表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晦冥戦記 (臆説・河越夜戦)  作者: 曠野すぐり
糸月という忍び
12/12

2章 (4)


 忍びは現実だけを冷徹に見つめなければならない。そうしなければ、すぐさま死に直面する。

 しかしそれでも、ほんのいっときは、現実の行動に役立たない感傷や考察にとらわれる。今が、そうだった。


 糸月はいま一度、体を一周させて全景を見回した。天守の代わりになる富士見櫓から、河越の地を俯瞰している。3つの川が流れ、その間の陸地に、敵勢が点々と陣を張っている。


 城守北条綱成が多目元忠を信用し、そして元忠が戦闘の意向を示しているのであれば、河越城は戦に舵を切ることになる。

 おそらくは全滅だろう。その昔、後北条とは縁のない北条氏が関東を中心にこの世を治めていたときに、大陸「元」軍を破った際のような天変地異でもない限り、勝利は不可能だろう。


 ここで命を落とすのはいい。糸月は真からそう思う。一介の忍びなのだから、仕えている者に命を捧げることくらいなんでもない。しかし……。

 これが綱成の下での戦であれば、なんら悔いなく戦い、そして命を差し上げることに惜しみは感じない。むしろこの時代に生きる忍びにとって、最高の晴れ舞台となる。敬する者の下、全身全霊で最後の一戦を、心おきなく構えられるからだ。

 だが多目元忠の下では、そうはいかない。なんの疑問もなく戦いに打ち込められない。中途半端な気持ちのままに、死ななければならない。それがなんとも、やりきれなかった。


 それでも綱成の命令に逆らうことはできない。今後多目元忠の手足となって、動かねばならない。


 最後くらい、思い切り戦いたかった。糸月は白いため息を中空に放った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=581143448&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ