らせるだけの大金だ。
「な、なんだか金貨を貰うと緊張しますね」
「何言ってんだ。この前に金貨30枚貰ってたじゃねぇか」
「あの時は必死だったので考えてなかったですけど、今思うと恐ろしいですね。良く、暴漢に襲われなかったものですよ」
「幼いって言っても龍を殺した英雄だぞ。誰も手なんか出さねぇよ」
それもそうか。自分で言うのもなんだけど藪を突いても良い事なんかないからな。
「ああ、それと飯食ったら、冒険者ギルドに一緒に来てくれないか?」
「ん? なにかありましたか? もしかしてなにかしましたか?」
「いや、アランの冒険者ランクを上げるだけだ」
「え? 冒険者ランクを上げる?」
それって、Cランクになるってことでしょ? ええ? 本当に!?
「……嘘ですよね?」
「お前、龍を討伐したのに謙虚だよな。良い意味でも悪い意味でも」




