火の島編:7日目
列車は朝早く、本庁駅へと入線する。だからと言って直ぐにこの移動ホテルからチェックアウトする必要は本来は無い。ランチ時までは駅で止まっていてくれるのでそれまでゆっくりしていても良いのだ。
といって悠長なことは言っていられない。私の乗る便はランチの時間には既に海上に居るだろう。私は早く起きるとさっさと身支度を済ませ、寝る前に用意しておいた荷物をもってホームに止まったと同時にドアを開けてホームに降りた。やはり、空気が悪い。昨日一昨日居た駅は田舎だったから空気が良かったのだろう。流石に飛行船降りた時程の煙たさではないが、やはり感じる所は少しあった。
慌てるほど時間が詰まっているわけではないので、足取りはのんびりだったが土産などには目もくれず、一直線にタクシー乗り場へと向かい、ずんぐりむっくりな黒塗りのタクシーに乗って空港へ向かう。いかにも重く上品なその走りだしは蒸気車ほどのスムーズさはない。
この島を振り返ってみると、まるで本土の半世紀前ぐらいの町だったと感じる。燃料が安く、空気がそれほど悪くない、まさに昨日の町のような所なら住んでいても楽しいかもしれない。まぁ、それは他の島をめぐれば考え方も変わるだろう。食事が不味いのがかなりの欠点ではあったが、火は通っているので食あたりにあう事は無いだろう。とはいえ、食べれるものが減ることは間違いない。
かなり極端だったと感じる。なんともいえない島だった。
「運転手さん、あとどれくらいですかね。」
「あと10分ぐらいですね。」
飛行船には裕に間に合うだろう。窓の外はどんどんと煙たくなり、太陽がかすんで見えるようになってくる。
「あら、またお会いしましたね。」
出国検査はかなりおざなりで、空港につくと直ぐに飛行船に通してくれた。
「本当ですね。また貴方のような方に出会えるとは。」
飛行船内に居たのは、この空港で別れたスチュワーデスだ。またどこかでなんて気取って行ってみたが、まさか直ぐに出会えるとは。
次の島までの船旅もきっと楽しく過ごすことが出来るだろう。
光の島、ペリドットまでの長い長い旅を。