藍川美樹ー告白と望むもの
攻略対象3人目。
美樹の望む相手は……。
藤白くんも仲間になって、その後のCDの売れ行きも上々。
藤白くんは、印税で入った金額にタジタジになってました。
ゲームでは、親との喧嘩が絶えないってことだったけれど、今回は音楽だけではなく、音楽が駄目でも一流の会社に就職出来ることが内定しているため、逆に応援されたらしい。
実際に印税でかなり家計も助かってるそうだ。良かった。
学校での接点はあんまりなかったけれど、赤月のおじさんの援助を得たって話は通ってて、私たちと一緒に居ることが普通になってきていた。
「……ミキの声って、聴いてみたかったなー」
「悪かったな……」
「ワリ。アキラ責めたワケじゃないから!」
「……わかってる」
『ちっちゃい頃の声なら、録音があるけれど?』
「聴きたい!」
『今度ね』
「……冬弥、お前もせめて手話は学べ。その方が美樹と会話をしやすい」
「……タシカに。……アキラ先生、教えて下さい!」
「いいだろう」
という会話がありました。
ああ、そういえば。藤白くんの実力を確認する時、吹奏楽部だけではなく、他の部活も確認をしたんだけれど……。
管弦楽部に攻略対象のいっこ上の先輩がいた。
……青海駿先輩。管弦楽部でコントラバスを担当していた。普通科から音楽系の部活に入っている。
ただ、何か辛そうに見えたのが、ちょっと気になった。
そうしてしばらくが過ぎ、藤白くんを名前で呼ぶようになった頃。冬弥くんに呼び出された。そして……
「ミキ、オレはミキのことが好きだ。オレと付き合ってほしい!」
目の前で頭を下げる冬弥くんを見て、そして、私の心に浮かんだのは、……冬弥くんではなかった……。
七瀬の音に惚れこんで、その後本来の格好をした私に一目惚れをしていて、親しくなってますます好きになってくれたって……。
嬉しかったんだけれど、私は冬弥くんのことをそういう風には思えなかった。だから。
『ありがとう。冬弥くんの気持ちは嬉しいです。だけど、ごめんなさい。私は、冬弥くんの想いに答えることはできません』
そう、はっきりといった。
「……ダレか好きなヤツいんの?」
それに答えることはできなくて、ただ、うつむくしかなくって……。
ふう、っと息をつくと、冬弥くんは私に願った。
「なら、考えてみてくれる? オレのことを好きになれるか。もし、ダメでもミキに好きな人が出来るまでは猶予をくれない?」
私はうなずいた。……私の好きな人は、ここにはいない。だけど、それでも、私の心は『彼』だけを望んでしまう。
だから、今は、ごめんなさい……。
落ち込む私の頭をポンポンと叩いて、冬弥くんは笑った。
「ほら、サッサといこーぜ。次のCDの曲、もう決まってるってアキラのヤツ言ってたぜ」
うん、とひとつ頷いて、私も冬弥くんと並んで歩き出した。……今は、ただ音楽に埋もれていたかった。
それから、2年に上がって暫くした頃。私は、見つけてしまった……。
『それじゃ、ボーカルはどんな子なの?』
『ああ、歌がうまい。作詞は得意で音痴な妹にせがまれて、よく歌ってたのを、彰が見つけて仲間に引き込んだんだったな。……まあ、シスコンのお兄ちゃんだ。高校から学園に入学してくる。本来なら中学から普通科に入れるんだが、親の喧嘩が原因で兄妹そろって海外にいたんだ。それが仲直りで日本に戻ってきて高校で仲間達と知り合うってことになってる』
『シスコン……』
『おまえは人のこと言えないな』
『否定できない』
『まあ妹も作詞の方でバンドに協力してて、こいつルートのライバルキャラの位置にいたりする』
『そうなの? 妹さんはいい子?』
『……ブラコンと極度の人見知りを除けば。こいつも典型的な妹キャラだ』
『こういうゲームで需要ってあるのかしら』
『そこまでは知らん……』
次回、転生者登場。