テイラーの目的
「ふふ、気になっているようだね。良いよ。話そう。テイラーの目的。それは夢幻世界の格差をなくすことだ。無論だけど、身分の格差のことじゃない。資質の格差のことさ。彼は教師だ。毎年多くの生徒が生まれ持った資質に捕らわれ、挫折していく姿を見ている。どれだけ頭が良くても、態度が良くても資質がなくて挫折してしまう。そんな生徒を救うにはどうすれば良いのか。彼は真面目に考えた。その結果が」
そこまで言って、メビウスは口を閉ざし、ニヤニヤと笑みを浮かべる。そこまで言われればわかる。その結果があの魔道具の復活なのだろう。たしかにこの魔道具なら資質は無くなるだろう。しかし、それはマヤカシだ。寿命を削ってまで魔法を使いたいのだろうか? カチュアには理解はできても納得できなかった。
カチュア自身も資質の格差をなくしたいと常々思っていた。しかし、他人の寿命を削ってまでそれを叶えたいかと聞かれれば、首を横に振っただろう。現実世界で学んだように人間の格差はなくならない。資質の格差がなくなれば今度は才能の格差、頭脳の格差など、様々な問題が出てくるのだから。資質さえどうにかできれば問題がなくなるわけではない。
「ははは、なかなか難しそうな顔をしているね。まぁ、ここまでだったら確かに納得できないだろうね。でもね、この魔道具はテイラーの目的のための通過点でしかないよ。はっきり言えばこれは試作品だ。完成品のための予行練習と言っても良い」
これが試作品だって? カチュアは思わずマジマジト魔道具を見てしまう。
「そうだよ。ここで二つ目の話になる。何で君を狙っているのか? 君たちはボクが君をさらいに来たと思っているだろ? でも実は違うのさ。君を狙っているのは正しくリカードだ。ボクは単に君がどのような人物で、真実を知ったときにどう行動するのか。それが知りたいと思って接触しただけだよ。本当に君を狙っているのは正しくリカードたちだ。では何故だろうか? 君には心当たりがあるかい」
心当たりと言われても、カチュアにはまったく心当たりが無かった。無論、ケリィも同様である。何故狙われているのか。皆目見当もつかない。しいて上げるのなら資質だろうか? 人よりも優れ資質が彼の目的に関係するのだろうか。
「だいたいわかっているみたいだね。そう、資質さ。はっきり言おう。君の資質はこの夢幻世界でも上から数えた方が早いほど大きなものだ。それに女の子でもある。ここまで言えばだいたいわかると思うけど。君の血液をテイラーは欲している」




