プロローグ
「…………当飛行船は現在本土より直線距離にして10000km離れ、高度6000フィートの時点を60ノットで飛行中です。火の島への到着は21時間30分後、現地時間13時25分を予定しております…」
気が付くと船内放送が耳に入ってきた。周囲に目を配る。私はラウンジの一人がけソファー座っていたようだ。
「よくお眠りになっていましたね」
そうか、寝ていたのか。
スチュワーデスが私が起きるのを見計らったように目覚めのコーヒーを持って来てくれていた。
「有難う。あんまりこの飛行船の居心地が良すぎてね。ついつい」
笑いながらコーヒーを受けとり、口に含んだ。舌から伝わる独特の苦味が寝惚けた頭を覚醒してくれる。
「先程の船内放送、お聴きになりましたか?」
可愛らしいスチュワーデスは微笑みながらそんなことを聞いてきた。
「あぁ、勿論。聞かせてもらったよ。やっと1つ目の島だよ」
私がこの飛行船に乗ってもう5日は経っている。長かった船旅も、あと21時間程で1つ目の目的地、火の島へと着くことが出来る。この若く綺麗なスチュワーデスの顔を見ることができなくなるのは寂しいが、出会い別れるのも旅の一興だろう。
そんな事を考えながら、私は飛行船での残り時間を過ごす事にした。