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地下室


 それに気が付いたのは偶然だった。地下に続く階段の前を通りかかった時、地下の方から言い合うような声が聞こえてきた。地下には校則違反者を閉じ込めるための反省室や儀式用の道具保管庫しかなく、何故言い合うような声が聞こえるのか不思議だった。

反省室は防音の魔法がかけられているため、地上まで声が聞こえてくるはずがない。初級の防音魔法ですら二メートル先の声を聞こえなくすることができるうえに、反省室にかけられた防音魔法は音の魔法のエキスパートの家出身の先生がかけた高位の防音魔法である。たとえ地下で巨大な爆発が起きても何の音も聞こえない。そのため、反省室に入れられた生徒が先生と言い合っているという可能性は低い。

反省室に入れられる前に先生と言い合っているのだろうかとも考えたが、そもそも今日は卒業式である。そんな日に生徒を反省室に閉じ込めるはずがない。卒業式には全校生徒の参列が義務付けられているうえ、何か悪さをする生徒が居たとは聞いていない。教頭も挨拶のときに話していた。

『在校生を含め、誰一人欠けることなく卒業式を迎えられたことを嬉しく思います』

と、だから欠席者は居なかった筈だ。ならばいったい誰が言い合っているのだろうか。そんな興味から、カチュアは音を立てないように、地下室へと足を向けた。



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